第104話 なにをしても驚かせてしまう神
じーちゃんたちを見て驚愕するセイラちゃん。
刺激が強すぎたかな……。
「あわわわわ……」
「だ、大丈夫セイラちゃん……?」
「え、ええ……ありがとうリシア……」
平然とするリシアちゃんを見て、はっとした顔になるセイラちゃん。
「あ、あなた……そんなに驚いてないわよね? どうしてよ」
「? いつものことですから」
「いつもって……」
「いつもはいつもです!」
いつもってことはない……?
「いやいつもこうだろう」
とルシエル。
「ミカりんじょうちゃーん!」
ぞろぞろ……と領民たちがこちらへとやってくる。
先頭にはウシカじいちゃんがいた。孫のムジカちゃんも手を振っている。
「おーっす。お疲れさん」
「へへっ! 見たかよミカりんさま! おれの……弓裁き!」
弓使いに覚醒したムジカちゃんが(女の子)、私に尋ねてくる。
「うん、すごかった。また腕を上げたね」
「へへっ。だろうー!?」
わしゃわしゃ、と私はムジカちゃんの頭を撫でてあげる。
一方セイラちゃんは驚愕していた。
「あたしより小さな子が、あんな化け物を倒してるなんて……」
「? ミカりんさま、そいつは?」
「帝国お抱え、天才錬金術師のセイラ・ファートちゃん。ポーションを作りにきてくれたの。ほら、おいでセイラちゃん。皆に紹介するから」
「え、ええ……お願い」
セイラちゃんが、リシアちゃんの隣に立つ。
こほんっ、とリシアちゃんが咳払いをする。
「新しい仲間が加わりました! セイラ・ファートさんです! 皆さん……仲良くしてあげてくださいねっ」
なんか小学校の先生みたい……転校生を紹介する的な。
「よろしくなぁ、セイラ嬢ちゃん!」
「おやめんこい子ぉねえ!」
「そのとしで働いてるとはえらいのぉう!」
じーちゃんたちに囲まれる、セイラちゃん。
年配の人って若い子好きだよね。
飴食べる? などと、かまってあげてるじーちゃんたち。
セイラちゃん、プライド高そうだし、子供扱いされるのいやかも……。
「えへへ~♡ ありがとぉ~♡ よろしく~♡」
あら?
予想に反して、セイラちゃんご満悦?
「…………」
一方で、セイラちゃんの侍女、シェルジュが私をじっと見つめてる。
「どったの?」
「いえ、なんでもありません」
なんか意味深。なんだろね。
まあそのうちわかるでしょ。
「さ、みんな中に入りましょ」
「ちょ、ちょっと待って!」
とセイラちゃん(手に飴ちゃん握ってる。ラブリー)。
「どうしたの?」
「この宝の山をまさか放置するつもりなの!?」
「宝の山?」
そんなのどこにあるんだろう?
金銀財宝なんて見当たらないけども。
「この! 翼竜よ! こんな状態のいい死骸をほっとくなって、勿体なさすぎるわ! いい魔道具の材料になるのに!」
ほぉん。
「魔物って魔道具の素材になるんだ」
「そーよ! 魔道具だけじゃなく、革鎧など、いろんな物に翼竜素材は使われるんだからねっ」
「へー物知りさんだね、セイラちゃんって」
「まぁねっ」
一方でルシエルはため息をつく。
「ミカ神どのってたしか、三年近くこっちの世界にいるんじゃあなかったのか……? 知らないこと多すぎない?」
うっ、鋭いぞルシエル。
「しょーがないでしょ、ブラック宮廷でこき使われてたんだから」
「転職という手は無かったのか?」
「あったけど、こっちきたばかりのときは、こっちのことななにも知らなかったし」
「まあ、それなら仕方ないか」
そうそう、仕方ない。決して、私がものぐさだったからいけないわけじゃない。
「でもこんだけ大量だと、素材はぎとるのも、そもそも市街を回収するのも大変そうね」
「そう?」
「そーよ。ふふん、しかーし! あたしに任せなさいっ。この、魔法カバンがあればっ、たくさんの死骸も全部収納できるんだからっ」
セイラちゃんが、肩からかけてるポシェットを掲げる。
「魔法カバン?」
「なんでも吸い込んで、保管できる鞄よ!」
「はえー、便利だね」
「でしょっ!」
つまりはアイテムボックスが付与されたカバンってことだもんね。そりゃ便利だ。
「回収手伝ってあげるっ」
手伝う? なんでだろ。
「おー、セイラちゃんは偉いねぇ」「ほんと若いのに偉いわぁ」「手伝ってくれてありがとねぇ」
じーちゃんたちがセイラちゃんはの頭を撫で回す。
彼女は「まーねっ」と満更でもなさそう。
なるほど、じーちゃんたちのために手伝ってくれようとしてるのか。
優しい子だな。
子供ががんばろとしてくれてるのに、大人がなにもしないのも、ダメだね。
「私も手伝うよ」
「あれ、あんたもアイテムボックス持ってるの? 二人で回収しよう」
するとルシエルがいう。
「……ミカ神どの。目立っちゃだめだぞ」
「うん。
「ぉいいいいいいい!」
ぼっ、と
止める間もなく、シュゴォオオオオオ! と翼竜だけが選別され、
ぽかーん、とするセイラちゃん。
「あれ? どうしたの?」
「あわ、あわわわ」
セイラちゃんがこしをぬかしてる。
「あれ? まさか、私何かやっちゃいました?」
「ワザと!? ねえ、ワザとなのミカ神どのぉ!?」
ルシエルが猛烈ツッコミ入れてくる。
「わざと? なんのこと」
「あのシュゴォオオオオオだよっ」
「あれ? でも普通に使ってるやつだし。アイテムボックスだし」
するとセイラちゃんがいう。
「普通のアイテムボックスは、選別して吸い込むことなんてできないわよ!」
「え、まじ?」
「大まじよっ! なにあれ!?」
「
「だからそれなに!?」
「アイテムボックス」
「だからぁあああああああああああああ!」
セイラちゃんが頭を抱えてうずくまる。
しまった、私のせいで、セイラちゃんがストレスを感じてるっぽい。
子供に対してなにをしてるんだ、私よ。
「ごめんね、なんか」
「いやほんと、なんなのその
「えーと」
神のアイテムボックス、なーんて言えないし。
「ミカ神どのの、ユニークスキルだ」
「ユニーク……あんたユニークスキル持ちだったのね」
と、ルシエルがセイラちゃんに説明する。
ユニーク?
〜〜〜〜〜〜〜
ユニークスキル
→その人固有に発現するレアスキルのこと。
〜〜〜〜〜〜〜
なるほど、人に固有に発現するスキルなら、見たことなくても不思議じゃない。
それに【人】に発現するなら、神を疑われないか。やるね、ルシエル。
「フォローありがと」
「別にいいが、気をつけてねマジで」
気をつけてるつもりなんだけどもなぁ。
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