第114話 人工生命を、量産する



 さて、人体錬成で、トマト君のボディは完成した。


「あとは、受肉体を量産するだけだね」


 お野菜眷属を入れておく、仮の器、受肉体。 1体作るのに、コスト事態はそんなに掛からない。


 問題は、人体錬成が、セイラちゃんしかできないってことだ。

 それに、1体ずつしか錬成できないっていう問題もある。


「もうちょっと一度にたくさん、人間って作れないものなの?」

「あ、あんた……発言の内容が、ちょっと人間の域こえてるわよ……」


「そうかな?」

「そうよ!」


 まあ、神ですからね(諦念)。


「で、どうなの? たくさんって作れる」

「そりゃ……できるわ。錬金術増幅器である……賢者の石を使えばね」


 賢者の石。そういえば、どっかで聞いたような……って、あ。


「そうだ。君に確か、御供でプレゼントした賢者の石あったよね」

「そうね」


「使ってくれないかな?」

「…………これ、結構レアなアイテムなんですけど……?」


 セイラちゃんが懐から、黄金の球体を取り出す。

 前に、彼女が私にご飯をあげたことで、私から彼女に(無意識に)プレゼントしたものだ。


 セイラちゃん的には、これをあげたくない様子。

 レアアイテムって、簡単に使いたくないものね。


「大丈夫大丈夫、また私にご飯作ってくれたら、もらえるから。多分」

「ほんっとあんたって発言一つ一つが神よね……」


「そうかな?」

「そうよっ。まあ、困ってる人のためだし、使ってもいいわよ」


 お腹を空かせた難民たちがたくさんいる。

 その人達のために、賢者の石の使用を決意してくれたのだ。良い子だよ本当に。


「そんじゃ、人体錬成よろしく」

「ええ」


 錬金工房の前に立つ、セイラちゃん。

 賢者の石を握った状態で、工房の中に手を突っ込む。


 ばちばち! と工房から赤い稲妻が発生する。

 ずももももっ、と工房から、10人でてきた。


「10人?」

「ふふんっ」


「少ないね」

「いや少なくないから!!!!!!!」


 賢者の石っていうと、フィクションじゃあものすんごいアイテムって描かれかたされていた。

 けれど、実際には作れる人間の数が十倍になっただけ。


 ちょっと、肩透かし感がある。


「言っておきますけどねっ。人体錬成って結構なテク必要なんだけど!? それに、作る数を10倍増やすって、凄いことなんですけどぉ!?」


「へー」


 錬金術師じゃあないから、わからなかったが。

 どうやら凄いことらしい。


「じゃあ、この調子でどしどし受肉体つくってあげて」

「そうしたいのは山々なんだけど……」


 セイラちゃんが私に手を見せてくる。

 賢者の石が黒ずんで、ただの石ころになっていた。


「え、なにこれ……?」

「クールタイムに入ったのよ」


「クールタイム……?」

「ええ。賢者の石は、一定量のパワーを使うと、クールタイムが必要なの」


 充電しないと使えない、スマホみたいなものらしい。

 えー……。まじか。


「じゃあ、クールタイムが終わらないと、賢者の石って次使えないわけ?」

「うん」


「どんくらいなの?」

「使ったパワーの量によるから、わからないわ。色が戻れば、使えるようになるけど……」


~~~~~~

賢者の石のクールタイム

→1日

~~~~~~


 まじか。一日もかかるのー?


「受肉体、もっと作って欲しいんだけど」

「無茶言わないで……賢者の石のアシストなしで、錬成すると、かなり精神に負担かかるんだから」


 よく見れば、セイラちゃんは汗をかいていた。

 私じゃ理解できないことだけど、錬金術って使うのに、かなり集中力がいるみたい。


 うーん……困った。もっと受肉体を増やしたい(人体錬成したい)のだけど。


 困ったときは、全知全能インターネットで調べる。


~~~~~~

「受肉体を増やす方法」

→「神宿り」を使う


「神宿り」

→神のスキルの一つ。神が接触(手をつなぐ等)することで、相手の能力を1000倍に増幅する。

