第115話 あらたなる神を爆誕させる



 ログハウスにて。

 野菜眷属たちの肉体を作った。


「これからどうするのだ、ミカ神どの?」

「今大量に、お野菜眷属ちゃんたちがご飯作ってるから、作り終わったら向こうに運ぼうかなって思ってる」


 で、受肉した野菜眷属たちと協力して、カレーを配ろうと。


「ミカ神どの。この野菜眷属(受肉体)を、どう説明するのだ? 難民達に、こんなのが急に現れたらびっくりするぞ?」


 た、確かに……。

 受肉した野菜眷属たち、みんな美形美人ばかりだ。


「なんでこんな、皆美人なの? セイラちゃんの趣味?」

「ちっがうわよ! ミカの力よ!」


「え、私……?」


 セイラちゃんが腕を組んで言う。

 でも、ルシエルの陰に隠れてるのかわいい。

「人体錬成したときの、外見は、触媒が関わってくるのよ」

「しょくばい?」


「一緒に入れたアイテムのことよ。どれも、KAmizonっていう……謎の神サイトから買った素材なんでしょ?」


「そうだね」


「その素材が、全部一流品だったのよ。だから、皆美形になってるのよ」


 ああー……そっか。

 現代の、大量生産された、質の良い化学製品だったもんね。


 だから、皆が意見がよくなったと。


「ミカってほんと……なんなの? 自分の力に無自覚すぎない?」

「ずぼらなかたなんです、セイラどの。いちいちツッコんでいたら切りがありません。ツッコみはお任せください」


「ありがとう、ルシエルは頼りになるわね、あんた」


 私の知らないところで、友情が育まれてる。 ん?


「え、ルシエルはって……? 私は……?」


 私だって役に立ってるつもりですが……?


「あんたは頼りになってあたりまえでしょ。なんでもできちゃう神なんだし」

「いや何でもはできないよ。できることしかできないし」


「じゃあ逆に何ができないのよ?」

「料理とか洗濯とか?」


「野菜眷属がやってくれてるじゃあないのよ……」


 でも別に、私がやれてる訳じゃあないし。


「で、ミカ神どの。料理ができあがるまでに色々とすりあわせをしておくべきだと思うぞ」


 とルシエル。ほぉん?


「すりあわせって」

「領民達には、この受肉体たちが領地のボランティアで通じるだろうが……。しかし、我等の仲間であるリタたちは、驚いてしまうだろう」


「あ」


 そっか。いきなりこんな知らない人たち(美形美人)が現れたら、リタ達、だれ!? ってなるもんね。


「あっ、ってなによ……あっ、って……。本当にリーダーなの?」

「う……。り、リーダーだよね、リシアちゃん? ……リシアちゃん?」


 リシアちゃんが私たちから離れたところで、耳に手を当ててる。


「なにしてるの?」

「あ、現地にいるエルメスさんと念話で会話してました」


 エルメスっていうのは、黄昏の竜のメンバーで、唯一私の眷属神である、元吸血鬼の少女のことだ。


 眷属同士は、念話が可能なのである。


『ミカ、いるの?』


 エルメスの声が私にも届く。


「あー……エルメス。悪いんだけど今から……」

『あ、大丈夫。リシアから聞いたわ。眷属が人間の姿でこっちくるんでしょ?』


 り、リシアちゃん……!

