第二話 美味しいカレーを食べながら汐リーダーの目的を教えてもらった

 カレー作り、それはどの班も卒なく出来上がった。僕らのカレーに至っては具がやたら大きく切られている事で、玉ねぎとニンジンが苦手だと直はワガママを言って僕らを困らせる。そんな直に汐リーダーは強制的に食べろとも、食べなくていいとも言わず、小さいミキサー? ハンドブレンダーのような物を取り出して、直のお皿から玉ねぎとニンジンを「直くん少し失礼するよ。ペーストにしてルーと混ぜると実に美味しいんだ」とジュースにしたそれをカレーに戻した。


 直は先ほどまで嫌だと言っていた玉ねぎとにんじんが混ざったルーを恐る恐る口にして、無言で食べすすめ始めたのできっと美味しいんだろう。それを見た和也も同じようにして欲しいと恥ずかしがる事もなく自分の皿を差し出した。僕も気にはなるが、そんな変な食べ方をしようとは思わない。和也と直が楽しそうに話をしている姿を見て、僕は気づいた。野菜を切った和也と野菜が嫌だと言う直の仲を悪くさせずに逆に打ち解けさせてしまった。ここまで読んであんな手の込んだ物を持ち込んだとでも言うのだろうか?


 僕はそれから汐リーダーの一挙手一動が気になって仕方がない。スプーンは舞鶴自衛隊のスプーン、自前の物なんだろう。よく見ると水の入ったグラスを置くコースターも何らかのアニメキャラのコースターを使っている。

 持ってこなくてもこのキャンプで借りられる物なのに、独自の拘りがあるんだろうか? カレーしか食べている所を見ていないけど、今のところ好き嫌いはなさそうだ。僕と目が合うと不適に笑う。何だか子供扱いされているようで気に入らない。

 そんな中、汐リーダーは言った。

 

「このキャンプ、数年前に““とやらを目撃したって聞いててね」

 

 汐リーダー曰く、このキャンプに参加した参加者が、畑のあたりでくねくねと動く何かを見て、気がふれてしまったという事件があったと語る。これはもしかしたら、僕らを怖がらせる為の汐リーダーなりの遊び心か?

 いや、違う。

  

「その、くねくねを見たって子に会いに行ったんだけどね。残念ながらFRSの発症者でもなかったよ」

 

 この手の話は大概、知り合いの知り合いに聞いたとか言うのに、汐リーダーは怪奇現象に見舞われた人に会いに行ったらしい。作り話とは思えないし、そんな事があるんだろうか? いや待てよ。その汐リーダーが出会った子がFRSを発症しかけていたとすれば? そしてその症状が時間と共に安定化したのであればどうだ? 世の中の怪奇現象は殆どFRSが原因と証明されてるんだ。

 だけどようやく僕は汐リーダーの尻尾を掴めた気がした。彼女の目的はその調査と研究という事だろう。だとすれば汐リーダーは運がいい。恐らくFRS発症者の僕がいれば遭遇できる可能性がある。そして、僕もまたこのキャンプに参加した意味がようやく少しだけ感じられるように思えた。

 和也がカレーを食べ終わり汐リーダーに質問。

 

「“くねくね“っての探すんですかー?」

「君達に迷惑がかからない範囲でね」

 

 と、一番の興味が“くねくね“だったとしても、リーダーの仕事は忘れていないらしい。

 

「汐リーダーはそれがいると思ってるんですか?」

「さぁ、分からないよ」

 

 妄信的にオカルトを信じているタイプではないらしい。続けて汐リーダーはこう言った。

 

「私は自分で見て経験した物しか信じられないタチでね。キャンプという非日常が起こしたてんかんなのか、それとも他に理由があるか」

 

 汐リーダーは僕が最も好きなタイプの人間だった。正解を理論的に解明っする。「同感です」と僕は答えた。

 

「さて、オリエンテーリングらしい、行こうか? 諸君」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る