第118話 難民達の食糧問題を解決する



「な、なんだこりゃあ!?」


 難民達が、いきなりできた街を見て驚愕してる。


「街だ!?」

「さっきまで何も無かったのに!?」

「ちょっと見ない間に、街ができてる!?」

「どうなってるのぉ!?」


 そりゃ皆さん、驚きますわな……。


「どうしよ……」

「ノープランなのか、ミカ神どの……」


 ルシエルがため息をつく。


「こうなるだろうと思って、助っ人を連れてきているぞ」

「助っ人?」


「こい、駄女神2」


 駄女神2……って、まさか。


「ミカ~~~~~~~~~~~~!」


 後ろから、だきぃ! と強くハグされる。

 この声……まさか!


「モリガン!」

「はいっ! あなたのモリガンです♡ ミカ……! あいたかった……!」


 眼鏡をかけた美女神、上級神モリガンが、そこにいたのだ。

 モリガンは私の背中に頬ずりしてる。


「ああ♡ ミカ♡ ミカ……♡」

「離してって、子供が見てるから」


 セイラちゃんとかリシアちゃんにがっつり見られていた。

 ぱっ、とモリガンが私から離れる。


「なんであんたがここに?」

「ルシエルに呼び出されてたのです」


 ルシエルに?


「ほら、モリガン。お得意の口八丁で、びっくりしてる難民たちを落ち着かせてこい」


 こいて……。

 確か、ハーフエルフって、森の神(※モリガン)を、あがめてませんでしたっけ……?


「貴女に命令されずとも、わかっております!」


 モリガンが難民達の前へと移動する。


「聞きなさい! ゲータ・ニィガの元国民達よ!」


 モリガンが声を張り上げる。


「彼女は、伝道者モリガンさまだ!」

「伝道者さまー!」


 ……そう、なんか知らないけど、モリガンは伝道者ってことで、難民達(※ゲータ・ニィガ国民達)の間で、名前が知られてるのである。


「この街は……我等がナガノカミさまが、お作りなられたのです!」


 ナガノカミっていうのは、私のこと。

 でも、国民達の中では、目の前の私(ミカりん)=ナガノカミ、であることは知らないのだ。


 ややこしい。


「ナガノカミさまが!?」

「そうです! 慈悲深きナガノカミさまは、家のない貴方たちを哀れみ! こうして街を、家を、作ってくださったのです……!」


 普通だったら、こんなうさんくさい話、信じないだろう。

 でも……伝道者たるモリガンが言うことによって……。


「「「うぉおお! さすがナガノカミさまぁ……!」」」


 とまあ、あっさりと信じてくれるわけだ。 なるほど……。


「ルシエル、ありがとね。先手を打ってくれてて」


 急に街なんてできた日には、皆大混乱。

 ならば、神の所業(しわざ)とすることで、混乱を最小限に留めるのがベスト。


 で、それを効率的に難民に知らせるために、伝道者たるモリガンを事前によこしておいた……。


「できる子だね、ルシエル」

「ありがとう、ミカ神どの。でもこういうのは、自分で手配して欲しかったな」


 ふぐぅ……。

 一方、セイラちゃんが私を見ていう。


「ミカって……基本、他人に仕事を丸投げするわよね」


 バレてた。


「ミカ神どのは、細かい仕事とか、めんどくさい仕事が苦手なのだ。そういうの、全部、他社に委託するのだ」

「やっぱり……ものぐさっぽいもんね、ミカって」


 そうですよ、ものぐさですよ、めんどくさいの大嫌いですよー。

 だから、できる子らに仕事を任せちゃう。


「では、難民の皆さん。街へ行きましょう。おさない、かけない、しゃべらない。以上を徹底して、はい、移動開始……!」


 モリガンが手を叩くと、難民達が大人しく、中に入っていく。

 ふぅう……やれやれ。

 これでなんとかなりそうだ。


「お母様、わたし、難民さんたちの数を数えますね!」

「リシアちゃん、よろしくね」


 ほんっとに、うちの子はできる子だ。


「では、リシアどのをお手伝いする」


 とルシエル。


「じゃ、私は次の問題を……」

「「ちょっと待て!」」


 ルシエルとセイラちゃんに引き留められる。

「どったの?」

「ミカ神どの、一人で行動は駄目だ」


「なんでよ?」

「貴女は目を離すと、すーぐ何かやらかすから」


「赤ん坊かっ!」

「パワーがある分、赤ん坊よりたちが悪いです」


 何も言い返せない……!


「セイラどの、悪いんですが、この人のめんどう見てあげてくれませんか……?」

「わかったわ。あたし、頑張る。ツッコミを」


 ツッコミて……。


「ミカの暴走を、頑張ってとめてみせるわ……!」

「その意気です。アタシは駄女神2の面倒もみなきゃなので、そちらの最高駄女神の面倒はお任せしますよ」


 ン……?


「え、最高駄女神って?」

「じゃ、いくわよミカ」

「ちょっとちょっと、ねえルシエル。最高駄女神ってなあに? もしかして私のこと……? ねえ……!」


 ルシエルがリシアちゃん、モリガンを連れて、難民の整理に向かっていった……。

 まじか……。


「私も、トゥアハーデ、モリガンと……同じくくりだったなんて……」

「今気づいたの?」


「うん」


 セイラちゃんに哀れみの目を向けられる私。

 やめて! 一〇歳児そんな目ぇ向けられたら!

