第三話 紅月汐は未来人かもしれない理由、板状の携帯電話を持っている事
私は日本一大きな山である扶桑よりも汐の持っている機械に目が釘付けになった。大きさからカメラだと思っていたのだが、あまりにも薄い。
「汐、それってもしかしてなんだけど携帯電話?」
いくらなんでもそんなハズはないと私は思っていたのだが、カメラ機能を終了させた汐が持つその機械の画面に映し出されていた物は沢山のアイコンのようだった。そこから私が導き出した答えは、やはり携帯電話。
「そうだね。君の持つガラケーではなく、私のはスマホだけどね」
スマホンとでも言う携帯なんだろうか? かつて猫型ロボットとタイアップしたドラエホンという物があったが、そんな感じかな?
「ゲーム機みたいな大きな画面がある携帯電話なんだね」
私の言葉が聞こえてなかったのか、汐は通り過ぎていく扶桑を名残惜しそうに携帯電話を向けている。写真ではなくムービーを撮影しているんだろうか?
学校にいる歯医者の息子、いつも新しい物を持ってきてはクラスメイトに見せびらかしているが、汐が持っている携帯電話は持っていない。ボタンらしき物は下の方に丸いボタンが一つあるだけ。どうやって操作しているんだろう? 私は目を疑った。汐は液晶画面そのものにに触れて操作している
洋画のSFのワンシーンで似たような道具を使っている映像を見た事がある気がする。まさかとは思うけど、汐は私の生きている時代よりももっと先。未来からやってきた人間ではないだろうか? いくらなんでも私のこの想像は馬鹿げているなと苦笑してしまった。
頼めば汐の持っている携帯電話を触らしてくれるだろう。だけど、それを触ったからと言ってその携帯電話がどこで作られて、どういう層の人が使っているかなんて一般ピープルの私には分からない。
だから、私はこの汐との出会いをあとしばらく楽しむ事にした。
「汐、扶桑上手く撮影できた? 私にも見せてよ!」
これは単純な好奇心だ。男の子が最新ゲーム機に興味を持つようなそれに近い感情だと思う。もし、汐が警戒心が強くて拒否されればそれ以上この携帯電話に関しては踏み込まなければいい。私は汐の返答を待つと、「中々いい感じに撮影できたよ」と普通に見せてくれた。受け取った私は、「これ、画面が動いてるよ?」と驚く、私の触れている指を動かす通りに画面が動く。こんな物、現在存在しているのか未来人説が私の中で再燃した。
「横に指を動かして見るといい。以前に撮影した物なんかが閲覧できるよ」
私は言われた通りに操作「本当だ。この可愛い女の子は汐の友達なんだよね? みんなお洒落だね」と、汐と一緒に写っている汐の友人達、髪を染めている子までいる。
私の学校は髪を染めるのは校則違反で、見つかれば指導室で即黒染めされる。というか、髪を染めてもいい学校なんて本当に実在していたんだ。
「うん。確かにみんなセンスいいよね」
どの子もどこで買ったんだろうってお洒落な服を着ている。
私はそれ以上に全員が汐の言うスマホって携帯電話を握りしめている事に不気味さを感じていた。売っているのを見た事がない携帯電話なのに、さも当たり前のように彼女達はそれを持っている。もしかしたら帰国子女かと思った汐だけど、友人はみんな日本人だし、撮影場所も日本のどこからしい。
そして汐はちょっと喋り方が特徴的な女の子ではあるけど感じも良いし、悪く言えば至って普通なのだ。お菓子に喜び、扶桑に目を輝かせ、珍しい物を持っているのに一般常識に疎い。
「何かの縁だし、連絡先交換する?」
「そうだね。私の携帯は見ての通り圏外だから番号教えてくれるかい?」
確かに汐の携帯電話は本来三本線のアンテナが立っているであろう場所に“圏外“と表示されていた。珍しい携帯だけど電波弱いんだろうか?
「分かった。教えるね」
私の電話番号を汐に見せる。すると汐は携帯電話を操作しながら、「090から始まる番号なのか初めて見たな」と独り言。
携帯電話の番号は090から始まるのが普通だし、070だとPHSなのだが、もしかして汐の使っているこの携帯電話はPHSやそれに近い物なんだろうか? 結局、この板状の不思議な携帯電話に関して私は何も分からないまま汐はリュックにしまってしまった。
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