第116話 カレー&現代家電を絶賛される



「カレー完成したし、難民キャンプに移動して、炊き出しやるよー」

「「「はーい!」」」


 大転移グレーター・テレポーテーションで、難民キャンプへと移動する。

 皆お腹すかせてるところに、ご飯を持っていったら、混乱が予想される。


 特に、あの貴族……なんだっけ?

 サイ……さいか……サイアク伯爵ってのが、なんかうるさいんだっけか。


「って、あれ? みんな大人しく並んでるや」


 難民達が、綺麗に列を作っていた。


「ミカりん様~!」


 リタと黄昏の竜の面々が、こちらへとやってくる。


「リタ。これどういうこと? 皆大人しく並んでるけど」

「リシア様から、だいぶ事前に指示を受けていたのです。ご飯ができる前に、難民達を整列させておくようにと」


 り、リシアちゃん……!

 なんてできる娘なのっ!

 

 私はリシアちゃんを抱っこして、くるくると回る。

 娘はうれしそうに笑顔を浮かべていた。


「リシアってミカの娘なのに、ほんとしっかりしてるわよね」

「血は繋がってないので、ここ」


「ああ……納得。凄く納得……」


 セイラちゃん&ルシエルの、私に対する当たりが最近キツくない……?

 まあ、リシアちゃんが私よりしっかりしてるのは事実だから、何も言い返せないけどねっ。


「じゃ……皆でご飯だよ!」

「「「おー!」」」


 トマト君たち、受肉体眷属が、テーブルを並べる。

 テキパキと炊き出しの準備を行う。


「カレーだって」「おいしそおーー!」「めっちゃ良い匂いするー!」「たのしみー!」


 ……おや?


「あれ、リタ」

「どうしました、ミカりん様?」


「なんか、騒いでいた伯爵とやらって、どこ?」


 さっきまで騒いでいたらしいそいつの姿が、見当たらない。


「ああ、なんか……そういえば居ないですね」

「そういえばって……え、把握してないの」


「ええ、これだけの数なので。きっと飯が出てこないことに腹を立てて、別の場所へ移動したのではないでしょうか?」


 ふぅむ……?

 お腹すいてるのに、移動なんてできるだろうか……。


「うぉおおおお!」


 列の先頭から、悲鳴が上がる。なんだなんだ? トラブル?


「うめえええええええええ!」


 うれしい悲鳴だった。なんだよかった。


 難民たちが、私の造ったカレーwithセイラちゃんスパイスを食べて、声を張り上げる。


「辛いのにうめー!」「こくがあっておいしいわ!」「見て! こんなおっきなジャガイモとにんじんが入ってる!」「美味い! 美味すぎるぅううううううううううう!」



 良かった、お口に合って。


「たくさんお変わりあるし、今もお変わりじゃんじゃん作ってるから、みんなじゃんじゃん食べてねー」

「「「「うぉおおおお! 神ぃいいいい!」」」」


 え?

 なんで正体が神ってばれてるの……?

 

 やば……どうしよう……バレたら……。


「いや、多分この神は、ただの賛辞だろう。気づかれてないので安心しなよ」

「そっか、そうだよね……」


「ミカ神どの、最近ちょっと思考が神よりになってないか……?」


 ルシエルが指摘してくる。

 いやいや。


「そんなことは……」

「だって今も、神ってバレたんじゃあないかって、思ったんでしょう?」


「うん」

「それ、人間の思考じゃあないから。普通の人間は、神ってばれないかなって思わないから」

「た、確かに……!」


 え、私身も心も神になってきてるってこと?

 え。こわー……。


「私普通の人間で居たいのに……」

「ミカ神どのあなたはもうとっくに人外だから。手遅れだから」


「手遅れですかそうですか……」


 ま、まあそれはいいや。

 どうにもならないしね……!


 お野菜眷属たち(受肉体)のマンパワーによって、たくさんいる難民達に、カレーがどんどん供給されていく。


「ほんとに美味しい!」

「温かくて最高!」

「りんご。はちみつ。ばーもんつ。かれー。やっぱり。ばーもんつ」


 子ども達が美味しそうに、カレーをうまうまと食べている。うんうん、子ども達の笑顔が一番だね。


「ね、ねえ……ミカ! ちょ、ちょっとさ! ちょっといいっ?」

「ん? どうしたの、セイラちゃん?」


 セイラちゃんがぐいぐいと私の手を引っ張ってくる。

 やってきたのは、トマト君のちかく。


 トマト君は土鍋の前に立ち、お鍋をお玉でかき混ぜてる。


「これ!? どういうこと!?」

「これ? どれ?」

「それ!」


 セイラちゃんが指さしたのは、カセットコンロだ。

 KAmizonで(Amaz●nでも)普通に売ってるやつ。


「これが?」

「これ……魔法コンロじゃあないわよね!?」


~~~~~~

「魔法コンロ」

→魔道具の一つ。火の魔石を利用したコンロ。旅に必須アイテムだが、魔石の加工が難しいため、高価

~~~~~~


「そうだね。普通のコンロ」

「普通のコンロってなに!? 普通って!?」


「え、だからガスコンロ……」

「ガス!? コンロ!? どういう仕組み!?」


 私は簡単に説明する。

 ガスを出して、それを使って火を出すと。


「し、し、信じらんない……!」

「え? なにが?」

「こんな高度な技術が使われたアイテムが存在するなんて!」


 高度な技術?