 私……恥死ぬ! おとなとして!


 ややあって。

 私たちは、新しい街の外壁の外へとやってきた。


「次ってもしかして、食糧問題?」


 セイラちゃんが私に尋ねてくる。あらまあ。

「気づいてたんだ」

「そりゃね。あんだけの数の難民を抱えることになるんだから。まず最優先で考えるべきは、食糧の確保の方法よね」


 そう……。

 あくまで、今回の炊き出しは、一時的処置でしかないのだ。

 

 今後、難民達はご飯を継続して食べていく。 となると、食料が確実に足りなくなっていく。


 米やらなんやらを、毎回KAmizonで購入すると、KP(神ポイント)が直ぐに枯渇してしまう。

 その前に、難民の皆が、他の街の人たちと同様に、ある程度自給自足できるようにならないと。


「よその街から、食料をわけて貰うって手はないの?」

「できなくないけど、ここの難民の数めっちゃ多いからね」


「そっか……おじーちゃんおばーちゃんたちが、自分たちで食べる分無くなるのはよくないわね」


 そのとおり。

 だから、ここの人たちの食料は、自分たちでなんとかして貰いたいわけだ。


「何かあてとかあるの?」

「まあね」


 食糧問題を、どうしようかについては、ちょっと考えていたことがあるのだ。


「待って」

「? どうしたの?」


 すぅ……はぁ……とセイラちゃんが、何度も深呼吸を繰り返す。


「OK。いつでも来なさい!」


 覚悟が決まってる顔で、セイラちゃんが言う。


「え、何その顔……」

「どうせまたトンデモナイことするんでしょ?」

「いやまあそうだけど……」

「だから、驚く覚悟をしていたの」

「驚く覚悟を!? 今から!?」


 早くない!? 

 

「大丈夫よ。頭の中で、色々シュミレートしてみたから」

「はぁ……」


「その上で、あんたがあたしの想像の上を行くってことも、織り込み済みよ。いつでもきなさい!」


 よくわからないけど、まあこれで何が来ても大丈夫っぽい。


「じゃ、ボックス。おいで、メイちゃーん」


 空中のボックスから、ぴょんっ、と空色の髪をした女の子が現れる。


「めー、さんじょー!」


 空色髪の幼女が、びしっ、とかっこいいポーズを取る。


「みーちゃーん!」


 だきぃい! と、メイちゃんが私の腰にしがみつく。


「みーちゃんみーちゃんっ! あそんでくれるの~?」

「仕事の後でね?」


「仕事? めーにおまかせっ。こーみえても、めーはね、ばりきゃりなのです!」


「ばりきゃりか。それは心強い」


 ぽかんとするセイラちゃん。


「な、なんだ……ただの幼女……いや! 幼女と侮っちゃ駄目だわ! どうせミカのことですもの、なにか……トンデモナイ幼女に決まってる!」


 すっかり疑い深くなってるなぁ、セイラちゃん。


「みーちゃん、この銀髪のおねえちゃん、だぁれー?」


 メイちゃん、私の後ろに隠れながら、セイラちゃんを見て言う。

 見知らぬ他人がいたので、警戒してるようだ。


 私はメイちゃんの頭を撫でながら言う。


「あの人はセイラちゃん。私やリシアちゃんの友達」

「みーちゃん、りーちゃんの、ともだち! じゃあ……めーとも、おともだちっ?」

「そうそう」


 だっ……! とメイちゃんが私の陰から出て、セイラちゃんの前までやってくる。


「こーんにちはっ! めーは……めい!」

「えと……」


 セイラちゃんはちょっと警戒しつつも……。

「はじめまして。セイラ・ファートよ。よろしくね」

「よろしくぅ! せーちゃんっ」


 ぶんぶんぶん! と、メイちゃんがセイラちゃんの手を握って、上下に揺する。うむ、仲良しはいいことだ。


「なんだ……普通の女の子……じゃあないわね」


 警戒しすぎでしょ……。


「メイちゃん、さっそくお仕事頼んで良い?」

「もろ●ん!」


 ……メイちゃん!?


「はっ……! もちろんってゆーつもりがっ! きゃははっ! もろち」「言わせないよ!?」


 あっぶない……ほんと、無邪気な幼女なんだからメイちゃん……。


「じゃ、このあたりに、食べられそうな植物、てきとーに出して」

「なにその適当な指示……」


 メイちゃんがどんっ、と胸を手で叩く。


「うん! みてて……」


 メイちゃんがその場にしゃがみ込む。


「ん~~~~~~~~しょっ!」


 メイちゃん、一度しゃがみ込んで、ぱっ、とのびをする。


 ズモモモモモモモモモ……!!!!!


「!? しょ、植物が……何もないところから生えてきた!?」


 トマトやきゅうりといった、食べれる植物が、一瞬にして大量に生えたのだ。


「め、メイちゃん……? あなた、一体……?」

「めー? めーは、世界樹、です……!」


 セイラちゃん、ぽかーんとする。あ、これは……駄目だ。


「せせせ、世界樹ぅう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」


 頑張ったみたいだけど、セイラちゃん、驚いてしまったのだった。

 鼻スパカウンター……回ってしまいましたね。うん……。

 

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