第11話 王女の側近に絡まれる

「ここが王宮か……」


 王都、アレフガント。 

 城壁に囲まれたデカい街の中央に、王宮がある。

 がっつり中世ヨーロッパのお城って感じだ。

 

「王女殿下のお部屋へご案内します。グラスト様に早く診てほしいのです」


 俺とラフィーナは、王宮の中へ入っていく。

 かなり豪華な造り。

 高級ホテルみたいな、ベルベットの絨毯が敷き詰められている。

 さすが王族の家だな……


「ここが王女殿下の部屋です」


 階段を上がって、ドアの前へ来た。

 いよいよ王女殿下と会うのか……

 と、俺が身構えていたら——


「待て」


 背後から男の声が聞こえる。


「大聖女さま、その男は誰ですか?」


 俺とラフィーナが振り返ると、騎士のおっさんが俺を睨んでいた。

 ごつい鎧とでかい剣を持った、重騎士。

 装備から考えると、身分の高いヤツだろう。


「エルネスト公爵ですか……。この方は、グラスト・フォン・マギノビオ男爵。神官で王女殿下の治療のために来ていただきました」


 ラフィーナが俺を紹介すると、


「ま、マギノビオ?! 大聖女さま、そいつは悪徳神官ではありませんか?」

「ええ。グラストさんは巷でそう呼ばれていますが、本当はいい人です。今は急ぎますので——」

「ダメだっ!」


 ラフィーナがドアに近づくと、エルネスト公爵がドアの前に移動した。

 転移魔法による、瞬間移動……!

 かなり高度な魔法を使えるみたいだ。


「悪徳神官を王女殿下に会わせるわけにはいかない」

「どいてくれ。急ぐんだ」

「大聖女様でさえ治せなかったのだ。貴様のような邪な者が魔法を使えば、王女殿下の具合が悪くなる。王女殿下の側近として、それは許せん。」

「! グラストさんは、膨大な魔力を持っています。グラストさんの魔力があれば、王女殿下を治せる——」


 ラフィーナがそう言いかけると、


「なんと! 悪徳神官が大聖女さまを騙すとは! 許せんヤツだ。さっさと帰れっ!」


 ドンっと、エルネスト公爵が俺を突き飛ばす。


「……お前、責任取れるのか?」

「は? 何を言ってる?」

「俺の邪魔をして、王女殿下に【もしものこと】があれば、お前はどうするつもりだ?」

「はははっ! 貴様のような悪徳神官がいなくても、このわたしが【世界樹の聖水】を持ってきた! これで王女殿下の呪いは解けるのだっ!」


 エルネスト公爵は、キラキラ光る瓶を掲げる。

 世界樹の聖水——あらゆる状態以上を治癒しする、ゲーム中最強の回復アイテムだ。

 しかし【黒死の呪い】だけは治癒できないのだが……


「世界樹の聖水じゃ、治癒できないぞ」

「嘘をつくなっ! 世界樹の聖水は百年に一度しか取れない、万能の回復薬だ。貴様のヒールより効果がある」

「……エルネスト公爵! そこをどいてください! グラストさんの力は本物ですから!」


 痺れを切らしたラフィーナが、叫び出す。


「魔力があるなどと、大聖女さまを騙しおって! 今、【魔練】を見せてみろ。貴様の魔力など大したことない!」


 魔練は、魔力を増幅させる魔法の基本動作だ。

 人の魔力を測るには、魔練が見るのが一番早い。


「いいのか? ここで魔練を見せても?」

「?? 何を言ってる?」

「床に捕まっていたほうがいいぞ?」

「はははっ! 戯言を——?」


 俺は魔力を、身体に溜めていく。

 周りの空気が冷たくなり、窓がガタガタと震える。

 

「な、なんだ……? 地震か?」

「安心しろ。5%ぐらいで抑えるから」

「いったい何が……?」

「はあああああああああああっ!」



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