第16話 ラフィーナがお風呂に

「ふう……疲れた」


 俺はシャルロッテ王女の側にいる。

 まだ寝ているみたいだ。

 すやすやと安心した表情をしている。

  

 ファルネーゼ王妃に説得されて、1週間、王宮にいることになった。

 俺はシャルロッテの呪いを解いたら、すぐに教会に帰るつもりだったが、どうしても俺にいてほしいらしい。

 ファルネーゼ王妃の呪いが解けたことを祝う、パーティーをやるそうで、それに俺も出席してほしいと。

 

「はあ、やれやれだ……」


 パーティーで貴族や王族と社交するのは、すげえめんどくさい。


 コンコンっ!


「誰だ?」


 ドアをノックする音がした。

 俺がドアを開けるとそこには——


「エルネスト公爵……?」


 エルネスト公爵が、外に立っていた。


「グラスト殿、話がある」


 エルネスト公爵は、ドカドカと部屋に入ってくる、


「何の用だ?」

「実は……貴様に頼みがあるのだ」


 エルネスト公爵は、わざとらしい笑みを浮かべる。

 めっちゃくちゃ嫌な予感がするのだが……


「どんな頼みだよ?」

「貴様を王女殿下のところへ連れてきたのは、わたしということにしてほしい」

「はぁ?」


 俺をシャルロッテ王女のところへ連れてきたのは、ラフィーナだ。

 エルネスト公爵が俺を連れて来たわけではない。


「わたしは四大貴族、誇り高いエルネスト公爵家の当主だ。貴様のせいで王妃様からお叱りを受けた。貴族として名誉を挽回するためには、功績が必要で——」

「なるほどな。だから俺を連れて来たのは自分だということにしたいと」

「その通り! 当然、OKだな?」

  

 OKして当たり前だというような、自信満々の顔しているエルネスト公爵。

 いったいどこからその確信が出てくるのか、マジで意味がわからないのだが……

 ていうか、ラフィーナが俺を連れて来たのに、それを自分が連れて来たことにしたいなんて、セコすぎないか。

 俺は答えは、当然——


「断る」

「な、なぜだ……?! 貴様、エルネスト公爵家を敵に回して生きていけると思っているのか?」

「俺をシャルロッテ王女のところへ連れて来たのは、ラフィーナだ。だから功績はラフィーナのもの。それが事実だろ?」

「たしかに事実だが、そこをなんとか——」

「都合良すぎだろ。仮にも四大貴族なら、実力で功績を作れよ。バーカ!」


 やべえ。ついつい最後に「バカ」と言ってしまった。

 イラッとしたから本音が出てしまったのだ。


「ば、バカだと……! 悪徳神官風情がぁ! 覚えておけよ! 必ず後悔させてやるっ!」

「はいはい。邪魔だからさっさと出て行ってくれ」

「ぐ……っ! 調子に乗るなよっ!」


 エルネスト公爵は、キレながら部屋を出ていく。

 帰り側にドアを思い切り蹴っていた。

 アレで四大貴族って、この国は大丈夫なのか……?

 まあ知らんけど。


 ……そんなことがあった後、しばらくして。


「グラスト様、お風呂の準備ができました」


 メイドさんがやって来た。


「おっ。ありがとう」


 王宮の地下に、大浴場があるらしい。

 王族専用の風呂で、特別に使わせてもらうことになっていた。

 

 メイドさんに案内されて、大浴場へ向かう。

 王族専用の豪華な風呂を貸し借りだ。

 近くの温泉の湯を、引いてるらしい。


「楽しみだな」


 ★


「すげえ。広いな……!」


 大理石でできた浴場と、ライオンの像からお湯が出ている。

 さすが王族の風呂だな。


「疲れたからゆっくりお湯に浸かるぞー!」


 と、俺が浴槽に浸かろうとした時——


「グラストさん! お背中お流します!」


 ラフィーナが、風呂に入って来た。

 もちろん、裸で——



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