 すでに、報告を終えていたというのかっ。


「しっかりしてる五歳児ね、リシアちゃんって。二九歳児よりしっかりしてるわ」

「もっとしっかりしてほしいぞ、二九歳児」


 私のこと二九歳児っていうのやめてっ。


「え、えっと……そっち問題ない?」

『それが……』


 すると、エルメスの向こうで、怒鳴り声が聞こえてくる。


『おいいつまで待たせるのだっ! わしは偉い伯爵さまなのだぞっ! このわしを待たせるとはどういうことだっ。さっさと領主をだせ! カスがっ!』


 わー……なんか、もめてそー。


「エルメス。ごめんね」

『良いわよ。騒いでるの、さい……さいくそ? 伯爵っていう変な貴族だけだから』


 サイクソ? 伯爵ってのがわめいてるだけで、他は大人しくしてるらしい。


「もうちょっとで向かうから、頑張って」

『OK。そっちも頑張って』


 と、念話を着ると、ちょうどそこに……トマトくんがやってくる。


「うぉ、トマト君。どしたの?」


 赤髪のイケメンとなったトマト君が、私に情報を直接送ってくる。


「料理完成したのね。ありがと」

「…………」びしぃ。


「料理の味見? おっけー」


 ということで、私たちは厨房へと向かう。

 お鍋がどどんっ、とたくさん置いてあった。

「このスパイシーで美味しそうな匂いは……カレーだね?」

「…………」こくん。


 蓋を開けると、かぎなれたリンゴと蜂蜜的なカレーの匂いがした。

 市販されてるルーを使ったカレーだろうだ。


「…………」ぺこぺこ。


 トマト君、キャロちゃん(受肉体、こっちはオレンジ髪の美女)が、頭を下げてきた。


「この人達、なんて?」

「なんか、ごめんだってさ。市販品のルーで着くってって」


 曰く、大量に作る必要があったので、ルーを一から作ることができなかったとのこと。


「別に市販のルーでもいいでしょ。十分美味しいよ。バーモン」


 鍋から味見ようにと、とってきたカレールーをお皿に注ぐトマト君。

 それを受け取って、一口すすって……うん。うまい。


「ほら、いつもの味。美味しいよ。ね?」


 他の子らにも食べさせる。


「いつも通りおいしいですっ!」

「ああ。異世界基準なら、これで大絶賛だろう」


 一方……セイラちゃんがじっとお鍋を見つめる。


「どうしたの?」

「もう少し……スパイスあってもいいかもね。外寒いし」


 忘れがちだけど、今季節は冬なのだ。

 デッドエンドは、防寒してないとけっこー寒い。


 なるほど、もう少し辛い方がいいと。


「これとかいいかも」


 そう言って、リシアちゃんが錬金工房から、小瓶を取り出す。


「それは?」

「ファート家特製の、辛いものにあうスパイスよ」


「ほぉん? 秘伝のスパイスってことかい?」

「そうそう。これ、かけてもいい?」


 私もちょっと甘口だなって思っていたし、スパイス足す意見については、賛成だ。


「どうぞ」


 ということで、セイラちゃんがスパイスを、カレーの鍋にパパッと入れる。


「あんまり辛すぎるのは、苦手です……」


 とリシアちゃんが言う。お子様だものね。


「ふふん。任せなさい。あたしは錬金術師よ?」


 だからなんだと思ったけど……なるほど。

 錬金術師は、私たちの世界で言うところの科学者だ。


 余計な薬品(※スパイス)を入れるようなまねはしないだろう。


 セイラちゃんがスパイスを入れ終わる。


「はい完成! どう?」


 私、リシアちゃん、そしてルシエルの三人が味見する。

 うんっ。


「良い感じっ」


 さっきは甘口だったけど、今は中辛くらいになってる。


「辛いことで、むしろ、食欲がわいてくるなっ!」


 ずずずっ、とルシエルがカレーをすする。


「おいひーですっ。舌が、ぜんぜんぴりってこないですっ!」


 そう、辛いんだけど、痛みのないギリギリの辛さっていうのか。 

 そういうのが、ちゃんと計算されてるのだ。

「おー、凄い。さすが台所の錬金術師」


 そのときだった。

 パァアアアアアアアアアア!


「セイラちゃんが急に輝きだしたのです!?」

「こ、この光……! ミカ神どのぉお! またやちゃったな!?」


 ええ!?

 私……何かやっちゃいました……?


「なんか……凄い力が溢れてくる……なにこれ!?」

「わからない!」


「なーんで力与えてるあんたがわからないのよぉお!」


 光が、収まる。

 と、とりあえず全知全能インターネットで何があったのか検索だ。


~~~~~~

「何があった?」

→セイラが、契約神となった

~~~~~~


 はい……?


「どうせ、セイラどのを契約神にしたのだろう……?」

「なんでわかるの!?」


「アタシんときと似てたし……」


 まじか……。察し良すぎない?


「え、え? な、何が起きたの……?」


 ルシエルが説明する。

 私と契約し、神の力を手に入れたと。


「はぁあ!? なにそれ!? あたし何もしてないんですけど!?」

「セイラどのは、ミカ神どのに、美味しいご飯を作ったでしょう?」


「そうね」

「それです」


「それです!?」

「ミカ神どのに貢献すると、強制的に神にさせられちゃうのです……」

「ひぃ! なにそれこわいんだけど!?」


 怖い……?

 怖いかな? 


「怖い? リシアちゃん?」

「いいえ! むしろ光栄なことだとおもいますっ!」


 だよねー。


「あ、あたし……大丈夫なの? 体とか」

「大丈夫です。神の力を付与されただけです。スペックが向上してますが。変なことはおきませんし」


「そ、そっか……よかった……」


 安堵するセイラちゃん。


「それにしても、何の神になったのかな? 錬金術師の神とか、そういう感じ?」

「絶対そうですよ! お母様は、その人の望む力を与えてますしっ」


 ルシエルがジト目でこちらを見てきた。


「え、なに?」

「いいえ……。とりあえず、全知全能インターネットで検索してみては?」


 そうだね。

 ってことで、セイラちゃんの称号を見てみる。


 多分絶対、錬金術師の神、もしくは、錬金の神だろうなぁ。


~~~~~~

台所の神セイラ・ファート

~~~~~~


 ……。

 …………。

 ………………えっとぉ。


「どんな神だったの?」

「だ、台所の神……」


「……………………は? なんて……?」

「だ、台所の神……」


 セイラちゃんが、頭に【?】を浮かべまくってる。


「ミカ神どのっ。錬金術師の彼女に、なんて力を付与してるのだっ!」

「い、いや……ちょ、ちょっとまってね!」


~~~~~~

台所の神

→料理等、物作り系のスキルに+補正される


物作り系スキル

→錬金スキルなど

~~~~~~


「ほ、ほら! ね? 台所の神になったことで、錬金術の腕もあがるみたいだからっ。ほら、望んだ力だからねほらっ」


 落ち込むセイラちゃんを、ルシエルがなぐさめていた。


「この人悪意ないから、許してあげてほしい。ほんと悪意はないんだ。ネーミングセンスは死ぬほど無いけど」

「うん……ぐす……わかったわ。あたし……許す……ダサい名前だけど我慢する」


「偉いぞセイラどのっ!」

「ルシエル!」


 ……うん。セイラちゃん納得してるみたいだし、よし!

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