第91話 最高神、ツッコミの神を生み出す
ミコト・糸色を撃破した。
「はぁ……」「ちくしょう……」「くやしいぜ……」
ハーフエルフたちは皆落ち込んでいる様子だった。
「どうしたの、皆? 元気ないね」
するとモブエール(世紀末ver)が、私の前で五体投地する。
「申し訳ないです! 我らが神よ! あなた様のお手を煩わせてしまって!」
どういうことだろう。
「我らは、結局、足手まといになってしまっていました……!」
ミコト戦で、確かにこの子たちは魔族の前で無力だった。
それを嘆いてるんだ。
「気にしないでよ。相手が悪かったって。レベル5000だもん」
「しかし……悔しいです!」
どごぉん! とモブエールが地面を強く叩く。
クレーターができあがる。
「我らは!」
どごんっ!
「魔族に!」
どごぉん!
「かなわない……!」
どごごごぉおおおおおおおおおおん!
「うん、辞めてね君ら……」
ハーフエルフ達は今回のミコトとの戦いにおいて、何もできなかったことを、みんな嘆いているようだった。
クレーターが次々とできあがる。
うーん……困った。
私の言葉じゃ届かない様子。
でもこれ続けられると、リシアちゃんの領地ボコボコになっちゃうし……。
どーしたもんだろうか……。
「バカヤロウ!」
バシッ……! と、ルシエルがモブエールの頬を、ビンタしたのだ。
「ミカ神どのもおっしゃっていただろう、相手が悪かったのだ! レベル5000て、もはや人類で太刀打ちできるレベルの相手じゃあなかった!」
そうそう、そうなんだよ。
それでも、頑張ってやってくれていたほうなんだよ。
「ミカ神どの本人が気にするなと言ってるのに! いつまでうだうだ言ってるのだおまえらっ!」
それにっ、とルシエルが言う。
「さっきから地面をバンバン叩くなっ! ここは、リシア様の領地だぞ!? おまえらの愛する領主は誰だ? リシア様だろうがっ!」
ルシエルが私の言いたいこと、全部代弁してくれた。
やっぱり、ルシエルが居た方が、助かるわぁ~。
「む! これは、まさか……そんな……」
モリガンが何かをつぶやいてる。
一方で、ハーフエルフ達は、ルシエルのツッコミのおかげで、少し、立ち直ってるようだった。
「だが……また公爵級が来たとき、どうしよう……」
「結局1億年修業しても、太刀打ちできなかったしな」
「もう1億年周回しないとだめなのかなぁ~」
やめてほんと。
私が申し訳なくなるから……。
「大丈夫ですよ、おまえ達」
「「「森の神!」」」
モリガンが立ち上がる。
まーた余計なこと良いそう。
「モリガン、お座り」
「わんっっ♡」
モリガンが犬みたいにお座りポーズする。
……犬がやるならまだしも、いい大人(神だけど)がやると、その……なんか、情けなくなる。
と、そのときだった。
『うぉおおおおおおおおおお! 呪うぅううううううううう!』
もあもあ……と空中に黒い煙が漂ってきた。
それは巨大な黒い犬の形になった。
「まさか……呪霊化?」
魔族は死後呪いに転じることがある。
前にもキエリュウの誰かが、そうなった。
ミコトも、私に強い恨みを抱いて死んだので、呪霊化したのだろう。
「めんどくさ……
と、私が動く前に……。
ルシエルが、体をフルフルと震わせる。
「おまえなぁ……!」
ルシエルが、手を払う。
「しつこいんだよ……! 何度も何度も!」
バシッ!
『ぎゃああああああああああ!』
ルシエルがツッコミを入れると、相手が……苦しんでる?
「なんっかい魔族出てくるんだよ!」
バシッ!
『ぎゃああああああああああああ!』
「もういい加減学習しろよ! こっちには最高神っていうイカレた火力の神がいるのに! 何度も襲ってきてばっかじゃあないの!?」
しゅうううう……と。
呪霊ミコトの体が、どんどん小さくなっていくではないか。
「どうなってるの……?」
困ったときには、
~~~~~~
呪霊ミコトが弱体化してる理由
→下級神ルシエルの攻撃を受けたから
~~~~~~
……。
…………。
………………はいぃ?
