第3話第二の密室死体

豪華な書斎の床一面に、桜の花びらが舞い散っていた。

高価そうなリクライニングチェアには人影が。

彼は胸を西洋風のナイフで刺され、目と口を大きく開いたまま息絶えていた。

窓には内側から鍵がかけられていた。

我々が入って来たドアにも鍵が掛かっていた。

「密室だ。これは密室殺人事件だ。」

サツキが小さな声で呟いた。

そこに下男の霜島が走って来た。

「大変だ。無線が壊されてる。」

「じゃあ、警察に連絡が出来ないの?。お館様が刺し殺されてたんだよ。」

食堂のおばさんが大声を出した。

「島に駐在さんはいないんですか?。」

「いないよ。」

「医者は?」

「いない。」

「固定電話も無く、携帯も繋がらず、インターネットもなく、無線も壊れた。じゃあ船は

?。船の無線機で警察に連絡するしかない。」

「船もない。」

「次の船はいつ来るんです。」

「1週間後よ。」

「AKIZUKI号ですか?。」

「ああ。ホテル経営のプロとお館様の従兄弟も乗って来る。」

「とりあえず、死体の写真を撮っておきましょう。遺体を保管出来そうな大型冷蔵庫はありますか?。」

「ご遺体を動かす気か?。」

「まだ春だと言っても、1週間遺体をそのままには出来ない。」

サツキが言いきった。

島の人間はカメラだのスマホだの持っていなかったので、俺達で死体と部屋の状態を写真に撮って、念の為壊された無線と、無線が置かれたプレハブの写真も撮った。

「遺体が入るのは、館の裏側の倉庫にある冷蔵庫だけだが、何年も使ってない。電気を入れておかないと。」

食堂のおばさんが言い出した。

「じゃあ進藤、ボディーガード代わりについて行って。その前に昨夜館で不審な人物を見かけませんでした?。」

みんなの視線が俺達に向けられた。

「いや、俺達はバイトで正式に選ばれたし、二人に恨みもなく、館に不案内だ。白です。」

「そうじゃな、犯人ならこんな所で、のんびりしとらんじゃろう。」

「亡くなった二人の親族に訃報を知らせないと。」

「お館様に家族は残っていない。本土に従兄弟がいるが今は連絡取ぬし。執事も天涯孤独だと聴いている。」

「ちょっと待って下さい。じゃあ、お館様の遺産は遺書がなければ、その従兄弟が相続するんですね?。」

「多分。」

「遺書を探さないと。お館様の弁護士を知りませんか?。」

「さあ?。」

「今から、一人で行動しないように。島の中に犯人が居るかもしれない。食堂のおばさんと、進藤は冷蔵庫の電源を入れてくれ。他の人は手袋を嵌めて全員そろって遺書探し。」

「島のみんなに二人が亡くなった事を知らせないと。お館様は島の長だ。」

食堂のおばさんが言った。

「遺書探しが終わってからにしましょう。収集つかなくなる。」

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