 そうかな?


「普通じゃあない?」

「普通じゃあないわよ! すごい発明品よ……! これも……あんたが作ったの?」


 凄いもの=私が作ったモノ、という図式が、セイラちゃんの中にはあるようだ。


「違うよ。買ったもの」

「市販品!? 市販されてるの!? こんな高度なアイテムが!?」


「そうだね。現実では」

「………………?????」


 セイラちゃんが困惑顔をしてる。


「…………」ちょんちょん。

「ん? どうしたの、トマト君」

「…………」びしっ!


 トマト君が指さす先には、給食施設で使われるような、巨大な炊飯器が置いてある。

 ああ。


「お米なくなっちゃったんだね。大丈夫、ボックス、おいでー」


 わっせわっせ、と野菜眷属たちが、新しい炊飯器を持ってくる。

 ぱかっ、と開けると、あつあつのお米が山盛りのように入っていた。


「なによこれぇええええええええええええええええええ!?」


 またセイラちゃんが叫ぶ。


「どったの?」

「いや、大きな釜! なにこれ!? よく見れば、暑さがズッとキープされてるじゃあないのよ!」


 ああ、それか。


「うん、炊飯器だからね」

「す、すいはんき……? なによそれ!」


 何って言われても……。


「お米と水を入れておけば、自動でお米が炊ける機械だけど」

「はぁああああああああああ!? 自動でお米が!? どういうことなの!?」


「いやどういうことって……」

「米をたくには、かなりの手間暇かかるでしょう!? 普通は!」


 あ。そっか。異世界では、炊飯器なんてものなかったのか。

 キャンプのときみたいに、飯ごう炊さんしないといけないのか。そう思うと、確かに不便。


「コンロといい……この炊飯器といい……なによこれ!?」

「え、家電」

「カデン!? なにそれ!?」


「電気で動く便利なアイテム」

「電気!? 動く!? は? ? 何言ってるのよぉお!」


 うーん……何言ってるって言われても……。

 説明、できる? 家電がどういう仕組みで動いてるのって。


 できないよね? 普通。


「ま、そういうもん」

「それで済ませて良い物じゃあないでしょ!? この便利道具っ! え、仕組みが気にならない?」


「全然。便利だなーって」

「…………」


 絶句する、セイラちゃん。

 一方、難民たちは満足そうにしてる。


「はー……おいしー……」

「こんなに美味しいカレーなんて初めて食べたよー」

「かれー。あじ。にじゅうまる」


 皆幸せそうな顔をしている。うんうん、良かった良かった。


「あ、そうだ。飲み物も配らないとね。ボックス


 どんっ、と私の目の前に、冷蔵庫が出現する。

 ぱかっ、と開けると、中には缶に入った牛乳がたっぷり。


「なにこれぇええええええええええええええええええ!?」


 えー……またぁ?


「これは冷蔵庫」

「冷蔵庫!? なにそれ!?」


「ものを冷たい状態に保っておく家電」

「冷たい状態を保つぅうううううう!?」


 お野菜眷属たちに、牛乳を配って貰う。

 一方で……私はセイラちゃんに言う。


「あのさ、セイラちゃん。さっきから、何に驚いてるの?」


 するとセイラちゃんが叫ぶ。


「あんたの取り出す! 見たことないアイテム! 全部だよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


 ん? 見たことないアイテム……?

 どういうことだろう。


「セイラどの。ミカ神どのは、実は異世界からの召喚者なのだ」

「い、異世界召喚者!? あ、な、なるほど……だから、こんな高度なアイテムを、たくさんもってるのね……やっと納得したわ……」


 ……あれ?


「セイラちゃんに、言ってなかったっけ? 私が異世界人だって……」

「いや聞いてないわよ! なにそれ!? 異世界人ってみんな神なの!? みんなあんたみたいなのぉ!?」


 するとルシエルが冷静に言う。


「いや、皆ではない。ミカ神どのだけが、オカシイのだ」

「やっぱりね!」


 しかしそっか。異世界人だってこと説明してなかったから、こんなに驚いてたのか、この子。


「ミカ神どの?」


 す……と両手を広げるルシエル。


「え、なに?」

「カウンター、継続してますからね」

「はっ……! しまったそうだった……!」


 すっ……と今度はセイラちゃんがカレーを出してくる。


「え、何このカレー?」

「鼻カレー」

「鼻カレー!? スパでなく!?」


 ぽん、とルシエルが私の肩を叩く。


「ミカ神どの。今のでカウンターが結構回ったから。地道に帰していこう……ね?」

「はひ……」


 私は鼻スパならぬ、鼻カレーを披露するはめになった。


「うそぉ!」「すげえ!」「鼻からカレーを食ったぞあの人!?」

「おわらいげーにん? ばくしょーひっとぱれーどてきな?」

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