「る、ルシエル……?」
「なんだミカ神どの!?」
「あ、いや……あんた、神になってるんだけど……」
「は………………?」
~~~~~~
【種族】下級神
【神格】1.0
~~~~~~
スマホの画面を、ルシエルに見せる。
「
ただのハーフエルフだったルシエルが、いつの間にか、下級神(トゥアハーデと同じ)になってるじゃあないか。
「なんでだよっ!? アタシ、ハーフエルフだったんだけど!? どうして神になってるんだよ!?」
「さ、さぁ……?」
「なんで神にした張本人がわからないんだよっ!?」
「いや別に私が君を神にしたなんて決まってないでしょ……?」
「あんた以外にこんなトンチキな現象起こせるやついないでしょうがっ!?」
するとモリガンが、腕を組み、うんうんとうなずく。
「そのとおり……!」
「……何か知ってるの、モリガン?」
待ってました、とばかりに、モリガンが言う。
「ルシエル。あなたを神にしたのは、他でもない最高神であるミカ!」
「まじか。でも、どうやって……?」
「ルシエルは神からの寵愛を受けたからですっ!」
~~~~~~
神からの寵愛
→最高神に気に入られること。ルシエルの場合は、ミカの言いたいことを代弁してくれていたから
~~~~~~
「神に仕え、奉仕することで、神格を得ることができるのです」
「いや奉仕って!? ただミカ神どのにツッコミを入れていただけですが!?」
「それです。ミカの周りにはイエスマンしかいませんので。ミカにツッコミを入れられるのは、現状、あなただけっ」
いやまあ、確かに私の周りイエスマンしかいないけどさっ。
「普通の人間は神に恐れをなすもの。それでも、恐れることなく果敢にツッコミを入れた。それが奉仕活動となり、神から神格を賜ったのです」
ぽかんとする、ルシエル。
私も……そんな感じだ。
「なるほどっ!」「そういうことかっ!」「さすがミカ神!」
ハーフエルフ達が歓声を上げる一方で、ルシエル、もとい、
「いや! おまえら! 理屈わかってないだろ!? とりあえずよいしょしてるだけだろ!?」
ぱぁあああああ! と、モブエール達の体が光り輝く。
「なんかチカラがわいてくるぜ! これなら……うぉおおおお!」
モブエールがジャンプすると、弱体化していた呪霊ミコトに向かっていく。
「あいつアタシらの会話ズッと大人しく聞いてたのかよっ!」
バシュッ……!
逆に、ミコトの体が透けていた。弱体化してる……?
「ずええええええええええええええええええええええい!」
モブエールが杖(※ナイフ)で、呪霊ミコトを切りつける。
『ぎゃああああああああああああ!』
「こ、攻撃が……効いてる!? なんで……!?」
~~~~~~
→禊ぎ祓い
→ツッコんだ邪悪なるもののチカラを弱め、ツッコんだ味方のチカラを強める
~~~~~~
「なんっだその意味不明なチカラぁあああああああああああ!」
ルシエルがツッコむことで、敵は弱体化、一方、味方が強化される。
ルシエルに禊ぎ祓いを受けたミコトめがけて、ハーフエルフ達が特攻。
強くなったハーフエルフ達が、ナイフでミコトを滅多刺し。
「とどめぇええええええええええええええええええええええええ!」
モブエールが渾身の力で、呪霊ミコトの体に大穴を開けた。
『ちくしょぉお……ナガノミカ……なんて……やつだぁ……』
え、私今回何もしてないんだけど……?
『いつの間にか……神クラスの部下を、仕込んでいやがったのかぁ……』
いやいやいやいや……。
勝手に神になっていただけなんだけど、この子が……。
しゅうう……と呪霊ミコトは煙となって、消えたのだった。
「やるじゃあねえか、ルシエル! いや、
ハーフエルフたちが、ルシエルの前に跪く。
「ああ、すげえぜ代弁の神」
「ほんと、代弁の神すげえ」
「名前がまずすげえよな!」
うんうんうん、とハーフエルフ達がすっかり、ルシエルに心酔してる。
「ようこそ、こちら側へ。歓迎しますよ、ルシエル」
ぽんっ、とモリガンがルシエルの肩を叩く。
彼女は、絶望の表情を浮かべていた。
「アタシも!
「まあ、その……ど、ドンマイ……」
するとモリガンが満足そうにうなずく。
「自覚なく、神を一柱創り出してしまうなんてっ。さすが、ミカです!」
いや、ほんと……私今回なんもしてないんだけどね……。
「今回ミカ神どの何もしてないだろうがぁあああああああああ!」
まあ、ルシエルには申し訳ないけど、色々なことを代弁してくれる子は、一人は欲しかったからね。
これからも、よろしくね。
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