第80話 失われた古代のアイテムを復活させる


「じゃ、女神像を設置させてもらうね」


 領主であるリシアちゃんが、ルシエルたちハーフエルフに、女神像について説明する。


「設置するだけで自動で結界が展開する装置!? そんなものが存在するのですか……?」

「はいっ! もうすっごいんですからっ」


 ボックスから、ダヴィンチじいちゃんに作って貰った女神像を取り出して設置。


「見ててくださいねっ、ルシエルさんっ。ミカ様のものすごい結界が今、ぱぁって広がるんでっ! ほら、ぱーって!」


 しーん……。


「あれぇ……?」


 リシアちゃんが首をかしげてる。

 どうなってんだろうか。


 気になったので全知全能インターネットで調べてみる。

 

~~~~~~

女神像が作動しない理由

→女神像発動には、信者の信仰心が必要となる。

ハーフエルフ達は別の神を信仰してるため、女神像が発動しない

~~~~~~


 女神像って、わたしへの信仰心が必要なんだ。

 アベールにはリシアちゃんをはじめ、黄昏の竜がいたし、発動したわけか。


「ルシエルたちって、何か神様を信奉してるの?」

「ああ。エルフ族は、【森の神】の信徒である」


「森の……神?」

「森に恵みを与えてくださる善なる女神様だ」


 そういえば、この世界にはけっこー神様いるんだっけ。

 しかし森の神かぁ……どんなのだろう。

 まあ、それは後で良い。


「女神像は別の神様を信じてると発動しないらしいよ」

「では……マーテオの街では、結界が発動しないということですか……」


 さて、どうするかな。

 結界装置を使わずに、この街の人たちを、魔物から守らないといけないわけか。


 聖灰を使って結界を作る?

 それなら数ヶ月持つ……けど、裏を返すと、数ヶ月おきに聖灰をまく作業が発生する。


 置いておくだけで、自動で結界を構築する女神像の便利さを知っちゃうとなぁ……。


「こんな時に、【魔除けの匂い袋】があれば……」


 ルシエルがぼそりとつぶやく。


「魔除けの匂い袋って?」

「デッドエンドに大昔あった、魔物を遠ざける特別な香りを出す袋のことだ」


「そんなものがあるんだ。あれ、昔あった……ってことは、今はないの?」

「ああ……大昔に、作り方もろとも、失われてしまったようだ」


~~~~~~

魔除けの匂い袋が失われた理由

 大魔導士アベールの結界が、デッドエンド領民守っていた。

 匂い袋の必要性が薄れて、結果、作り手、作り方が失われた。

~~~~~~


「まあでも、全知全能インターネットで調べたら、作り方一発で出てくるけどね」


~~~~~~

魔除けの匂い袋の製法

→必要な素材は以下の通り

青月草そうげつそう

・神獣の体毛

~~~~~~


 神獣の体毛かぁ。


「くっ、神獣の体毛なんて、そんなレアなものがどこにあるというのだっ!」

「あるけど」


「な……!? なんだとっ!?」

「うん、おいでルンバちゃん」


 ボックスからルンバが出てくる。


「なな、なんだこれは!?」

魔導人形ゴーレムです」

「ご……こ、これが魔導人形ゴーレム!?」


 ルンバ、魔導人形ゴーレムでゴリ押忍作戦。

 で、ルンバが吸ったもふもふ達の抜け毛を外に出す。


 うちの子たち、特に長毛種の子らは、抜け毛はんぱない。

 ルンバくんのおかげで、うちの中はきれいだけどね。


 で、ルンバからゴミ(抜け毛)を回収。


「はい、神獣の体毛」


 ルシエルがしゃがみ込んで、毛玉を手に取る。

 くわっ、とルシエルが目をむく。


「ほ、本物だ……! 新鮮な神獣の体毛が、こんなにたくさんあるなんて……!」


「よく本物だってすぐわかったね」

「体毛に含まれる?この聖なる魔力は、間違いない、神獣のものだ……!」


 魔力見ればそんなことわかるんだ(無関心)


「ど、どこでこんなにたくさん、体毛を取ってきたんだ……?」


「企業秘密で」

「くっ……! 怪しすぎるだろっ!」


 ルンバは何台かあったので、それらを取り出し、体毛を採取。


「神獣の体毛はともかく……青月草そうげつそう。これは、採取が困難だぞ!」


~~~~~~

青月草そうげつそう

→破邪の神気しんきを放つ、特別な青い花のこと。

人が住まない清らかな場所にしか咲かない

~~~~~~


 ……って、んんっ?


