第119話 天才錬金術師に、万物創造スキルを付与する



「世界樹ぅう~~~~~~~~~~~?!」


 新しい街の外にて。

 世界樹娘のメイちゃんを見て、セイラちゃんが叫ぶ。


 カシャン。

 ……ん?


「なんだこれ……?」


 セイラちゃんの上空に、可愛らしいマスコットが浮かんでいた。

 

「招き猫……?」


 セイラちゃんの頭上に浮かんでいるのは、招き猫。

 小判の部分がカウンターになっていて、【12】になっていた。

 なんじゃこれ……?


「セイラちゃん、あのさ……」

「なに!?」


 ひっ……怒ってる。じゃあ、聞くのはあとにしておこう。


「みーちゃん。なんでせーちゃん怒ってるの?」

「怒ってないよ。多分あきれてるんだと思う……」

「あきれる? だれに?」

「私に。ずぼらだから」

「あー、わかるー」


 わかる!?

 幼女にすら私がずぼらってわかってるらしい……。


 なんかちょっとショック。


「世界樹の精霊がこんなところに、どうして……」


 こんなところて。


「前に奈落の森アビス・ウッドにいったときに、会ったんだ。世界樹。ねー」

「ねー!」


 信じられない、というような顔をするセイラちゃん。


「ねえ……ミカ。世界樹って知ってる?」

「知ってるよ。魔素マナを生み出す特別な木でしょ?」


「知ってるのになんで驚かないのよ!?」

「え、だって世界に9本【も】あるわけだし」

「9本【しか】ない、とっても貴重な樹なのよ! 偉い学者が、どこ探しても、長年見つからなかった場所なんだから!」


 あれ、そうなんだ。


「普通にぬるっと見つけたけど」

「はあ……!?」


~~~~~~

「世界樹の所在地」

→ゲータ・ニィガ近郊、ミタケ山、カイ・パゴス国の氷城、ゲータ・ニィガ王城地下金書庫等……

~~~~~~


「ほい、世界樹9本の所在地」

「なんですってぇええええええええええええええええ!?」


 かしゃんっ。

 ……ん?


 セイラちゃんの頭上の、招き猫の数字が、【12】になっていた。

 さっきは11だったのに……今12って……あれぇ?


「ねえ、セイラちゃん。頭の上の……」

「なによ!?」

「いや、なんでもないっす……」


 メイちゃんがセイラちゃんに言う。


「せーちゃん、かりかりしてるね。かるしゅーむたりてない?」

「どっかの最高駄女神のせいでね!」


 はてさて、誰のことやらね(すっとぼけ)。

「しかし……全知全能インターネット……すごいわね。なんでもわかっちゃうんだ。隠蔽されてる情報ですら……」

「そーみたいね」


「ねえ、ミカ……。前からスッゴく不思議だったんだけど」

「なに?」


「どうして、ミカって……全知全能インターネットもっとつかわないの?」


 急にどうしたっていうんだろうか……?


「だって、全知全能インターネットって、何でも答えてくれるんでしょ? ミカってさ、何かしてもミカもよくわからない、って事態多いじゃあない?」

「そうね」


 多々あるねそれ。


全知全能インターネットがあれば、全部わかることでしょ? 事前に調べておけば、自分も、相手も驚かせることってなくなるんじゃあない?」


 う……確かに。

 でもなぁ……。


「めんどくさくて……」

「めんどくさいって!?」

「いやだって、自分の興味ない分野について、調べる気っていまいち起き無くない?」


 全知全能インターネットは、全ての疑問を解決してくれる、知識の宝物庫だ。

 しかしその数は膨大。膨大な情報を自らあさっていくのは、めんどくさい。


「だから……あんた受け身なのね……」

「そうそう。何かあったときに、調べる」

「今までも、そうやって受け身でなんとかなってきた。その成功体験があるせいで、自発的に全知全能インターネットを使ってかないのね……」


 一〇歳児に分析される二九歳児の思考。

 けっこー辛辣なこといわれたけど、まあ、だいたいあってるから何も言い返せない。


「ずぼらすぎる……」

「そういう性分なのさ。ごめんね」

「宝の持ち腐れすぎる……!」

「否めませんねそれは」


 はぁ……とセイラちゃんが深々とため息をつく。

 ちなみに頭上の招き猫の数字は回っていない。


「ところでセイラちゃんさ、頭の上に招き猫を載せる趣味とかってある?」

「はぁ~?」


 何バカなことを……みたいな顔をした。

 が、すぐに頭上を見やる。


「って!? なによこれぇえええええええええ!?」


 カウンターが【12】から【13】になった。

 ……あれ? セイラちゃんが驚くことで、カウンターが回ってる……って、まさかこれ……。


「なんだろうねこれ」

「そういうときこそ! 全知全能インターネットでしょうがっ!」

「あ、そうね。調べるわ」


~~~~~~

「セイラちゃんの頭上の招き猫」

→契約神セイラの眷属器

~~~~~~


「セイラちゃんの眷属器みたい」

「ルシエルのハリセンみたいな?」


 ハリセンっていうか、全知全能の剣ホテイソンなんだけど。


~~~~~~

「セイラの眷属器」

全知全能の釜トリスメギストス


全知全能の釜トリスメギストス

→無より有を創造する、「万物創造スキル」が付与された釜。

神に娯楽を提供することで、カウンターがたまり、その回数分だけ、万物創造スキルが使える。

~~~~~~


「神に……娯楽!?」


 セイラちゃん、いつ私に娯楽を提供してた!?


