第62話 リシアを土地神にして領域拡大




 私はマイホームに帰ってきた。

 もふもふたちが一斉に集まってくる。


 ひとしきりもふもふしたあと……。


「新しい仲間ができたので、紹介します」


 リシアちゃん、そしてだぐ子が前に出る。


「あのその、り、リシアですっ。その……ミカお母様の……娘ですっ!」


 顔を真っ赤にして、リシアちゃんが叫ぶ。

 

「妾はだぐ子! エグゼクティブマネージャー・だぐ子じゃ! みかーちゃんの、娘じゃー!」


 だぐ子がえへん、と胸を張る。

 リシアちゃんが五歳、で、だぐ子はちょい上くらいの外見。小五くらいかな?


『むむむむ、娘が二人ぃいいいいいい!?』


 がびーん! とフェルマァがショックを受けている。


「ということで、みんな仲良くしてね」

「ばう!」「わうー!」


 誰よりも先に、ふぇる太&ふぇる子が、リシアちゃんに飛びつく。


「わわわ! もふもふっ! おっきくて……かわいいですっ!」

「ばう!」「わう!」


 ベロベロ、とふぇる太&ふぇる子の、わんぱく組が、リシアちゃんと仲良くなっていた。


 君たちほんと物怖じしないな。

 リシアちゃんは楽しそうに笑っている。


 うん、仲良くできそうでよかった。


「がはははは! すごいな! みかーちゃん! 四神の娘がそろっておるぞぉ!」


 だぐ子が黒姫くろひめなど、四神の子らを抱っこしてる。

 黒姫くろひめはなんか嫌そうにしていた。


「だぐ子知ってるの? 四神のこと」

「無論じゃ。供にこの世界を作ったからのぅ!」


 あ、そうなんだ……。

 でもなんで黒姫くろひめは嫌な顔をしてるんだろう?


「……ミカちゃん、この子……世界を消し飛ばそうとしてなかった?」


 黒姫くろひめは私とだぐ子との戦いを見ていたらしい。

 空間魔法の一種で、遠くを見る魔法があるんだってさ。


「こんなあぶない子を子どもにしてよかったの?」

「むしろ管理しないと、危なっかしくって……」


 反物質を生成して、世界を消し飛ばそうとする子だよ……?

 あ、だから黒姫くろひめは怒ってるのか。


「ま、仲良くしてよ」

「うーん……」


 難色を示す黒姫くろひめ

 ……うん。これは、あれだ。


「歓迎会しましょう」

「「「かんげーかい……?」」」


「そう。新しい仲間が増えたからね。歓迎会! キャロちゃんよろしく!」


 料理長キャロちゃんをはじめとして、野菜の眷属達が、食事の用意をしに厨房へと向かう。


『ミカ様、どうして歓迎会を……?』

「これから皆で仲良く暮らすためだよ」


 ということで、歓迎会です。

 場所はログハウス二号館。


 来客用の大きなリビングスペースがある。


「床があったかいのじゃぁ~~~~~~~~~~~!」


 だぐ子がゴロゴロと床を転がっている。

 リシアちゃんも目をむいて、ぺたぺた……と床に触れていた。


 ほどなくして、テーブルには大きな鍋がでんでん! といくつも置かれてる。


「ミカ、これはいったい……?」

「しゃぶしゃぶよ」

「「「しゃぶしゃぶ……?」」」


 神、そしてもふもふたち、そして黄昏の竜たちが首をかしげる。

 異世界人には見慣れないか。


「今日は豪勢に牛と、そして……かに!」


 お皿の上には、KAmizonで買った最高級タラバガニセットが乗っている。


「かに!? これが……かにだというのですか、聖女様っ!?」


 黄昏の竜リーダー・リタが驚愕する。


「こんな身がぎっしりつまったかになんて……存在するんですね」

「うん。あれ、こっちのかにってこんなのじゃあないの?」


「はい。かなりちっちゃいです。食べても泥臭くて、食べられたものではないです」


 なるほど、沢ガニみたいなのが、こっちで言うところかになのか。


「美味しいよ、さ、まずは肉でもかにでもいいからつまんで……」


 鍋にはいくつもの鍋の素(KAmizonで売ってる市販品)が入ってる。

 かにをしゃぶしゃぶして……そして、お皿に取る。


「いただきまーす」


 ゆで通したかにを、私はパクッと食べる。


「うまいっ! ぷりっぷり! 最高!」


 タラバガニは身がぎっしり詰まっている。

 しゃぶしゃぶして食べると、身がさらに引き締まる。

 

「さ、皆もやってごらん?」


 リシアちゃんがうなずいて、私がやったとおりにする。

 

「はふはふっ! お、おいひ~! ですっ!」

「うますぎるのじゃぁあああああ!」


 娘達がかにをたべて大絶賛してる。

 よしよし。気に入ってくれたようだ。


「うまー!」「こんなうめーかになんて初めてだっ!」

「泥臭くないかになんて生まれて初めてでごじゃる!」


 はふはふはふ、と黄昏の竜たちが夢中で、かにをしゃぶしゃぶして食べている。


 ふぇる太たちをはじめとした、もふもふたちも、美味そうにバクバクとカニを食べる。


「地上の人間はこんなうまい肉とかにが食べられるなんて~~~~~~~~~~~~~~~!」


 あれ……?


