第12話 魔力が多すぎるんだが

「な、なんだ……?! いったいこれは……?」


 俺の【魔練】を見て、エルネスト公爵が焦りまくる。

 魔練とは、体内の魔力を増幅させて、身体の外に出す【四魔行】のひとつだ。

 相手の魔力を知るためには、まず魔練を見ればいいと言われている。

 そいつの魔力量が一目でわかるからだ。


「床がグラグラ揺れて……窓がっ!」


 俺が魔練を行ったせいで、王宮の窓がガタガタ震えて割れそうになる。

 あと0.1%でも魔力を増やせば窓は割れるだろう。


「お、おい……貴様に【そこそこの魔力量】があることはわかった。もう魔練はやめて——」

「はぁ? まだ魔練はしていないが?」

「えっ?」


 俺がやっていたのは、魔練の予備動作だ。

 魔練はまず魔力を身体に溜めて、次に魔力を放出する。

 つまり、まだ第一段階の【身体に魔力を溜める】ことしかしていない。


「嘘だろ……ま、待ってくれっ! このまま魔練をやったら——」

「おいおい。お前が【魔練を見せろ】と言ったんだろ?」

「いや……貴様に魔力があるのはわかった! だからもうやめて——」


 ふう……と俺はため息をつく。


「都合がいいな。だが、このまま王宮をぶっ壊すのは俺も嫌だ。だから……」


 俺は両手を、エルネスト公爵に向ける。


「な、何をしている……?」

「何をって……溜めた魔力を放出するんだよ」

「なぜ手をわたしに向けて……」

「放出した魔力を、受け止める奴が必要だろ」

「……えっ? いや、いやいやいや……や、やめて、やめてくれえええええええっ!」


「バーンっ!」


 俺がそう言うと、エルネスト公爵は、


「ガハ……っ!」


 と叫んだ後、倒れ込んでしまう。


「……どういうことでしょう? 何も起こってないのに、エルネスト公爵が気を失ってしまいました」


 ラフィーナは、倒れたエルネスト公爵の顔を覗き込む。


「俺に魔力をぶつけられたと勘違いして、勝手に気絶したんだろう。ま、ドアが壊れずによかったよ」

「なるほど。そういうことでしたか……」


 自分が巨大な魔力をぶつけられたと思い込んで、エルネスト公爵は倒れてしまったわけだ。

 人間の思い込みの力ってすげえな……


「じゃあ、早く王女殿下を治そう」

「は、はい……っ! グラストさん!」


 やっと王女殿下と対面だ。



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