第6話
一つ疑問に思っていることがありこっちの世界でのぼくは前と同じを仕事をしているのか気になっていた。
スマホの連絡先を見るに特別変わった事はなくいつも通り出社すると変わらない光景で安堵する。
昼の事だが音羽から電話があり今週末会ってほしいとのことだった。
ぼくは即答でいいよと返事をし通話は終わった。
今日が約束の日で金曜日ということもあり車は多く混んでいるが待ち合わせには間に合いそうだ。
待ち合わせはぼくの家に来ることになっていた。
リピーターのお客さんに見られた時勘違いされるのがイヤなためらしい。
一応信用されているのかと思うと気持ちが楽になる。
インターホンが鳴り迎えると君は飛びついてハグをしてきた。
「やっほー。久しぶり。」
ぼくらは決して恋人同士ではないことを伝えるが知らんぷりして自分の自宅の様にリビングに向かった。
リビングのソファーに座るとぼくを見つめ君は大胆な言葉を発した。
「仕事お疲れ様。急だけどさ。君とキスしたくなっちゃった。ねぇキスしようか。」
凛とした瞳がぼくの心臓を突き動かす。
本当はしたい気持ちもあるが大人な対応をしてしまった。
「何言ってるんだ君は。そういうことするため招いたわけじゃないからな。」
「冗談だよ。まぁ、したくなったらしてきて良いから。ウチはウェルカムだよ」
冗談なのか真剣なのかが君の表情からは読み取れない。
カメレオンのように君色にぼくを変えていきこっちの音羽も悪くないと自然と思う様になっていた。
「音羽、今日は何か用があって来たのか?」
首を横に振り口を開く。
「会いたいから来ただけだよ。今日本当は閉店まで居る予定だったんだけどなんだか会いたくなっちゃってね。来ちゃった訳よ。」
「来ちゃったって。お店は大丈夫なのか?」
ぼくは驚きを隠せなかった。
初めて電話した時は不審がっていた君がこうも変わるとは思っていなかった。
「大丈夫だよ。自由出勤だから。用事があれば帰っても問題ないし。もちろん給料は減っちゃうけど今月のノルマ達成してるしもう良いかなって思って。それと明日と明後日はウチとデートしなさい。これは命令だよ。ウチは休み取ってきたから」
突然の誘いに口元で言葉が大渋滞を起こしてしまった。
「デートって何するんだよ。何も考えてないぞ。まあぼくは明日と明後日休みだから良いものの。わざわざ休みを取らなくてもよかったのに。」
「予約も入ってなかったしもう良いかなと思って。予約入ってたらさすがに会えなかったかな。君もウチに会いたかっただろうし一石二鳥ってやつだよ。」
会いたかったのは否定できず承諾することにした。
こっちの音羽はぶっ飛んだ人だとつくづく思ってしまう。
「今日ウチ泊まるから。よろしくね。」
ぼくは空いた口が塞がらない。
「見るからに着替えとかなさそうだけどどうするんだ?一度帰るのか?」
「一度帰ってまた来るからその時はよろしくね。一刻も早く会いたいから仕事終わって来たんだよ。」
積極的な君にぼくは思わず射止められてしまう。
見た目はさほど変わらず豪快な生き方してる"おとは"に夢中になっている気がした。
「明日夜行きたい所があるんだよね。」
「どこか夜景とかかい?それともレストランとか?」
「違うよホテルだよ。明日も2人で夜を過ごす予定だからよろしくね。」
音羽はぼくとのデートプランを考えてるようで気持ちを無碍に扱う訳にもいかず話を聞くことにした。
「明日は奮発して高いホテルに泊まろうかなと思って。もちろんお金はウチが出してあげるから心配しないでウチのが稼いでるからね。」
君の少女の様な表情を崩したくない一心で思わずぼくは見栄を張ってしまう。
「たとえ君のが稼いでるとしても男としてのプライドがあるからね。それにこう見えてそれなりに蓄えはあるほうなんだ。」
「君の給料知らないけど10倍以上はだいたい稼いでると思うから気にしなくて良いよ。」
10倍に思わず絶句してしまった。
さすがのぼくでも残業しても手の届かない金額にひれ伏すしかなかった。
「なら今日はそれを言いに来ただけって事かな?」
「そうだけどあとは夜を2人で楽しもうと思って。」
含み笑いをしてぼくの目をじっと見つめてくる。
どこか吸い込まれそうな感じがしてき逃げる様に冷蔵庫に向かった。
「悪いが2人分の食事はないから食べに行くか出前頼むしかないけどどうする?」
「今から着替え取りに行こうと思ってたからその時何か買ってくるから悪いけど待ってて。」
玄関まで行き見送りをして待つことにした。
その間にお風呂に入ってリラックスして君を迎えようと思う。
新しい音羽に出会ってぼくの毎日は彩りを取り戻した気分だった。
ループのことさえ忘れどちらが現実なのかも分からず生活をしているが今のところ差し支えはなく良好だ。
何がきっかけでこちらに来たのかは分からないため原因も探さないといけない。
最悪の場合また人間関係がリセットされる可能性さえあり一抹の不安もあるが君が居てさえすれば乗り越えられそうだ。
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