第14話 ヒールで感じてしまう

「はぁん♡ あん、あん……はああああんっ!」


 俺がヒールを使うと、寝ていたシャルロッテが喘ぎ出す。

 かなりエロい声だ……

 だが、やめるわけにはいかない。


 ——イメージする。

 シャルロッテの魂に纏わりついた、黒い霧。

 この黒い霧が呪いだ。

 それを……振り払う! 


「ヒール……っ!」


 緑色の光が、もっと強くなる。


「はぁぁぁぁん……っ! あん、あん、あん! ふぅぅぅん♡ あん、あん♡ ああああああああっ!」


 シャルロッテは、もっと強く喘ぎ出す。


「王女殿下の黒い斑点が……消えて行く」


 ラフィーナがシャルロッテのベッドに駆け寄った。

 シャルロッテの顔を覗き込んで、手に触れる。


「シャルロッテ王女殿下……頑張ってください! 今、グラストさんがあなたを助けてくれますっ!」

「はああああああああん……っ!」


 シャルロッテは身体をビクビク震わせて、恍惚とした表情を見せたあと、ベッドに沈んだ。


「よし。黒死の呪いは完全に取り去った」


 シャルロッテの身体にあった黒い斑点は、すべて消えてしまう。

 呪いが解けた証だ。


「しばらく安静にしていれば、あとは大丈夫だ」

「グラストさん、ありがとうございますっ!」

「ぶ……っ!」


 ラフィーナが俺に抱きついてくる。

 コートの下は裸の状態のラフィーナ。

 身体の柔らかいところ(主におっぱい )が俺に当たりまくってくる……!


「本当にありがとうございます。グラスト殿」

「はっ! お、王妃様っ!」


 いつの間にか部屋にいたのは、ファルネーゼ王妃。

 シャルロッテの母親で、現国王の正妻だ。

 シャルロッテと負けないくらいの、美女。

 そして……胸は全キャラの中で一番大きい。あれはもう、爆乳と言っていいだろう。デカすぎる。


「シャルロッテを救ってくださって、深く感謝を申し上げます。ぜひ今夜はこの城で、ゆっくりして行ってください」

「ありがとうございます。そうしたいのですが、俺はもう行きます」

「! なぜ……? グラスト殿のために国王陛下が褒美と、歓迎の宴を用意しています」


 ファルネーゼ王妃は驚いた。


「孤児院の子たちと約束したんです。王女殿下を治したらすぐに戻ると」

「そ、そこをなんとか……! シャルロッテは我が王国の貴重な戦力。そんなシャルロッテを救ったグラスト殿は英雄です。王国としてぜひお礼を……」

「お礼なら約束した100万ゴールドでいいよ」

「いやいや、グラスト殿になら、100万ゴールドどころか、1000万ゴールドに、さらに広大な領地も与えると陛下が——」

「いいって。そういうの」


 たしかに【紅蓮の魔術師】と呼ばれる、最強の炎魔法の使い手であるシャルロッテを俺は助けた。

 人族にとってシャルロッテは貴重な戦力だから、まあ感謝はされてもいいだろう。

 だが、領地とかもらっても管理が大変だし、金をたくさんもらうと民衆の好感度が下がるかもしれない。

 だからここはさっさと帰ろう。


「き、貴様……っ! 王妃様になんと無礼な——」


 エルネスト公爵は俺に注意するが、


「ソナタは黙っていなさいっ! グラスト殿は命の恩人ですよっ! 何もできなかったソナタが、出る幕ではありません!」

「ぐ……っ。申し訳ありません、王妃様……」


 エルネスト公爵は、ファルネーゼ王妃に謝る。

 頭を下げつつ、俺をチラリと睨んだ。

 なんか俺のせいにされているんだが……?


「それよりも……エルネスト公爵。先ほどメイドから聞きましたが、ソナタはグラスト殿の邪魔をしたそうですね?」

「あ、いや、それは……」

「王国を危機に晒した責任は重いですよ?」

「あの……わたしは、ただ……王女殿下のために——」


 エルネスト公爵の顔が、どんどん焦っていく。

 額から冷や汗がダラダラ流れまくる。


「どう責任を取るつもりですか……?」

「いや、それは……」


 エルネスト公爵は、俺をチラチラと見る。

 懇願するような目をして……

 どうやら助けてほしいらしい。


 エルネスト公爵は、四大貴族のひとりだ。

 恨みを買うと後々面倒なことになる。

 ここは仕方ないか……


「……王妃様、王女殿下は無事にわたしが助けました。だからエルネスト公爵のことは許しては?」

「しかし……」

「とにかく王女殿下は安泰です。わたしが側で経過を見ますから」

「わかりました。グラスト殿がそう言うのなら、エルネスト公爵の責任は不問にします。エルネスト公爵、グラスト殿に感謝しなさい」

「ありがとうございますっ! 王妃様!」


 エルネスト公爵は、ファルネーゼ王妃にお礼を言うが、


「違います。グラスト殿にお礼を言いなさい」

「ぐ……礼を言うぞ。グラスト殿」


 不満そうな顔をしながらも、エルネスト公爵は俺に頭を下げた。


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