第97話 神獣達とフリスビーで遊ぶ


 マーリンといっしょに、ゲータ・ニィガの王都へ行ってきた、私。


 ちょろっと魔族を倒して、さっさと、山小屋へと帰ってきたんだけど……。


「ウォオオオオオオオオオオオオオン!」

「アォオオオオオオオオオオオオオン!」


 ふぇる太&ふぇる子が、凄まじい勢いでツッコんできて、私を押し倒してきたのだ。


「わわ、なぁに二人とも……?」


『ミカぁあああああああああああああああああああああああああああああ!』


 その上に……母親であるフェルマァがプレスしてきた。ぐえええ。


「あの……どうしたの……?」


 もふもふ三匹によるボディプレス。

 神パワーを持つ私は、別に苦しさを感じない。膂力があるからね。


 むしろ……お日様の匂いがするフェンリルたちのもふもふに包まれていると、なんだか心地よさを感じるくらいだ。柔軟剤使ってる?


『うぉおおん! さみしかったぜー!』

『あぉおおおん! かまってかまってほしいわっ!』


 うぉんうぉん! と鳴く子フェンリル二匹+母フェンリル。

 ふぇる美がてこてこと近づいてくる。


『……兄さん達、最近、ミカ姉さんが忙しくしてて、かまってくれなくて、さみしかったみたい』


 と、ふぇる美が冷静に言う。なるほど……。

 そうだよね。まだ子どもだもんね、この子達。


 体はもうめちゃくちゃでかいけど。

(フェルマァからは目をそらす。あんたは大人でしょうに)


「ごめんねー、ふぇる美」

『……私はいいけど、ふぶきさんが死にそう』

「え?」


 もふもふ天国から抜け出して、起き上がる。


「ふぶきー?」

「…………」


 返事が……ない……!

 私は急いで小屋の中に入る。


 リビングのソファに、ふぶきが倒れていたっ。


「ふぶきっ! 大丈夫!?」


 ペットシッターであるふぶきには、私が居ない間のもふもふ達の面倒を見て貰っている。

 しかも……ワンオペ。


「ああ……おかえりなのじゃぁ……」

「ごめんね、一人で大変だったね」


 よしよし、とふぶきの頭を撫でる。


「フェルマァをなんとかしておくれ……あいつ、子供と一緒に騒ぐから……」


 外にいる一番デカいフェンリルは、ふぇる太たちのお母さんのはず。

 しかし……子供っぽいところがあり、寂しいと吠えまくるそうだ。


「早急に、ペットシッターを増やして欲しいのじゃ……」

「前に全知全能インターネットで公募したのに、中々こなくてね。なんでだろ?」


 全知全能インターネットの機能に、求人募集があった。

 それを使ってみたのに、中々こないのである。


「まあ……フェンリル+四神の面倒を見れるやからなど、あまりおらんゆえな」

「あの子らパワーあるからね……」

「うむ……」


 ま、何はともあれ……だ。


「今日は私があの子らの面倒見るから。君は寝てて」

「お言葉に甘えることにするんじゃあ……」


 ということで、ふぶきに変わって、私がもふもふたちの面倒を……見ます!


「よーし、今日はいっぱいあそぶぞー」

「「「やったーーーーーーーーー!」」」


 フェルマァ、あんたもなんでそっち側なのん……?

 君はこっちで一緒に、遊んであげる側じゃあないの……?


「ミカっ、どんな遊びをっ!」

「今日は……これ!」


 さっきKAmizonで購入したものを、彼らに見せる。


「じゃーん、フリスビー」

「「「????」」」


 もふもふたちが、尻尾を?にする。


『それは、なんだぜ?』

『それは、なによっ!』


 ふぇる太&ふぇる子が尋ねてくる。


「投げて遊ぶもの。ふぇる太」

『なんだぜっ!』

「それー! とってこーい!」


 シュッ……! と私はフリスビーをかるく放り投げる。

 ギュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!


「って、ええっ! 飛びすぎ……!?」


 フリスビーが空の彼方へと飛んでいく。

 しまった、私……神になって、一般人のときよりパワーアップしてたんだっ。


「ごめんふぇる太。今のなしで……」

『……ミカ姉さん。兄さん、とりにいったよ?』


 と、ふぇる美。

 え?