「どうしたんですか、ミカお母様?」

「いや、全知全能インターネットでさ、この青月草そうげつそうって花を調べたんだけど……」


 画面に映ってるのは、青く綺麗な花だ。

 ハート型の花弁が、特徴的。


「これ……見たことある」


 テーブルの上に飾ってたような。


「そんなバカなことがあるかっ! 青月草そうげつそうは人の居ない清らかな場所にしか生えないのだぞっ!」


「ちょっと見てくるね」


 大転移グレーター・テレポーテーションで、家に帰る。

 ログハウス前の家庭菜園へと向かう。


 お野菜眷属達が、家庭菜園に水をやってる。


「皆。ちょっといい?」


 お野菜眷属達が集まってくる。


「こういう花、無かったっけ?」


 私は全知全能インターネットでひろってきた、青月草そうげつそうの写真を、眷属達に見せた。


 彼らはこくんっ、とうなずいて、私をログハウス裏へと移動。


「あった! 青月草そうげつそうじゃん」


 青い花が、ものすっごいたくさん生えていた。

 そうだった。イチゴかったときにみたんだった。


「でも青月草そうげつそうなんて、いつ生やしたの?」

「「「…………」」」さー?


 眷属達が首をかしげている。

 うーん、全知全能インターネットで調べるか。


~~~~~~

青月草そうげつそうが生えてる理由

→トマト君が、ミカのために花を植えていた。喜んで貰うために

~~~~~~


「トマトくん……ナイス!」


 ぴょこっ、と私の肩の上に、トマト君が乗っかる。

 つやつやの頭を撫でて上げた。


「てゆーか、花壇用意してくれてたんだね」


 青月草そうげつそうの他にも、いろんな花が咲いていた。

 どれも彩り豊かでとてもきれいだ。


 ここに住んでいる私の心を豊かにするために、どこかで摘んできて、植えてきてくれたようである。


 後のことはお野菜眷属たちに任せて、私はマーテオの街へと戻ってきた。


「ただいまー。青月草そうげつそうあったよー」


 ボックスから、家で摘んできた花々を取り出して、二人の前に見せる。


「そ、そ、そんなバカなぁああああああああああああああ!?」


 ルシエルが驚愕の表情を浮かべる。


「そ、青月草そうげつそうだ!? 信じられん! この破邪の魔力は……青月草そうげつそうに相違ない!」


 あってるっぽい。

 全知全能インターネットで本物を調べたので、間違ってるわけないのだが。


青月草そうげつそうは絶滅したはずなのに!? どこで採ってきた!?」


 マイハウス。


「企業秘密で」

「だから怪しすぎる!!」


 そこは否めませんね。


「まあでもほら、これで魔除けの匂い袋作れるっぽいよ。レシピもほら」

「だからっ。なんでっ。失われたレシピをっ、おまえが知ってるのだぁあああ!?」


「企業秘密で」

「むきぃいいいいい!」


 面白いなこの子。

 匂い袋事態は簡単に作れる。適当に布袋に、素材を突っ込めば完成だ。


 KAmizonで匂い袋用の布袋を買って、それに詰める。


「よしかんせーい」


 私の造った魔除けの匂い袋を見て、ルシエルがため息をつく。


「確かに、これからは強い魔を避ける力を感じる……」

「良かった。じゃあこれで解決だね」


 これを街の周りに配置すればいいんだから……って、あれ?

 ルシエルが、私のことをにらみつけてる。


 あれ、あれ?


「どうしたの?」

「おまえ……怪しすぎるだろっ」


 うーん、まあそうだよねえ。

 自分でやってて、だいぶ素性があやしいもん、この女(私)。


「おまえには感謝する。魔除けの匂い袋を作ってくれたこ。しかし! さすがに全部出所不明なのは、怪しすぎるぞ!」


 どうするかなぁ……と思っていたそのときだ。

 かっ……! と頭上から光が降り注いできたのである。


「ミカ~~~~~~~~~~~!」


 翼を生やした眼鏡の女性が、空から振ってきて、私に抱きついてきたのだ。


「おー、モリガンじゃん。おひさ」

「ひさしぶりですっ。やっとまとまったお休みが取れたのでっ。遊びにきましたっ!」


 すりすり、とモリガンが私に頬ずりする。

 そんなに友達に会いたかったのかな?


「ああ……!」


 と、ルシエルがぷるぷると震えながら、モリガンを指さす。


「も、森の神様ぁ……!?」


 ……………………はい?

 森の神様……?


「誰が?」

「モリガン様のことですよ!」


 モリガンが、ハーフエルフたちのあがめる、森の神様だって?


 ばっ、とルシエルが跪く。


「大変失礼しました……!!!!!!!」


 ルシエルが私に向かって言う。


「まさか、我らが森の神! モリガン様のお知り合いとは知らず! 無礼な口をきいてしまい、申し訳ありません!!!!!!!」


 そういや、この子達モリガンの信者だった。

 神の知り合いっぽい私に謝ってる訳か。


「いいって、気にしてないし」

「しかし、これで合点がいきました! 神の配下であれば、あのようなレアアイテムも、簡単に入手可能ですものね!」


 ま、その方が都合いいし、そーゆーことにしておこう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る