第六話 そして私は紅月汐という少女と手を振り別れた

【まもなく、新大坂しんおおさかです。JR鏡都きょうと線、JR首部こうべ線、おおさか東線と、地下鉄線はお乗り換えです。車内で出ました不要なものは、ゴミ箱にお捨てくださいますよう、車内美化にご協力をお願いいたします。また、ご利用いただきました座席のリクライニングは、元の位置にお戻しいただき、次にご利用されるご客様にご配慮くださいますよう、ご協力をお願いいたします。今日も、新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました。新大坂しんおおさかを出ますと、次は新首部しんこうべに停まります。】

 

 私は少しばかり、というか凄い名残惜しい気持ちでキャリーバックをを持つと席を立った。すると、汐がお見送りをしてくれるようで、出口にまでついてきてくれた。そして「いやぁ、非常に楽しい時間をありがとう」と言ってくれたので、このまま青春映画みたいに乗っちゃおうかと本気で思った。


 特に何かを言う訳でもなく、汐は私が美味しいと言ったソフトお煎餅のお菓子の残りをお土産代わりに渡してくれた。不思議な事に食べかけのお菓子を渡されるのがなんだか、それだけ親しい間柄になったようで少しばかり嬉しくもあった。

 そろそろ、この新幹線は次の駅に言ってしまう。私は「また今度電話するから、その時ゆっくりお話しようよ! 汐の方からも電話してきてよー!」とできる限り明るく、寂しがっているダサい姿を見せないようにそういった。「あぁ」「じゃあね」と私は汐にそっけなく返してみたけど、まだ時間があるらしい。 


 電車も空気読んでここは扉が閉まってくれればいいのに、私は照れ隠しにさっきの事を言ってみた。「もう、なんなら新幹線に乗って汐といけるところまで行ってみようかな、なんて」と「ふーむ、それは……恐らく、」と不適な笑みを残して、新幹線の扉は今頃プシューっと閉まった。

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