『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!』


 炎神フレイムハートフェンリルのふぇる太は、足から炎を吹き出し、空を猛スピードで駆ける。


 空中でフリスビーをキャッチして、戻ってきた。


『ふぉっふぇふぃふぁふぇ!』


 とってきたぜ! と言いたいらしい。


「え、偉い偉い……」


 フリスビーを回収し、ふぇる太の頭を撫でる。

 彼はパタパタパタ! とうれしそうに尻尾を揺らす。


『つ、次! 次はあたしだぜ!』

「はいはい。それー」


 だいぶ手加減して、フリスビーを放り投げる。

 ぱしっ! とふぇる子はジャンプしてキャッチ。


『だめ!』

「え?」


『ふぇる太んときみたいに、ぎゅーん! って投げてほしいんだわっ!』

「いやでも……」


『投げてー!』


 まあ、この子達のパワーなら大丈夫か……。 逆に、手加減すると不満のようだ。


「せい!」


 ギュウウウウウウウウウウウウウウウウン!


 凄まじいスピードですっ飛んでいくフリスビー。

 さて、ふぇる子はどうやるんだ……?


氷神アイシーバースト!』


 ふぇる子の立っている場所に巨大な氷の柱が出現。

 そこから滑り台が形成される。


 しゅぅうん! とふぇる子はそれを滑って加速し、空中ジャンプ!

 はしっ!


『とったわー!』


 ふぇる子は着地して、帰ってきた。


『ほめてほめてっ!』

「偉い偉い」

『うふふん! ここちいいわっ!』


 おおー! と他のもふもふ達が歓声を上げる。


『うちもやりたいわ!』『……ごじゃる』『ぴー!』


 朱羽あかはね白猫はくびょう青嵐せいらんもやりたいらしい。

 ちなみに黒姫くろひめはテラス席でお茶飲んでいた。


 あの子一番年長者なので、全く手が掛からないのである。


「はいはい、順番。次、ふぇる美ね」

『……わ、私は……別に……』


 ちっこくって、クールなふぇる美。

 彼女は頭が良いから、私に負担が掛からないよう、遠慮してるのだ。


 でも……私はわかってる。

 さっきからチラチラ、とふぇる美がこっちを見ていることに。


『おいふぇるみー!』


 と、長兄であるふぇる太が言う。


『おまえも、やりてえんだぜ?』

『……べ、別に……』


『遠慮なんてするんじゃあないわ!』

『……で、でも……ミカ姉さん……疲れちゃう……』


 やっぱり遠慮していたのだろう。

 私はしゃがんで、ふぇる美(他の子と違って小さい)の頭を撫でる。


「ふぇる太たちに言うとおり。さ、次は君の番だ!」

『……う、うんっ。ありがとう、ミカ姉さんっ!』


 そんな感じで、私はもふもふ達にフリスビーを投げて、投げて、投げまくった……。


 の、だが……。


「ぜえ……はあ……」


 もう何時間投げ続けただろう。

 しかし一向に、この子達が満足する様子はない。


 まあ、しかたない。

 受け取る側のもふもふたちはたくさんいるのに、投げる側は一人だけなのだから。


「あー……人手が欲しい……」


 そのときだった。

 ボックスが、私のとなりに出現。


「うわぁああああ!」

「って、ルシエル……?」


 ボックスから出てきたのは、代弁つっこみの神ルシエルだった。


「な!? なにこれ……!? どこここ!? どうなってるんだ……!?」


 困惑するルシエル。

 私もびっくりだ。


「や、ルシエル……」

「ミカ神どの!? なんで……?」

「さ、さぁ……?」

「さぁ!? どうせまたあなたが無自覚に神の力を使った結果だろうっ!?」


~~~~~~

ルシエルが召喚された理由

→契約神たるルシエルは、神が困難に陥ったに自動召喚されるから


契約神

→最高神と契約し、チカラを貰った神のこと

~~~~~~


 ルシエルって契約神扱いなんだ……。

 全知全能インターネットで調べた情報をルシエルに教える。


「ごめんね、そういうことらしいんだ」

「はあ……まあ……ミカ神どのには、大きなカリがあるし、別にかまわないけど」


 いいやつぅ。

 ルシエルは神妙な顔つきになる。


「なるほど……神が困難に陥ったときに召喚される……。わかった! お助けいたします!」


 どんっ、とルシエルが胸を叩く。


「それで、どんな困難に?」

「子ども達と遊んで欲しくって」


「………………………………はぁ?」


 (・д・`)みたいな顔になる、ルシエル。


「子ども達にフリスビーで遊んであげてたんだけど、手が足りなくって困ってたんだ……って、どうしたの?」


 ルシエルが肩をふるわせてる。


「あの……! 困ったってそのレベルなのか!?」

「うん」


「魔族の襲撃とか! 魔物の大軍は、困ったってレベルじゃあないのに!?」

「そうだね」


「困ったの基準がおかしいんだよぉおおおおおお!」


 今日も元気にツッコむルシエルなのであった。

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