第117話 眷属を使ってサクッと街作り



 皆に炊き出しのカレーを振る舞った。

 けっこー人数居たけど、こっちには野菜眷属たちのマンパワーがあったので、どうにかなった。


「おいしかった~……」「まんぷくぅ~……」

「よーじはすんだ。そろそろ、れいのとこ、かえるかな」


 子ども達が幸せそうな表情で、お腹をさすってる。

 狐みたいな目をした、ちっこい子が、近づいてきた。


 なんか日本の着物? みたいなの着た、ちっこい子だ。


「なに?」

「あざました」

「はぁ……」

「これ。かれー。おれい」


 狐目の女の子が、自分の髪の毛を1本抜くと、私に渡してくる。


「髪の毛……?」

「れーもー」

「霊毛?」

「ぐっばい」


 てってってー、と女の子が去っていく。

 ……途中で、消えた。ふぁ!?


「せ、せ、セイラちゃん! 今の見た!?」

「え? なに?」


「女の子が、ふわ……って消えた!?」

「…………」


 可哀想なものを見る目で、セイラちゃんが私を見てきたっ。


「いやまじだから。さっき着物を着た女の子が、ふわーって消えたんだからっ」

「そうね。そんなことより」


 そんなことより!?

 え、重要じゃあないの?


「ゆ、幽霊かもしれないんだよ、さっきの子っ」

「だから?」

「だから!?」


「神がいるんだから、幽霊が居てもおかしくないでしょ?」

「いやまあ……そうだけど……」


 え、幽霊見てそのリアクション……?

 ルシエルが言う。


「こっちの世界には、死霊系のモンスター、普通にいるからな。驚きはしないぞ」


 な、なるほど……。

 幽霊が、向こうの世界と違って、居て当たり前の世界観なのねここ……。

 でも……こわ……さっきの女の子、幽霊だったんだ……。


「幽霊から髪の毛もらったんだけど……」

「髪の毛?」


「お礼だって」

「こんなの貰ってどうするのだ……?」

「さぁ……?」


 私とルシエル、首をかしげる。


「それより! さっさと次のこと考えないとでしょ? 難民達、このままじゃ野宿よ」


 とセイラちゃん一〇歳児に、ケツを叩かれる私二九歳児。


「じゃ、まあ、ぱぱっと街を作りますか」

「街……難民達の住む街ってこと?」


「そゆこと」

「いや……ミカ。そんなパパッと作れるわけないじゃあないの」


 セイラちゃんが指を立てる。


「街を作るためには、最低でも、1.整地、2.外壁の構築、3.建物の建造、4.水の確保。少なくとも、この4つはクリアしないとだめなのよ?」


 まあ、確かにそうだよね。


「街作りは、何ヶ月もかかるものなのよ。いくらマンパワーがあるからって、直ぐには無理でしょ?」

「大丈夫大丈夫。今日中全部なんとかなるから」

「はぁ~? なんとかって……どうするのよ?」


 ふっふっふ。


「野菜眷属たち、かもーん」


 ボックスから、野菜眷属(受肉体、そうじゃない子たち含む)が一斉に出てくる。

「整列!」


 ざっ、とジャガイモの眷属たちが私の前に整列する。


「だんしゃっくん、このあたりの整地よろしく!」

「…………」びしいぃ!


 だんしゃっくんが、ジャガイモの眷属達と供に、散らばる。

 ボックスから、ロードローラーを取り出す。


「なによこれっ!?」

「ロードローラーよ」


「ろ……!? はぁ……!? なにそれ!? 魔物!?」

「いや、道をならす働く車」


「さ、やっちゃって、皆……!」


 わっ……!

 ざざざざっ!

 しゅばばばば!

 うぃいいいいいいいいいいいいいいいん!


「整地完了!」

「ちょっと!? すとぉおおおおっぷ!」


 セイラちゃんがストップをかける。


「どしたん?」

「どしたんじゃあないわよ!? なによこれ!」


 セイラちゃんが目の前を指さす。

 さっきまで草原だった場所が、あらふしぎ、綺麗に整地されてるではありませんか。


「新しい街の建設予定地だけど」

「なにしたの!? 早すぎてわからなかったんですけど!?」


 やったことを、私は説明する。


 まず、だんしゃっくんたちは、余計な雑草を引き抜いたり、小石などのゴミなどを手分けして行った。

 続いて、だんしゃっくんが運転するロードローラーが、ウィイイイイイン! と私が指定した場所を整地。


「その結果がこれです。なにか?」

「何かじゃあない! 早すぎるのよぉお!」


 とセイラちゃんのツッコみ。

 ルシエルが彼女に代わって、私に尋ねる。


「どうやってだんしゃっくんたちに、指示を送っていたのだ?」


 私の手には、タブレットが握られてる。KAmizonで買った、ありふれたタブレットだ。


「これは、空から見た映像。地図アプリで、鳥瞰図を出してるの。この映像を、眷属達に共有。彼らはこの範囲を整地したってわけ」


「な、なるほど……。野菜眷属と神は、感覚を共有できるんだったか」

「そうそう。だから、私の指示を、全員が確実に共有できたわけよ」


 で、だんしゃっくんたちには、丸く囲った範囲を整地してもらった次第。


「ものの数十分で、この広範囲を整地してしまうなんて……」


 セイラちゃんが愕然としてる。

 その間に、次の眷属を召喚。


「サツマ君、かもーん」

「…………」ぽんっ。


 空中に、ハンマーを背おった、サツマイモの眷属が現れる。


「こんな感じの、簡単な家で良いから、ぱぱぱってテキトーに良い感じに作って。あとご近所トラブルが起きないように、適切な感じで配置よろしく」


「…………」びしぃい!


