第60話 最高神ダグザ、襲来


「ほんとだ……私、最高神になってる……」


 自分のステータスを見て、驚くしかなかった。


「ミカ! あなたは素晴らしいですっ。人間を神にするなんて、最高神以外にはできない所業!」

「それを平然とやってのけるぅう! ミカ神さまのそこにしびれるあこがれるぅう!」


 ……この駄女神×2どもは、ことの重大さに気づいていないようだ。


「あれれん? どうしたんですかぁ、ミカ神さま?」


 駄女神が首をかしげる。


「あんたらね……ちょっと今まずい事態になってるって気づいていないの?」

「まずい……?」「事態……?」


 トゥアハーデはともかく、モリガン、あんたは気づきなさいよ……。


「リシアちゃん、君は屋敷の中にいて。私は迷惑かけないように、ちょっと移動するから」

「どういうことですか、ミカお母様?」


 転移で待避しようとした、そのときだった。

 かっ……!

 頭上から、何かが凄い勢いで振ってきたのだ。


「【時間停止タイムストップ】!」


 時間を数秒だけ止める力を使用する。

 が。


 それでも敵はこちらに向かって落ちてきた。 

 私たちは大転移グレーター・テレポーテーションでその場を離れる。


 時が動き出すと同時に……。


 どごぉおん!

 と、リシアちゃんの屋敷があった場所に、隕石のごとくそれが降り注いだ。


「わ、わたしのお屋敷がっ!」


 半泣きのリシアちゃん。

 お父さんお母さんとの思い出の詰まった屋敷に、なんてことするのだ……。


「まさか……あれは……!」


 リシアちゃんのお屋敷の跡地には、一人の……幼女がいた。


「がははは! 妾の攻撃を避けるとは、運のよいやつのよのぉお!」


 五歳くらいの幼女が、ぷかぷあと空に浮いてる。

 血のように真っ赤な髪。

 頭には月桂冠が乗っている。


 ギザギザの歯に、燃えるような瞳。

 簡素な服、毛皮のブーツ。

 そして……羽衣をまとってる。


「【ダグザ】様!」


~~~~~~

最高神ダグザ

→モリガン、トゥアハーデ等の神々をまとめる神の一柱。

~~~~~~


「ダグザ様! 今ミカを殺そうとしていませんでしたかっ? どうしてそんなことを!?」


 モリガンがだいぶ切れ気味に言う。

 すると幼女最高神ダグザは、ふんっ、とふんぞり返る。


「そやつに、ムカついたからじゃあ!」


 ずびしっ、と幼女が私を指さす。


「最高神は、このダグザただ一人で良いのじゃあ!」


 ほらこうなった……。

 はぁ……面倒……。


「待ってくださいっすダグザ様っ。なにも殺すことないじゃあないっすかっ?」

「うるさいのじゃ駄女神!」


 天界でも駄女神って呼ばれてるんだ、駄女神……。


「おい貴様! そこの眼鏡かけた女!」


 ……ん? 私……?

 あ、そっか。大賢者ミカりんの姿のままだったっけ、今。


「妾と勝負じゃ! どっちが最高神に相応しい神か!」


 勝負? 何でそんな疲れることしないといけないのだろう……。


「勝負せんというのなら! この領地をまるっと消し飛ばしてやるのじゃ!」


 ……こいつ、ヤバい。

 天の神って地上には不干渉じゃあなかったわけ……?


「わかったよ。戦えばいいんでしょ……?」


勝負に乗って上げないと、リシアちゃんの大事な領地が穴だらけになってしまいかねない。


「駄女神、リシアちゃんを頼むね」


 駄女神がうなずく。

 私は飛翔の魔法を使い、最高神ダグザの前へと移動。


「がははは! なんじゃおまえぇ~。魔法なんぞに頼らないと空を飛べないんかぁ? 妾の方が偉いなぁ!」


~~~~~~

ダグザが浮いてる理由

→最高神は、羽衣を装備することで、宙に浮かぶことが可能

~~~~~~


~~~~~~

羽衣

→最高神にのみ与えられる、特別な布

神の意のままに動かせ、神を意のままに動かせる

~~~~~~


 どうやらあの羽衣が最高神に凄い力を与えてるみたい。


「がははは! では行くぞ!」


 羽衣の先端が伸び出す。

 それは形を変えて、巨大な手になった。


「気をつけてください、ミカ! 羽衣は自在に形を変えます! そして、この世界のルールに縛られることはない! つまり!」


 巨大な手は地面をバコッ! お持ち上げる。 なるほど、重さとか、重力とか、関係ないわけか。


「ガハハハ! 死ねぇええええええええええええ!」


 ダグザが巨大な土の塊をぶん投げてきた。

 

 私はそれを軽々と避ける。


「まだまだいくぞぉ! 今度はこうじゃあ!」


 羽衣の腕が天に伸びていく。

 そして……。


 ゴオォオオオオオオオオ!


