第56話 眷属レンタルして領民を超強化する



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神牛のミルク

→神の力を付与した牛から絞れるミルク。

一口飲むと、基礎レベルが倍になる。

飲み続けると健康長寿となる。

※若返り、美肌効果がある

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「これなら24時間365日、がんばれるのじゃぁあ!」


 ふぶきがブンブンブン! と尻尾をふりまくっている。

 元気になって良かった。


 まあでもまだ根本的な問題(シッター不足)は解決していない。


「問題ならまだあるでしょ。どうするの、この牛」


 エルメスがきゅうベに触れて言う。 


「きゅうベはミカりん状態で連れて帰ってきたんだった」


 リシアちゃんからすれば、あれ、窮奇きゅうきどこ行ったってなってしまうだろう。


「向こうで放牧させようかな」

「ウォーン……」


 きゅうベが寂しそうに泣いて、すりすりと頬ずりしてくる。

 

『ぴゅ!【さみしーい】だってー!』


 朱羽あかはねが通訳してくれる。

 うーん、確かにこの子だけ一人隔離は寂しいか。


転移門ゲート作れば良いんだ」


 向こうとこっちをつなぐ、転移門ゲートを作成する。

 で、デッドエンドとこっちを行き来できるようにする。


白猫はくびょう転移門ゲート作るの手伝って?」

「み!」


 サツマくんに、ログハウス横に牛小屋を作って貰った。


 中には寝床と通路というシンプルな牛小屋がある。

 きゅうベが出入りできる入り口、そして部屋の奥には転移門ゲート


「あとはリシアちゃんに話を通しておけばOKか。」


 あ、そうだ。


「黄昏の竜の皆はついてきて。リシアちゃんに紹介するから」


 元々この、Sランク冒険者パーティを雇ったのは、リシアちゃんのところで、手伝いをさせるためだったのだ。


 ということで、いざデッドエンドへ。

 転移門ゲートをくぐると、ミカりんが使っている小屋へとやってきた。


 この小屋の横にも牛小屋を作ってある(サツマ君が秒でやってくれました)。


 牛小屋を出て、私はリシアちゃんちに向かおうとする。


「あ、ミカりん様っ!」


 リシアちゃんがちょうど、うちに来るところだった。


「どうしたの?」

「今日のお礼に、原油を届けに来ました」


 今日のお礼……?


「私何かしたっけ?」

「本当に、ミカりん様は謙虚な御方ですねっ。帝国との商談をつけてくださったじゃあないですかっ」


 ああ、それ……。


「別にお礼なんていいのに」

「いえ! ミカりん様のおかげで、うまくいったのです。きちんと、お礼はしないとっ!」


 うーん、律儀。

 嫌いじゃあないよ、君のそういう真面目なところ。


「リシアちゃん。君にちょっとお願いがあったんだよね」

「なんでもおっしゃってください! ミカりん様のためなら、わたし、何でもします!」


 大人に対して、そんなこと言っちゃいけません。

 悪い大人の食い物にされちゃうからね。


「ちょっと君んとこに、うちの友達を置いてほしいんだ」


 彼女を家の中に招き入れる。

 そこには、黄昏の竜のメンバー達がそろっていた。


 ぽかーん……と口を大きく開く、リシアちゃん。


「た、たたた、黄昏の竜の皆様じゃあないですかーーーーーーーー!?」


 ああ、そういえば黄昏の竜って、王国No.1パーティで、凄い有名だったんだっけ?


「この子達、仕事がなくて困ってたから、ここで働いたら……って、どうしたの?」


 リシアちゃんが跪いて、私に向かって祈っていた。


「神様……」


 え、私が現人神って、バレた……!?


「ミカりん様は、幸運の女神様です……。あなた様がここに来てから、うちには良いことばかりが起きます……」


 現人神なのバレたのかと思った……。


「ミカりん様には感謝してもしきれませんっ」

「どういたしまして。それで、返事は?」


「もちろんOKです!」


 リシアちゃんが黄昏の竜の人たちに、一人一人頭を下げていく。

 ほんと、律儀な子だ。


「真面目で良い子ですね、ミカりん様」


 とリタが笑顔で言う。

 この子たち、うまくやって行けそうで、安心した。


「あ、そうそう。きゅうベも置いて欲しいのよね」

「きゅうベ……?」


 ぽんぽん、と私はきゅうベの背中を撫でる。


「ミカりん様、この牛さんは……?」

「え、ああ、窮奇きゅうきよ」


窮奇きゅうき!? この子が!?」


 リシアちゃんが見た窮奇きゅうきは、進化前の、モップ犬みたいな見た目をしていたんだっけ。


「洗ってあげたら、こうなったのっ」


 うわぁ……自分でも苦しい言い訳。

 だって毛の色が白→黄金って、全然原形とどめてないじゃん。


 さすがにこれはオカシイって疑われても……。


「なるほどっ! そういうことなんですねっ!」


 君素直すぎて、お姉さん心配よ……。

 

