第四話 倒れた低学年の参加者が“くねくね“を目撃し、汐リーダーがご機嫌で戻ってきた
ミーティングから帰ってきた汐リーダーはすこぶるご機嫌だった。
「夕食は煮込みハンバーグらしいよ。うん、お昼はカレーで夜はハンバーグ、運営は分かっているね」
お昼と同じく、飯盒での炊飯を汐リーダーが行なってくれて、僕らはレトルトのハンバーグを湯煎する。
どうやら、熱中症になったという何処かの班の子は低学年の参加者で、今はケロッとして夕食を待っているらしい。汐リーダーがこんなにも楽しそうにしているのは、その子が遠くで“くねくね“らしき物を目撃したからという事らしい。僕からすれば、熱中症で意識が朦朧としていた為に幻覚を見ただけじゃないのかと疑っている。その現場にいたわけじゃないし、決めつけるのもどうかと思うけど汐リーダーはそうは思わないんだろうか?
FRSの僕がそう考えるんだから、恐らく間違いない。
いや、汐リーダーは常に先の先を読んでいる。という事は超高校生級の汐リーダーは今回の“くねくね“に関して何らかの確信を持っているということだ。
ここにくる前の僕であればオカルトなんて見向きもしなかっただろう。だけど、汐リーダーがそこまで興味を持つのであればそれは調べるに値するって事に違いない。この件に関しては僕が汐リーダーの役に立ってみせる。
スマホがないから正確に調べる事はできないけど、“くねくね“という物は田舎特有の怪奇現象らしい。言葉通りくねくねと動く何かを見てしまい気が狂ってしまうらしい。
普通に考えれば見ただけでそうなってしまうなんて……どう考えてもFRSの発症としか思えないんだけど、汐リーダー曰く、それを見たという子供はFRSの発症者じゃなかった。というかなんでFRSかどうか汐リーダーは何故分かったんだ?
僕がFRSを発症しているであろう事を汐リーダーは見抜けていないのか? それとも見抜いていて黙っているのかもしれない。FRSを発症したら一部から強烈な差別を受けるなんて記事も見た事があるし、人間という物は愚かな生き物だから人と違う者を迫害する傾向にあり、それは歴史が物語ってきた。そんなデリケートな部分を汐リーダーであれば当然考えて行動するんだろう。悔しいな。僕が高校生、いやせめて中学生であればもっと汐リーダーの事を理解できたのかもしれない。
僕の全ての知識とFRSの他者とは違う認識を使ってこのキャンプの間に“くねくね“の正体を掴んでみせる。
汐リーダーは褒めてくれるだろうか?
何だか、俄然僕はこのキャンプに参加した事を肯定的に思えるようになった。
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