 サツマ君を中心として、サツマイモ眷属達が散らばる。

 そこにトマト君も加わる。


 トントントン!

 カンカンカンカン!

 ぎゅぃいいいいいいいん!


「完成」

「ちょっとまったぁあああああああああああああああああああ!」


 またも、ストップがかかってしまった。


「どうしたの?」

「どうしたの、じゃあないわよ! なにこれ!? 整地したところに、大量の建物が、一斉に生えてきたんですけど!?」


 一階建ての、レンガ造りの家が無数に配置されてるのだ。


「なにしたの!?」

「サツマ君たちに、建築を頼んだんだ。こんな感じの家たててって」


 タブレットに表示されてるのは、一階建てのお家だ。

 これは、全知全能インターネットでひろってきた画像である。


 内装とか、設計図は全知全能インターネットで拾ってきたものである。

 彼らはそれを見て、すぐに設計に取りかかった。


「サツマ君がいれば、神鎚ミョルニルで一発で家できるし」


 神鎚の能力、超錬成があれば、素材があれば一瞬で欲しいものを作れるのである。

 レンガはKAmizonで購入して、あとはカツンとさつまくんが神鎚で叩けば、はい、家完成。


「あとは必要な場所に家を配置して……。ね、簡単でしょ?」

「どこがよぉおおおおおおおおおおお!」


 まぁ、確かに人間には簡単じゃあないかもしれない。

 

「でもほら、私って神でしょ? これくらいできて当然っていうか」

「まあそうだけどっ、そうなんだけどもっ!」


 神の力があれば、街作りゲーみたいに、画面をタップして家が生えるみたいなこと簡単にできちゃうわけだ。


「じゃま、あと外壁と引水も、良い感じによろしくねー」

「「…………」」びしぃい!


 だんしゃっくんと、サツマ君が、それぞれ散らばっていく。


 ズモモモモモモ!

 ずどどどどどどど!

 カンカンカンカンカン!


 どさっ、とセイラちゃんがその場に膝をつく。


「あ、あたしの知ってる……街作りと違う!」

「そうなん?」


「そうよ! 普通、何ヶ月……下手したら年単位で、街作りってかかるもんなのよ! それが……なによあれぇ!」


 びしっ、と指さす先には、すでに外壁が5割できあがっていた。


「おかしいわよ!」

「おかしいって……神の力使ってるのに遅いってこと?」


「早すぎるって意味に決まってんでしょ!?」


 げほげほ、とセイラちゃんが咳き込む。

 ルシエルがすかさず、セイラちゃんの喉に、治癒魔法を施す。


「セイラどの……だめですよ。あんなのにいちいちツッコんでいたら、体が持ちません」


 あんなのて。

 酷くない……?


「ルシエルぅ~……あたしここにいたら、頭おかしくなりそう~……」

「わかりますよ、セイラどの。大丈夫です。おかしいのはあの人。セイラどのの感覚は正常です」


 なんか酷いいいようだった。

 ま、そんな風に野菜眷属たちに、丸投げした結果、ぱぱぱーっと街が完成する。


「…………」ちょんちょん。

「ん? だんしゃっくん、どうしたの?」


 だんしゃっくんの思念を読む。ふむふむ……。


「なんて言ってるの、そのジャガイモ」

「治水工事に、三日くらいかかるって」

「三日……」

「三日……」


 そんな……。


「けっこー、かかっちゃうね」

「いや、早いから! 水引っ張ってくるのに、三日でなんとかなるの、おかしいからっ!」


 でもなぁ。


「今、難民けっこーいるじゃん? 三日も飲み水なしじゃ、困るよね」

「そりゃそうだけど……。でも、三日くらい我慢して貰えば? KAmizonとやらで水を買えばいいかもだし」


「街作りでポイントけっこー消費しちゃったしさ、なるべくポイントは節約したいんだよね」


 うーん、どうしよう。

 と、そのときだった。


「ミカ神どの、なんか、ポケットが光ってるぞ?」

「え? なんだろ……?」


 ポケットに手を突っ込むと。


「あ、さっきの幽霊(仮)ちゃんからもらった、霊毛だ」


 霊毛がポワ……と光ってるのである。

 え、こわ……なにこれ……?


 ふわ……と霊毛が浮かび上がる。

 風に吹かれて、霊毛が街のなかへと跳んでいく。


「ちょ、どこいくの?」


 霊毛は街の中心部へと移動。

 そして、ぷすっ、と。

 

 髪の毛が針のように硬くなり、地面に突き刺さった。

 そのときだ。


 ゴゴゴゴゴゴ……。


「え?」

「なになに!? 地面ゆれてるんですけど!?」

「わ、わからない」

「どうしてわからないのよっ!?」


 ドッパァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!


「「水がふき出たぁあああああああ!?」」


 ……なんということでしょう。

 さっきの霊毛の針が刺さった部分から、いきおいよく、水が噴き出したのだ。


~~~~~~

「噴き出した水」

→地下水。偶然、この真下に、地下水のたまり場があった。霊毛がそれを刺激して、水が噴き出した

~~~~~~


「なんか、この街の真下に、偶然地下水があったんだって……」

「そんな超偶然あるの!?」


「さ、さぁ……」

「だからなんであんたが力を把握してないの!? あんたのパワーじゃあないの!?」

「わ、わからない」

「わからないことだらけじゃないのよぉ!」


 ま、まあ偶然とは言え、地下水ゲットしたわけだ。

 これで、街と水の問題は、解決だね。

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