「神様って、普段ご飯なにたべてるの?」


 モリガンに尋ねる。


「天界では空腹を感じないのです」

「へえ、そうなんだ」


「はい。天の世界では、神々は肉体を持たずに活動してるのです。それゆえに、腹も減らないのです」


 なるほどねえ。


「わははは! 決めたぞモリガン! 妾はみかーさまのところで、これから暮らす!」


 私はだぐ子に言う。


「あんた、神としての仕事があるでしょう?」


「知らん! 妾はみかーさまのそばにいたい! 美味しいご飯と、暖かい寝床が、とっても気に入ったのじゃっ!」


 神としての仕事があるのに、こんなところで油売ってていいの……?


「いいのではないでしょうか?」

「そーっすね、良いと思うっす」


 モリガンと駄女神が同意する。


「どうして?」

「「だって、その人、仕事しないので」」


 ……二人の話を聞くと、どうやら最高神っていうのは、会社で言うところの社長的ポジションだそうだ。


 社長にもいろんな種類がいる。

 仕事バリバリする社長、仕事全くしないで、仕事を部下に丸投げし、自分はぐーたらしてるやつ。


 だぐ子は後者なんだって。


「正直だぐ子は天界にいるより、ミカのもとにいてほしいです」

「そーそー、この人うるさいし」


 うーん辛辣……。


「まあ、別にいいけど」


 どさっ、とふぶきが倒れる。あ。


「ごめん、シッターすぐ探すから……」

「お願いするのじゃあ……」


 手の掛かる子どもがまた一人増えてしまった。

 ごめんふぶき。



 リシアちゃんがもじもじしてる。


「リシアちゃんもここにいていいんだよ?」


 ぱぁ……! とリシアちゃんの顔が明るくなるも、すぐに、くもる。


「いえ……わたしは、デッドエンドに帰ります」

「そっか。あそこは君にとって、大事な場所だものね」


 この子は仕事を投げ出さず、ちゃんと、領主使用としてるのだ。

 偉い子だ。


 よしよし、と私はリシアちゃんの頭を撫でる。

 彼女は目を細めるも、またちょっとくらい顔になる。


「領民の皆には、申し訳ないです。わたしだけ……こんな美味しい思いをして……」


 うーん、真面目。


「確かにデッドエンドは、奈落の森アビス・ウッドとか、蒼銀竜山とかに囲まれて、危険な場所っすからね。ここと比べると」


 一応地上の管理をしてる、駄女神が言う。


「本来ミカ神さまのいるところも、危険な山なんすけどね。龍脈地だから、魔物寄ってこないだけってだけで」


 リシアちゃんはデッドエンドを拠点とする。

 でもあそこはあぶない場所だ、ここよりずっと。


 娘として養うことになった私としては(親としては)、安全な場所で暮らして欲しいかんはある。

 さてどうするか……。


「ミカ、リシアを土地神に任命するのはどうでしょう?」

「土地神……?」


「ええ。その土地を守護する神に任命するのです」


 と、モリガン。


「土地神にすると、何か良いことがあるわけ?」

「土地神の守る地を、龍脈地にできます」


 龍脈地。聖なる魔力の満ちる土地にできれば、魔物が襲ってこなくなる。


「もっとも、誰でも土地神にできるわけじゃあありません。神格を持ち合わせるものでないと」


 じゃあ、リシアちゃんは問題なく土地神にできる。

 眷属神となったことで、神格を得てるから。

「リシアちゃん、君を土地神にしてもいい?」

「は、はいっ! よろこんでっ!」


 やり方を全知全能インターネットで調べて、実行する。

 おなじみ、《眷属になろう》で、リシアちゃんに役職を付ける。


 ふぶきたちのように。


【デッドエンドの土地神】と、つけた。

 瞬間……。


 かっ……! 

 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 窓の外で、光の柱が昇っていた。

 デッドエンドの首都アベールのほうからだ。

 全知全能インターネットで検索し、アベールが龍脈地となったことを確認。


「うん、これで魔物が襲ってこなくなったよ。あと、薬草も自動補充されるね。それと怪我病気もしなくなった」


「!? す、すごいです……ミカお母様のおかげで、我が領地が……そんな凄い土地になったのですね!?」


 リシアちゃんが笑顔で言う。


「ありがとうございます、ミカお母様っ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る