第3話 この努力に灯を
次の日。ものすごく一瞬で日が過ぎていくように感じる。
みんなが帰った後、わたしはひとり帰りの準備をし終えると、足早に学年室に向かった。
学年室からは電気の明かりが漏れてきていて、少し遅れてしまったか、と慌てる。
恐る恐るといった感じで後ろのドアを開けると、もうすでに三人来ていた。
一番最後じゃなくてよかったと思うのと同時に、まだ先生が来ていなかったことに安堵した。
学級長が遅れるなんて、と言われることは目に見えている。
数秒すると最後のひとりが教室に入ってきて、それから数分後に先生は来た。
先生はわたしたちを数少ない椅子に着席させてから、A組の報告が始まった。
A組が終わり、B組も終わった。
次はわたしの番だ。
「じゃあ、次。C組」
「はい」
事前に書いてあった紙を見ながら、ちょっと付け足したりして読み上げていく。
いいところと改善点、来週に向けた工夫を話して、わたしは報告を終える。
「……現状報告は以上になります」
「はあ、一か月前はあんなにいいクラスだったのに……。お前がしっかりしないとダメだろう。一週間後のいい結果を期待しているぞ。次、D組」
そんなことわたしに言われても、わたしだってやれることをやっての結果がこれだ。
授業中に寝ている人もいれば、授業を受けない人すらいる。
課題の提出率も低くなっていく一方だし、掃除当番をサボる人もいる。
でも、注意なんてできなくて。
言い返されるなんてこと、ないと思うけど。「もし」が起こったら。
怖いよ。わたしの周りからみんな離れていってしまいそうで。
注意しても、聞いてくれなかったら。
苦しいよ。わたしは一生懸命なのに、聞いてもらえないなんて。
「……以上です」
D組の男子が報告を終える。
いかにも真面目そうな彼はまっすぐ先生と向き合い、報告を終えた。
「
「はは。それは言い過ぎですよ。校長先生にはありがとうございますとお伝えください」
柔らかく笑った彼は、あと、と付け足すように話し始める。
「C組のことですが」
ビクッと肩が跳ねた。
まさかわたしのクラスのことを言われるとは思ってなかった。
わたしのクラスは他のクラスの学級長に言われるまでのひどさになってしまったのだろうか。
かすかな不安を抱き、続きの言葉を待つ。
「確かに先生はあまりいい印象を持たれないようですが、相良さんはいつもクラスをいい方向に持って行こうと努力しているのを、違うクラスの僕でも知っています。
先生が、ハッと何か気づかされたような顔になる。
何よりも驚いたのはわたしだ。
庇われたことに対する惨めな気持ちと、庇ってくれたことに対する驚き。
今までこっそり裏で努力し続けた。
注意するのが苦手だったけど、勇気を出して声をかけたりもした。
先生が求める「いいクラス」を作ろうとしていた。
努力は、認められないと思ってた。
「……次、E組」
――でも、認めてくれる人が、認めてくれた人がここにいる。
先生は、最後の組、E組の現状報告を聞いて、アドバイスをすると、「今日はこれで解散だ」と一言で学級長会を締めくくった。
彼が部屋から出ていくとき、目があった。
気まずさにすぐ目をそらしてしまったけど、大事なことは知ることができた。
――彼の名前は、
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