「万物創造スキルですってぇえええええええええ!?」


 かしゃん。

【13】→【14】


 招き猫(全知全能の釜トリスメギストス)のカウンターが回った。

 あれぇ?


 神に娯楽を提供……してた、セイラちゃん……?


「万物創造スキルっていえば、創造神ノアールさまの持つ、神のスキルじゃあないの! 何も無いところから、創造した物体を作り出すって言う、奇跡のスキルよ!」

 

 説明ありがとうセイラちゃん……。

 どうせ私が知らないのを見込んで教えてくれたようだ。かしこ。


「なんで万物創造スキルが!? あたしに!?」

「それが眷属器のスキルみたいだね」


 全知全能インターネットで調べた情報を、セイラちゃんにも見せる。


「理解不能だわ……。ミカに娯楽なんて、いつ提供したのよぉ~……」

「さぁ……」


「調べてよ……! 全知全能インターネットで! 全知全能インターネットが泣いてるわよ!?」


 そ、そっか……。


~~~~~~

全知全能の釜トリスメギストスのカウンターについて」

→神に娯楽を提供する。

→驚ろいてみせる、美味しいご飯を作ってみせる等。

~~~~~~


「鼻スパカウンターじゃん!」


 え、つまり……鼻スパカウンターが具現化して、眷属器になったってこと……?


~~~~~~

全知全能の釜トリスメギストスが作られた理由」

→ナガノミカがいちいち鼻スパする手間を省くため、創造された

~~~~~~


 やっぱり!

 鼻スパするという、私にとってのやりたくないことを、スキル(万物創造スキルの使用回数)に代えてくれたってことみたいだ。


 セイラちゃんがその場にしゃがみ込む……。


「もう……むちゃくちゃよぉ~……意味不明よぉ~……」


 ま、まあまあ、と私はセイラちゃんを慰める。


「セイラどの~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 だっ……! と街からルシエルが駆けつけてくる。


「ルシエル! るしえーーーーーーーーーーーーーーる!」


 セイラちゃんがルシエルに抱きつく。


「よくぞ耐えました!」

「うん! もう限界だった! もういっぽで頭が破裂するところだった!」


「おーよしよし! 可哀想にっ!」


 えーっと……私のせい……だよね、これ。


「で、何をしちゃったの、ミカ神どの? ちゃんとごめんなさいは言った?」

「ルシエルさん? 私……29歳ですよ……?」


「何か悪いことしたら、ごめなさいでしょうっ、ミカ神どのちゃん29歳」

「はひ……すみません……」


 ルシエルのなかで、完全に私幼児扱いなんですけど……。

 まあ、ハーフエルフからみれば、29歳なんて子供みたいなもんだけども。


 セイラちゃんの眷属器について説明した。


「なるほど……冗談で言っていた、鼻スパカウンターが、眷属器(力)となって具現化したと」

「うん……もう意味不明すぎてわけわからないわ……」


 なるほど、とうなずいたあとに、ルシエルが言う。


「まあ、よくあります」

「よくあるの!?」


 かしゃん。

【14】→【15】


「だってアタシの眷属器なんて、ハリセンですよ?」


 ルシエルが自分の全知全能の剣ホテイソンを取り出す。

 巨大ハリセン。


「これに付与されたスキルは、禊ぎ祓いつっこみです」

「はぁあ!? 禊ぎ祓いつっこみぃ!? 意味不明すぎわよ!?」


 かしゃん。

【15】→【16】


「おそらくですが、眷属器はミカ神どのが、無意識に作っておられるのです。心の奥底で、こういう力が欲しいな、こういう厄介事をどうにかいしたいな、という思いが、眷属達の力となって具現化してるのかと」


「ミカの思いが、眷属器を作るってことね」


「そうです。だから、こんなハリセンだの鼻スパカウンターだのと、わけわからないものが生成されるのです」


「なるほど、ミカは訳わからない存在だものね」

 

 どいひーですわ……。


「ねえ、ミカ。今ルシエルが言ったことって、全知全能インターネットで調べて教えてあげたことなの?」

「いや?」


「でしょうね……! ああもう! ほんっとずぼらなんだから! 泣いちゃうわよ全知全能インターネット!」


 いやいや、まさか泣いちゃうなんてそんな……


~~~~~~

「眷属器生成のメカニズム」

→だいたいルシエルさんが言ったとおり

~~~~~~


「なんか雑になった!?」

「どうなってるのよ!?」

「わからないよ!」

「だからぁああああああ! なんであんたがわからないのよぉおおおおおおおおおおお!」

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