「牛……なら、ウシカじいちゃんに、面倒を見て貰うのはどうでしょう」

「ウシカじいちゃん?」


「はいっ。この村にいる、ただ一人の酪農家のおじいさんです」


 酪農やってるんだここ……。

 まあ、後ろのことよくわかってる人に、面倒見て貰った方が良いか。


「紹介して貰える?」

「はいっ!」


 リシアちゃんと一緒に、ウシカじいちゃんとやらの家に向かう。

 私んちからほどほどに歩いた、村はずれのところに、じいちゃんの家があった。


 ちゃんと牛が逃げないように柵がたてられてる……まあ、ボロボロなんだけども。

 牛小屋もあった、まあ……ボロいんだけども。


「ウシカじいちゃーん!」

「なんじゃぁ……?」


 中から、よぼよぼで、今にも倒れてしまいそうなほどのおじいさんが現れる。

 なんかずっとぷるぷるしてるし、腰も90度に曲がってるし。


 リシアちゃんがウシカじいちゃんに事情を説明。


「なるほどのぅ、いいぞい」

「あ、ありがとう……酪農家っていうけど、牛って他にも飼ってるの?」


「おうとも。とはいっても、もう実質廃業してるがのぅ。2匹しかおらんからな……」


 柵の向こうに、よぼよぼの牛がいた。

 きゅうベが入ってくると、近づいてきて、ぺろっ、と顔をなめる。


 きゅうベもなめかえしていた。

 そして三匹とも動かなくなった。ケンカしてないし、仲良くやれそう。


「どれ、乳を搾るかのぅ」

「え? さっき一回絞ったよ?」


「乳牛は乳を頻繁にしぼってやらんと、体調が悪くなってしまうんじゃあ。乳の品質もおちるしのぅ」


 そういや、乳牛ってしぼらないと乳房炎になるんだっけ。


 すっかり忘れていた。

 やっぱりプロに任せるのが一番だった。


「どれ……きゅうベちゃん、しぼらせてもらうよぉ……どっこいしょ……はうっ!」


 ぐきっ、という嫌な音とともに、ウシカじいちゃんがフリーズしてしまった。


「こ、腰が……」

「だ、大丈夫じいちゃんっ!」

「もうだめかも……死んだばあさんがみえる……」

「じいちゃーん! あわわ、どうしよー!」


 治癒魔法をかけて治そうとしたのだけど、ふと、気づく。

 ボックスから、さっき絞ったきゅうベのお乳(瓶入り)を取り出す。


「じいちゃん、これ飲んでみて。きゅうベのミルク」

「ふぇえ……? なんでミルク……?」


「元気でるよ」


 じいちゃんがうなずくと、瓶に口を付ける。


「うっ!?」

「う?」

「うぉおおお! みなぎってきたあああああ!」


 びりびり、ばーん!

 と、じいちゃんの来ていた上着が、破裂した!?


「「「えーーーー!?」」」


 リシアちゃんと黄昏の竜の面々が驚愕する。


 じいちゃんは……さっきまでよぼよぼのおじいさんだったんだが、今はゴリマッチョになっていた!


「むうぅうん! 力がみなぎるぞおぉ!」

「す、すごい……ミカりん様、いったい何をっ?」


 リシアちゃん……何かおかしなことがおきたら、すっかり私が何かやったと思うようになってる。


「きゅうベのミルクって、なんか凄い栄養があるみたいなんだよね」

「なるほどおぉ! ふぅん! 体にパワーが満ち満ちておるうう! 若返ったようじゃあ!」


 あ、そうだ。

 ミルクに若返り、美肌効果があるんだっけ。


 じゃあこのミルクのんでいれば、このデッドエンドの老人たちも、元気になるのでは……?


 人出は多い方がいいだろうし。


「ウシカじいさん、このミルク、みんなにも配達して上げて」

「あいわかったぁ……!」


 よしよし。


「ミカりん様……もしかしてこのミルク、すごい……高価なアイテムなのでは?」


 するどい、リシアちゃん。


「あ、あのっ! 買い取ります! このミルク!」

「え、いいよ。ただで。ウシカじいちゃん紹介してくれたじゃん? それでチャラで」


「駄目ですっ! しっかり、ミルク代を払わせて貰いますからねっ」


 うーん、律儀。あんまり貰いすぎるのもねえ。可哀想っていうか。


「あ、じゃあこうしよう。ウシカじいちゃんに、きゅうベ面倒を見て貰うじゃん? その代わりにこっちはミルクを提供する。これならどう?」


 正直牛の体調管理とか、できないからね、私。全知全能インターネット使えばできるけど。

 

 どさ……とリシアちゃんがまた膝をついて、祈るポーズを取る。


「ミカりん様は、やはり女神さまです……ただで、こんな超レアなミルクを、提供してくださるのですから」


 なんかスッゴく感謝されてしまったのだった。

 たいしたことしてないんだけどね。

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