第55話 窮奇を名付けて進化させる
リシアちゃんを、デッドエンドへと送り届けた後、
『ミカ様ぁああああああああ!』
なにせ、レベル∞の私が押し倒されるレベルだ。
「た、ただいま……」
『おかえりなさいましぃい! 寂しくて死ぬところでした!』
『ぴゅい~~~~! ねーちゃー!』
他の甘えん坊もふもふたちが私にひっついてきた。
みんな寂しかったのか、やたらと体をこすりつけてくる。
「数時間留守にしてただけじゃあないの」
『我々ミカ様を慕うものたちにとっては、一日千秋の思いでしたっ!』
うんうん、とみんなうなずく。
なついてくれてるのはうれしいけど、愛が重い……。後物理的にも。
ふと、私は気づく。
「って、あれ? ふぶきは?」
「ばう!」
ふぇる太がどこかへ行き、ずりずりずり……と何かを引きずってくる。
「…………」ちーん。
ボロぞうきんのようになったふぶきさんが、そこに居た。
「おかえり……なのじゃ……我が主……」
「ど、どうしたの……?」
「そこの、さみしがり屋なもふもふどもを、なだめておったんじゃあ……一人で……」
ペットシッターの称号持ちであるふぶきには、子ども達をしつける力がある。
が、最近またさらにおっきくなったもふもふ&神獣達に、振り回されていたのだろう。
「お、お疲れ……」
「うむ……少し休むのじゃあ」
「うん、ゆっくり休んだ。あ、」
「あ?」
「ごめんふぶき、またもふもふが増える」
「…………」ちーん。
ふぶきが気絶した。ごめんね……。
野菜眷属ちゃんたちに頼んで、ログハウスへと運んで貰う。
「早急にペットシッターを増やさないと……」
てゆーか、前に求人を
中々来ないのはなんでだろうか。
条件が厳しすぎたのだろうか。
「おお、聖女様! おかりなさい!」
私がかこっている冒険者で、黄昏の竜のリーダー、リタが近づいてくる。
訓練中だったのか、軽装に木剣を持っていた。
後ろからぞろぞろと他のメンバーたちもやってくる。
「よぉエルメス、おめーひとりでどこいってたんだよぉ?」
壁役のデカタンクがエルメスに尋ねる。
「そこの無自覚女神さまのお供をちょっとね」
それってもしかして私のことですか……?
エルメスが仲間達、そしてもふもふたちに、何があったのかを説明してくれた。
「まさか……四凶の一角、
リタが私にキラキラした目を向けてくる。
「気になってたんだけど、四凶ってそんなみんな知ってるもんなの?」
「それはもちろんでございますよ」
と、リタが言う。
「コントン、キュウキ、トウゴツ、トウテツ……。四凶といえば、この世界において、最も有名な邪悪かつ強大な力を持つ魔獣と言われております」
「ふーん……冒険者の討伐ランクとかあるんでしょ? どんなものなの?」
「測定不能でございます」
ランク付けできないレベルで、ヤバい……?
そんな怖い子には思えないのだけどね。
他の四凶はもっと凶暴なのかもしれない……。
「四凶は普通に生きていたら出会うことはまずないとされておりますが」
「あ、そうなんだ」
私基本引きこもりだし。
他の四凶に出くわすなんてことは、今後絶対ないだろう。
「気を取り直して……。今日から皆の仲間になります、
皆、ちょっと距離を置いてる。
「どうしたの?」
「みんな、警戒してるみたいよ」
と、
まあさっきの話を聞いた後じゃあ……ね。
それに見た目も、ちょっと厳ついし(モップ犬みたいな見た目、あとちょっとにおう)。
獣たちが避けてしまうのは無理ないか。
「ばうばう!」「わうー!」
が、ふぇる太&ふぇる子はいつも通り、物おじすることなく、
この子達ほんと恐れというものをしらないよね……。
まあ、できれば皆にも仲良くして欲しい。
ということで、この後この子はお風呂に入れることにして……。
「その前に名付けだね」
眷属になりたいみたいだし。
「きゅうき……牛っぽいし……女の子……。うん、きゅうベ
瞬間、きゅうベ
少しきたない、モップみたいな見た目が変化する……。
そこに居たのは、黄金色の美しい毛皮をした、綺麗な牛だ。