~~~~~~


 手をつなぐことでパワーアップって……。

 どこぞのパーのマンかい……。


 しかし、神が触れると、相手の力を1000倍か……。神が一人でこれなら……。

 ……ふぅむ。うん。よし。


「セイラちゃん」

「なによ……って、わわ! 急にどうしたのよっ!」


 私はセイラちゃんを後ろから抱きしめる。

 彼女は照れてる様子。


「リシアちゃん、一緒にセイラちゃんを抱きしめてあげて」

「はいっ。しつれーしますっ」


 ミカりん親子が、セイラちゃんをぎゅーっと抱きしめる。

 顔を赤らめるセイラちゃん。


「なんなのよ……」

「この状態で、人体錬成してみて」


「は、はぁ!? なにそれ」

「いいからいいから」

「一体しか受肉体作れないわよ?」

「わかってる。大丈夫だから。ほら、やってみてよ」


 セイラちゃんは半信半疑といった感じで、人体錬成を行う。


 ズモモモモォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「なによこれぇえええええええええええええええええええええええ!?」


 錬金工房から、ものすごい数の人間が出てきたのだ。

 このままだとパンクするので、全員を大転移グレーター・テレポーテーションして、外に出る。


 ズモモモモモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


「いち……じゅう……ひゃく……何人いるのよ!?」

「たぶん、1000000人」


「ひゃ!? 百万!? なにそれ!? 増えすぎでしょう!?」


 あっという間にログハウス前が人で埋まりっかえていたので、ボックス空間に、受肉体を送る。


 次から次へと、錬金工房から人が吐き出され続ける。

 もうめんどくさかったので、工房ごと、ボックスの中に入れた。


「ぜえ……はあ……な、なんだったのよ……あの大量の人は……!?」

「セイラちゃんのパワーを、神二人で、1000000倍にしたのよ」


「なにそれ!?」

「ほら、神宿りのスキルって、相手の能力を1000倍にするでしょう? で、神が二人で1000倍の1000倍、10000000倍になるって寸法」


 セイラちゃんが固まってしまった。

 あれ、どうしたんだろう……?


「いや、作りすぎだろうがっ!」

「ルシエーーーール……!」


 セイラちゃんがルシエルに抱きつく。


「ルシエル助けてっ。あたしじゃツッコみきれないわ!」


 おいおい……と泣くセイラちゃん。

 えーっと……えーっと……。


「る、ルシエルさん……。子ども達は……?」

「遊びまくって、昼寝中だ」


 ぷうぷう……と子フェンリルたちが、庭先で眠っている。

 満足そうな顔をしてる。ルシエル……頑張ったんだね……。


「それより! なんだこの大量の全裸の人間たちはっ!」


 そうだった。皆生まれたばっかりだから、全員全裸なのだ。

 男もいるし、女もいる。


「普通に目の毒だしっ」

「ご、ごめん……服を買わないとだね」


「それに! こんな事態になるの、わかってたんだよね!?」

「そ、そうだね……」


「なんでやる前に相談しなかったのだ!?」

「ご、ごめんて……」


「人手が欲しいのはわかってたけど、一〇〇万人はやり過ぎだろうっ!?」

「そ、そうだね……で、でもほら、多い方が良いかなって……」


「言動があるだろうがっ」

「おっしゃるとおりで……はい……」


「マンパワーは確かに欲しいが、まずは1000人でよかったのではないか?」

「はひ……」


 はぁ……とルシエルが大きくため息をつく。


「作りすぎたこの受肉体どうするのだ?」

「と、とりあえずストックしておこうかなって。ボックスのなかだと、腐らないみたいだし」


 必要に応じて、必要な受肉体の数を、取り出す形にすればいいかなって。 


「受肉体ってご飯も要らないみたいだし。ねー、皆?」


 びしっ! と野菜眷属たちの入った、受肉体たちが、かっこいいポーズを取る。

 トマト君が服を買って、彼らはそれを来てる。


「こんなにたくさん、無計画に産んで……」

「無計画じゃあないって。難民たちのほら、住む場所とか色々さ、そういうのでマンパワーいるでしょ?」


「……まあ、そうか」

「でしょでしょ?」


「でもいっきに一〇〇万人はやり過ぎだ。受肉体だったから良かったものの、これが普通の人間だったら食糧難を迎えていたぞ」

「そ、うだったね……」


「次はもっと、考えて行動してくださいよ、ミカ神どのちゃん?」


 ちゃん……?


「え、ちゃんづけ……?」

「アタシから見れば、29才のミカ神どのは、まだまだ子供だから」


「そ、そう……でも一応、あんたの上司なんだけど……」

「なら部下のお手本になるような行動を心がけてください」

「はひ……」


 ま、まあ、何はともあれ、これで人では確保した。

 これでサクサクと、難民達を救っていくぞ。

「7ね」

「7!?」

「さっきセイラどのの悲鳴が聞こえてきたぞ」


 ひぃ。バッチリ、鼻スパカウンター回ってるっ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る