「げえええええ! 無数の隕石が降り注いできますよぉ……!」


 羽衣を宇宙に伸ばして、漂っているスペースデブリを掴み、無理矢理引っ張ってきたのだろう。


「がはははは~~~~~~~! 終わりじゃあぁあああああああああ!」


 ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!


「勝った! 妾の勝ちじゃあ!」

「まだ勝負はついてないよ」


「「「なにぃいいいいいい!?」」」


 驚く神々。

 無理もない、落ちてきた無数の隕石を受けて、私がピンピンしてるのだから。


「な、なんじゃあ!? いったい何が起きてるんじゃあ!?」

「攻撃を防いだのよ、私の新しいスキルでね」


 私はスマホを掲げる。


~~~~~~

絶対防壁ファイアーウォール

→ナガノミカの最高神スキルの一つ。

 術者を構築する生体データに干渉し、破壊不能の存在に変える。

~~~~~~ 


「ようするに、私の体を絶対無敵のものに変えるっていう、防御スキルよ。どんな攻撃も……効かない!」


「なんじゃそのとんでもない力はぁ……!」

「見たかっ! これがミカ神様のちからっす!」


 駄女神がなぜか得意げ。

 モリガンは腕を組み、うんうんとうなずく。


「元々ミカには、トゥアハーデの力を独自進化させるほどの才能がある。最高神の力すらも、一段上の力として進化させたのでしょう」

「お母様すごいですっ!」


 ぎり……とダグザが歯がみする。


「くそっ! 食らうのじゃぁあああああああああ!」


 羽衣が無数に分裂し、こっちに襲いかかってくる。

 さっきの隕石よりも数が多い。


「がはははは! クラッキングできるのは、レンズに納めたもののみ! ここまで細い無数の攻撃、全てを消すことは不可能じゃろう!?」


 なので……ぱしゃり、と。


「なっ!? 攻撃が……止まったのじゃ!?」


 無数の羽衣パンチが空中で止まっている。

 まるで、凍り付いたかのようだ。


「ど、どうなってるのじゃ!?」

「あんたに干渉し、攻撃命令を消させてもらったよ」


~~~~~~

強制停止ランサムウェア

→ナガノミカの最高神スキルの一つ。

 相手の脳を構築するデータに干渉し、攻撃不可能とする。

~~~~~~


「あんたの脳をジャックして、攻撃命令を強制ストップさせてもらったわ」

「ぐぬ! ぐぬぅううう! 動けないのじゃぁああああああああ!」


 地団駄を踏むダグザ。


「す、すごいですミカ様……絶対防壁、相手への洗脳……どれも、超凄いスキルですっ!」


 どうやら最高神の力が私が本来持つイネターネットスキルと合わさることで、さらに凶悪なものに変化したっぽい。


「あんたをこのまま殺すこともたやすいけど……どうする? まだやる?」

「な、めるなぁ……!」


 ごぉお! と羽衣の触手が周囲に広がる。

 それはやつの体の前で一つに集まり、それが小さく凝縮されていく。


「この羽衣は神の意のままに動かし、どんな物にも変化可能……たとえそれが、現実ではあり得ないものであってもな!」


 私は全知全能インターネットで、即座にやつが行おうとしてることを検索する。


~~~~~~

最高神ダグザの攻撃

→羽衣で反物質を生成し、ナガノミカを星事消し飛ばす。

~~~~~~


「反物質って……あんた本当に神様なの? 星が消えるけど……?」

「がははは! 消えたらまた作れば良いのじゃぁあああ!」


 なんという、とんでもない神様だ。

 ちょっと、おいたがすぎね。


 ランサムウェアで攻撃命令を中断するのもいいけど……こうしたほうが、より、痛感するだろう。


 彼我の実力差を。


「最高神スキル……」


 パキィイイイイン!

 生成されていた反物質が、突如として、丸ごと消えたのだ。


「は……?」


 これにはさすがの最高神ダグザ様も、驚いてるようだった。


「は、反物質は……? 妾の、作っていた……反物質はどこへ……?」

「消したよ、私が」


「け、消した……?」

「うん。私の最高神スキルの一つ……【完全削除アンインストール】を使ってね」


~~~~~~

完全削除アンインストール

→ナガノミカの最高神スキルの一つ。

対象を構築する全てのデータを、世界から完全削除する。

~~~~~~


 ようするに、このスマホのカメラでとらえられるものを、完全に消し去ることができるというスキルだ。


「「や、やばすぎぃいい……!」」


 女神たちが驚愕するのも無理はない。

 私も、とんでもない力を手に入れたなって思ってる……。


 ぺたん……と最高神ダグザは地面に降り立ち、そして……。


「ビェエエエエエエエエエン! 怖いよぉおおおおおおおおおお!」


 ……最高神がギャン泣きするのだった。

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