毛が、けっこー長い。目が隠れてしまってる。
側頭部からは立派な、長い角が生えている。
前に
~~~~~~
きゅうベ
【種族】
【レベル】1400
~~~~~~
名前を付け、眷属化させたことでレベルアップしたようだ。
レベル四桁越え……。四神(幼年期)クラスの力を持ってるみたい。
「ばうばう!」「わうー!」
ふぇる太&ふぇる子が、きゅうベ
「そんな良い匂いするの?」
「ばう!」「わう!」
どれ私もちょっと匂いを嗅いでみるか……。
ほぉ……いいにおい。ミルクの、スッゴく良い匂いがする。
「ミルク……まさかと思うけど、きゅうベ
「ウォーン」こくん。
牛のお乳かぁ。昔一度北海道にいったときに、絞りたてのミルクを飲んだことがある。
おいしかったんだよなぁ。
うん……。思い出したら、飲んでみたくなった。
「ちょっと、お乳を絞ってもいい?」
「ウォン!」
野菜眷属ちゃんにバケツを持ってきて貰う。
私はきゅうベ
ジョボボボッ! と凄まじい勢いでミルクが出た。
うどんみたいな太さだった。
野菜眷属ちゃんにマグカップを持ってきて貰い、私はバケツからミルクをすくう。
ごくん。
「うまっ……! なにこれっ」
ごくごくごく! と私は思わず勢いよくミルクを飲み干してしまう!
北海道で飲んだ、あの濃厚な牛乳、まさにそれと同じだ!
濃厚でこくがあるが、しかし全然味がくどくないのだっ。
「美味しいよ、皆も飲んでみなよ」
もふもふたち達にも、きゅうベ
「あおーーーん!」「ばう~~~~!」
『ぴゅいぃいい! おいしーのねー!』
「あらほんとうに美味しいわ。こんなに濃厚なミルク初めて……♡」
もふもふたちからの評判は上々。
「リタ達も飲んでみたら?」
「あ、いや……自分らはちょっと……」
一方、黄昏の竜たちは、まだちょっと引いてる。
まあ、四凶のやばさを知ってる彼女たちからすれば、それから出てきた乳なんて、飲みたくないか。
是非とも飲んで欲しいのだけど。
「そうだ。甘い物ならどう?」
ふぶきもちょうど、疲れていたっぽいいし、ちょうどいい。
「甘い物、ですか?」とリタ。
「そう、冷たくて美味しい、牛乳を使ったデザートよ」
私は
Amaz●n……もとい、KAmizonに、こんなのが売っていた。
ぼんっ、と段ボールがいずこからか送られてくる。
「それは……なんですか?」
「ソフトクリームマシーンよ」
「そ、そふとくりぃむぅ~?」
黄昏の竜たちが首をかしげている。
私はいったん、ログハウスへと戻る。
リビングのソファに、ふぶきがうつ伏せになっていた。
「さて、ソフトクリーム作ってますか」
家庭用ソフトクリームマシーンを使って、私はソフトクリームを作る。
コーンの上に載せられた、白いそれをみて、みんな目を丸くしてる。
「さ、ふぶき~。美味しいおやつよ~」
と、私はふぶきのそばまでいく。
私は彼女にコーンに載ったそれを渡す。
ふぶきは何度かためらったものの、ぱくっと一口。
「ふぉおおおおおおおお♡」
ぱたたたたっ、とキツネ尻尾が激しく揺れる。
「な、ななんじゃこの食べ物はっ! こんな美味しいデザートは初めてじゃああ!」
ふぶきはソフトクリームを気に入ってくれたようだ。
そういえば、この子って氷属性だったもんね。アイスと相性いいのかも。
「皆も食べてみる?」
「じゃ、じゃあ……一口……」
ふぶきがあまりに美味しそうに、ペロペロ食べているからか、黄昏の竜のメンバー達も、ソフトクリームを食べ出す。
「最高に美味しーぜえ!」「甘くて濃厚で、すっごく美味しいわっ!」
どうやら皆も気に入ってくれたようだ。
特にふぶきがさっきからソフトクリームを作って、バクバクと食べている。
「体にいつも以上に、活力がみなぎってきてるのじゃ!」
~~~~~~
ふぶき
【種族】九尾の狐
【レベル】1800
【称号】ペットシッター・ふぶき
~~~~~~
レベル倍になってない?
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