第2話
大陸東南地域を統べる大国、
華州にも秋王が存在するが、州侯に次ぐ位の
華州州侯の位は、9人の秋王を統率する役を担うことから、コレを
夏国太伯、ジエン•アンプースは星神に魅入られて久しい。少なくとも、
ジエンは少なくとも300年、星の力を所持している。ジェンに就いた星は、ジェンとその
この力によって、夏国は300年以上に渡り、広大な土地と民を一国として束ねてきた。
そして、このジエンの力こそ国家安泰の象徴。夏国には、ジエンの有する星の他に神の力は認められない。これがシャウサンが撰州秋王を拝命するはるか以前から変わらぬ信念である。
秋王の位を得たときは、シャウサンは撰州を繁栄させる事に情熱を注いだ。
平地を中心に農業や酪農を発展させ、山岳部では繊維業に注力した。その結果、シャウサンが子供の時には、人口50万人を超える都市など州都ぐらいしか無かったが、就任から100年が経つ頃には
小さな村や町が結束しあい、街ができ、平地の至る所に都市が点在するようになった。
その頃、州北西部の山岳地帯で希少鉱石の鉱脈が見つかっり、それまで公共事業の行き届かなかった北西部がカシュガノを中心に一気に賑わいを見始めた。
カシュガノが国境に接している事もあり、州内だけでなく隣国からも多くの人々が流れ込み、まるで追い風を受けるように、撰州はますます発展を遂げていく。
元々住むアディスタン系民族。カシュガノの発展に伴って移住してきた夏国系の人々。そして夏国北方の大国を起源とするナーディア人。
閉鎖主義の夏国において、カシュガノは3民族が暮らす異例な土地となった。
そして、鉱石を取り尽くしつつある今日では、民族衝突の絶えない地域となっている。
生活水準は双方大差ない事から、ナーディア人とアディスタン系住民は比較的良好な関係を保っている。
一方、夏国系住民の生活は明らかに豊かだ。元々カシュガノへ移住してきた夏国系の人々が官僚階級であった事や、それらを対象とした商いをする者達であった事が現在まで続く格差の原因といえよう。
採掘した鉱石を役所が買い取り、卸も夏国系の商人を解して行われた。
鉱石の市場価格に合わせて鉱山労働者からの買取も増額させるなど、役所は極めて平等な売買を心掛けてきが、それでも管領と商人、そして労働者では否応なしに格差は生まれていく。
年月が経つにつれてその格差は広まり、鉱石がほぼ枯渇した今では大きな差となってしまったのだ。
この格差によって、カシュガノの治安は悪化。州政府は多額の助成金を出して住人達の生活支援を始める事となる。
撰州の民を救う事は政府の重要な務めだ。
豊かな土地に住む人々の税で生活に苦しむ人々を助けるのは当然。
鉱山が衰退し始めた頃、カシュガノ近辺の国境付近でガス田が見つかり、公共事業としてパイプラインの造設を行った。撰州州都青東を介し、華州王都まで続くパイプラインの造設は、10年掛りの一大事業となり撰州だけでなく華州にもその効果を発揮した。
撰州政府はこのガス田の管理を任せる事でカシュガノを支援しようと計画したのだが、当然ながら住民全てに恩恵を与える事は難しい。
もちろんガス田での仕事を得て生活を立て直した者も沢山居たが、やはり政府の支援を止めるまでには至らなかった。
それにしても、カシュガノの状況は一向に好転の兆しを見せない。それどころか、政府の支援は年々増えるばかりだ。
シャウサンにそれが解せなかった。
しかし原因は簡単な事だった。
カシュガノは状況はもちろん、地形も気候も生活していくには難しい土地だ。しかし政府が生活を支援してくれる場所でもある。だから生活に困った人々が年々カシュガノに集まって来ているのだ。
それが10年、20年と続くと、シャウサンにある思いが生まれた。
シャウサンの秋王としての目的は、太伯が喜ぶような栄華を誇る州を築く事。しかしカシュガノがそれを邪魔している。
カシュガノは撰州の発展の足枷であり、汚点でしかない。
太伯の為のガス田を守りつつ、カシュガノを放棄する事ができたなら……。
そんな事を考え続けたある日、
まるで祈りが天に届いたかのような事が起きた。
どうやらカシュガノが隣国に組入ろうとしているらしい。
なんという好都合だろう。
早速夏王に書面を書き、同時に隣国政府宛にも使節を送った。
長年考えて来たから手順に迷いなどない。
カシュガノの鉱山より西、撰州政府の管理が行き届かない山岳地帯を隣国アディスタンへ譲渡する。
ものの数時間で夏王へ申請の書面を作り上げ、華州へ送った。
例え夏王が反対したとしても、太伯はシャウサンの申し出を許す。必ず。
太伯に酔心するが故の根拠のない自信を胸に、シャウサンは王都からの返事を待つ。
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