第七話 もしかすると彼女は分かっていて乗らない方がいいと言ったのかもしれない
私は汐と別れた後、そのままの足でホームから新大坂駅構内へと向かった。展示品の車の前で
「希空、久しぶり! なんかもしかして痩せた? なになに? ダイエットしてるのかい? 男でもできたの?」
強烈な存在感を誇る汐の事が頭から離れないけど、私は切り替えて希空に軽い挨拶代わりの感想を述べてみた。
「そうそう! 同じクラスの子が彼氏になってなーって! ウチ女子校や!」
「今日もキレッキレだね。やっぱ大坂人は違うわ」
私がそう言うと、希空は嬉しそうにこの日の為に仕込んだネタとやらをいくつか披露してくれた。芸人でもないのにネタ帳まで持ち歩いて、汐に会うまでは私の中での変人ランキングの最上位に居座っていた希空だったが、残念ながら今回の新幹線の旅で彼女の不動だった変人の玉座は汐によって奪われる事になった。是非、王座奪還を頑張って欲しい限りだ。
「じゃあ、ユニバ行って、たこ焼き食べて、串カツ食べて、今日から遊び倒そうか!」
私のテンションを上げた声かけに、希空は同じくテンションを上げて乗っかってくれた。嗚呼、なんだかこの普通な感じがなんだかとても懐かしい。
「たこ焼きに串カツてほんま下手やなー蓮美! どこで食っても一緒やん」
「いやいや、そうでもないよ。こっちで食べるから意味があるんだって」
そういえば、希空は私の地元でもんじゃ焼きを食べたいと言った時も私もどこで食べても同じだと返したような気がする。やっぱり、旅行をした別世界観を誰しも感じたいんだろう。「さよか」と希空は頷く。
「たこ焼き、たこ焼きなー、あんまり買うて食べへんからなー、たこ焼きって基本家で作って食べるもんやし、ウチも何処が美味しいとかあんま知らんわ」
まさかの大坂のソウルフードをあまり買って食べないというカミングアウトをされてしまった。
「あ、オカンや。なんやろ? もしもし? 蓮美? 隣におんで、は?」
希空のお母さんからかかってきた電話で希空の様子がどうもおかしい。
「蓮美、アンタ新大坂で降りて良かったな? 新幹線、
「えっ? そんな冗談、面白くないよ?」
私は笑いながらそう言う。そして、すぐに電光掲示板に新幹線の大事故が起きた事を知らせるニュースが流れていた。希空はユニバに行けない事を残念がってるけど、私はそれどころじゃなかった。
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