時を戻してキミに

伊藤深

第1話

ゴシャールは学生時代から近況報告会で集まるファミレスだ。

九州をメインに展開するファミレスでファミリー向けに設定された価格帯のため学生や学生や家族連れで賑わいをみせている。


3日前のことだが

8月10日 18時 ゴシャール

とだけ石上藍いしがみあいがグループラインで送信すると

鐘江音羽かなえおとは早坂優香はやさかゆうかから数分も経たないうちにスタンプで返信が来た。

ゴシャールの文字が含まれているだけで近況報告会と分かるので特に話を発展させず確認するとスタンプで返信するようになっている。

僕も同じタイミングで返信をしスマホの画面を閉じた。


今日が定例で開かれる近況報告会の日で

ゴシャールまでは歩いて行ける距離のため面倒くさがりのぼくにとって車を運転しなくていいのは助かる。

毎度の事だがぼくと音羽は歩いてお店まで行ける距離のため先に店内で待っている事のが多い。

ぼくらは入り口付近で合流し暑いこともあり店内で待つ事にした。

4名席に案内され、ぼくは窓際に座り向かいに音羽が座った。

座ったタイミングで音羽の鞄からスマホのバイブ音が鳴った。


「椎名くん、石上くんの運転で優香も来てるらしいんだけど道路が少し混んでて遅れそうだって。すぐ近くまでは来てるらしいんだけど」

ぼくがお冷を口に含みながら頷くと音羽は仕事や家の話などを語り出した。

数分くらい話した後、早坂と石上が到着しぼくの隣に石上が座り音羽の横に早坂が座った。


申し訳なさそうに石上は言った。

「悪いな遅れて」


「石上がこっちのが早いって言って別の道から来るから遅れたんじゃない。しかも近道でもなく遠回りだった気もするし」

すかさず早坂の野次が飛ぶ。


「早いとは言ってないぞ。早い気がすると言っただけだし。しかもあの道は通った事ないだよな。まあ道は覚えたし今度は早くなるぞ。」


悪びれる様子もない石上の態度に

あっそうですか。と早坂は呆れ返り早坂はメニュー表を取り目を落とした。


「では仕切り直して今から定例の近況報告会を始めます。」

ぼくは石上に話題を振り石上の報告を聞く事にした。


「今回お集まりいただいたのはですね。僕と早坂が同じ会社だとは知っていると思いますが早坂が異動となりまして僕と同じ部署になりました。」


ぼくと音羽は驚き得意げな顔で音羽は

「それでメイク変えたんだ。そのアイシャドウの色は優香には大人っぽすぎるよ。」


「確かに。どちらかといえば早坂は童顔じゃん。大人ぶってもまだまだ子供だよ。数ヶ月ぶりに俺に会えるからって色恋仕掛けた?」


石上の弄りに早坂は冷ややかな目で受け流しマジうるさい、そんなんじゃないからと言い少し頬を膨らませ怒った。早坂の癖で怒った時は少しだけ頬を膨らませ少しぶりっ子だ。


数ヶ月ぶりの言葉にぼくと音羽は疑問に思った。


「石上数ヶ月ぶりってどこかに行ってたのか?出張でも。」

ぼくは思わず聞いた。 


「関東の支店に研修も兼ねて行ってたんだよ。都会は人も多いし建物は高いし似た景色で迷子になった事もあったし。勉強にはなったけどもう行きたいとは思えないね。

会社に帰ってきて戻ってみたら見たことある人だなと思ってたら早坂だったわけ。帰って来た時はマジで驚いたよ」


早坂は石上に今日までぼくらには言わない様にと言われていたらしく肩の荷が降りたのか2人は安堵している。


「スッキリした。何か悪いことしてる気分だったよ。これで気兼ねなく皆と接することできるよ。石上に久しぶりに会ったら髪の毛ボサボサで前髪で目が隠れてるしもう少し清潔感出したらモテると思うんだけどな。」

早坂は石上に対してだけはキツめの言葉を浴びせる傾向にある。

だが石上は受け答えに慣れており受け流す。


「前回の報告会来たかったなあ。早坂の妹が来てたらしいし。妹ちゃんに会いたかったなあ。」


石上の一言に腹が立った早坂は石上にトドメの言葉を浴びせる。


「妹はだらしいない男には見向きもしないからね。清潔感があって几帳面でかつ気遣いできる人が好きだし。今の石上じゃ到底相手にされないかもね。ズボラだし。」


ぼくと音羽はこのままだと石上が潰れてしまうと思いマシンガンのように止まらない早坂にブレーキをかけさせた。

まだ早坂的には言いたいことがあったらしいが口喧嘩をしにきた訳じゃない事を伝えると少し落ち着いた。


「分かったわ。ならイメージチェンジて事で髪をバッサリ切ってモテる男になって帰って来るわ。陽大と音羽楽しみにしててくれ。次回会う時は誰か分からないほど別人になって帰ってくるから。」

石上は吹っ切れた表情で何故か自信に満ちあふれている。

「あと早坂。会社で会った時ドキドキしすぎて仕事が手につかなくなるなよ。」


早坂は呆れ返り棒読みで言った。

「絶対にならないから」


仕事の話やショッピングの話で1時間くらい話すとお開きとなり帰る事になった。

今回はぼくの奢りのため身支度をし会計へ向かった。

僕らグループのルールで報告会の時は誰か1人が全員分奢るという決まりになっており次は音羽、早坂、石上の順番だ。

会計の側に4人も居ると邪魔なためぼく以外は店の外に出て待っている。

会計を終え合流すると皆からご馳走まです。と言われぼくは良い気分になった。

これもぼくらグループの決まりで会計した人が出てくるとグダグダ話す事なく解散となっている。

また今度ね。と皆が言うとそれぞれ帰路についた。




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