第57話 現代グッズで楽々素材集め



 神牛のミルクをしぼって、デッドエンドの老人達に飲ませることにした。


 次に、私とリシアちゃんは、村の外へとやってきた。


「帝国の錬金術師が来る前に、ポーションの素材を集めておかないとね」

「薬草とお水ですねっ」


 薬草はこの村と森の間の、草原地帯に生えている。(全知全能インターネット調べ)


「さてじゃ、薬草を集めますか。おいでー」


 ボックスから野菜眷属を取り出す。

 眷属ちゃん達は私の命令通り、薬草だけを選別して、採取してくれたのだが……。


「ぎゃぁああああああああああ!」


 リシアちゃんが突如として叫んだのである。


「ど、どうしたの……?」

「く、草が勝手にちぎれて、ちゅ、ちゅ、宙に浮いています~!」


 え? 宙に浮いてる……?

 野菜眷属たちが薬草を持ってるだけだけど。

 ……あれ? もしかして……。


~~~~~~

・リシアが怯えてる理由

→リシアには、野菜眷属が見えていないから。

低位眷属は一般人には見えない。

~~~~~~


 野菜のように、元々命のないものから作られた眷属を、低位眷属というらしい。

 そして低位眷属は一般人には見えないんだと。


「ミカりん様どうしましょう。死霊系モンスターかもしれません……」


 ぶるぶる、とリシアちゃんが私の腰にしがみついてふるえている。

 

「私の風の魔法よ」

「あ、なんだ……」


 しかし、どうするか。

 薬草拾いや、水を汲んでくるのは、野菜眷属ちゃんに任せようとしたのだが。


 リシアちゃんが、眷属が見えないのなら、他のデッドエンド領民たちもこの子達が見えないだろう。


 となると、今の彼女みたいに、怯えさえてしまうことになる。

 私が魔法で集める? まあ悪くないけど、毎回はさすがにめんどくさい。


 めんどくさくない方法と言えば……。


「よっと」


 ぼんっ、と空中から段ボール箱が出現。


「ひ! またお化け……!?」

「違うよ」


 段ボール箱を開封する。


「全自動芝刈り機~」


 まてまて私。自分でやっていてあれだけど、さすがにこれはない。


 目立ち過ぎる。

 リシアちゃんを見てみなさいな。


 ぽかんとしてる。


「ミカりん様……これ……」

「ああ、これはね……」

魔導人形ゴーレム、ですかっ?」


 ……うん? 魔導人形ゴーレム


~~~~~~

魔導人形ゴーレム

→魔道具の一つ。魔力をバッテリーに動く人形のこと。

~~~~~~


 リシアちゃん、さっきの野菜眷属ちゃんたちを見たときより、怯えていない。


 人は、理解できないものにたいして、恐怖を感じるという。


 裏を返すと、見たことがあるものなら、安心できるってことだ。


「そう、これは……魔導人形ゴーレム! 最新式のね!」

「なるほど! やはり!」


 KAmizonで購入した、全自動芝刈り機(ゴルフ場とかに置いてあるあれ)を、セッティングする。


 最初からバッテリーはフル充電されていた。

 電源を入れる。


 ウィイイイイイイイイイイイン!


魔導人形ゴーレムが動き出しました!」

 

 Amaz●n、もといKAmizonで購入した芝刈り機は自動で動き出す。

 芝刈り機が通った後には、綺麗に、草原の草が刈られていた。


「あの魔導人形ゴーレムさん、草を凄い勢いで刈っていきます! あんな素早く動く魔導人形ゴーレムなんて見たことありませんっ」


 魔導人形ゴーレムってもっと動きが緩慢なんだなぁ。

 芝刈り機がいったん戻ってくる。


 芝刈り機のおかげで薬草+雑草を凄い早さで回収できた。

 芝刈り機の後ろには、刈った草を入れておくためのタンクが付いてる。


 タンクがいっぱいになったので、戻ってきたのである。


「草いっぱい取れましたねっ」

「後仕分けね」

「はいっ」


 鑑定魔法を使って、薬草か雑草かを仕分けする。

 うーん、めんどくさい。


「薬草だけを選別して刈れないかな……」


 それに、電化製品は電気がなくなると動けなくなる。

 龍脈地(マイハウスのある場所)だと、電化製品はフル充電されるから、別にいいんだけど。


 デッドエンドじゃ電力を確保できないからなぁ。

 

 困ったときは全知全能インターネットを使いましょう。


「よし」


 やり方はわかった。まず《眷属になろう》を立ち上がる。

 そして、この全自動芝刈り機を、まず眷属にする。


「ミカりん様、何してるのですか?」

「えーっと……秘密」

「はいっ!」


 うーん、素直……。

 で、芝刈り機に名前を付ける。


【薬草だけを無休で集め続ける・全自動芝刈り機】


 私のスキル、全知全能インターネットには、眷属に好きな能力を付与することができる。

 電化製品を、眷属にかえて、そこにこうして役割を足す。


 すると、こうして電気供給ゼロで、や食うだけを集める芝刈り機が完成するという次第だ。


「よし、いけ! 薬草だけを以下略ちゃん!」


 もう一度芝刈り機が動き出す。

 草原地帯をまたグルグルし出す。


「あれ? あの魔導人形ゴーレムが通った後、さっきみたいに綺麗さっぱり草が刈れてないですね」

「薬草だけを選別して取ってきてるからね」


「!? そ、そんなことが……可能なのですかっ!?」

「うん、可能なんです」


 魔導人形ゴーレムもとい芝刈り機が戻ってくる。

 タンクにこんもり草が入っていた。


 鑑定する。


「すごいです! 全部薬草です! 薬草だけが採れてます!」


 あともう一台くらいKAmizonで購入して、同じ処理をして、あとは適当に走らせておく。


「ミカりん様……こんな精巧な魔導人形ゴーレム、いったいどこで仕入れたのですか……?」

「えーっと……秘密」


「はいっ!」


 うーん素直……。

 

「薬草はこれでOKだから、次は水ね」

「少し歩いたところに、小川があります。そこの水をみんな飲んでますっ」


 なるほど。

 ということで、私とリシアちゃんは森の中に入る。


 少し歩いた。30分くらい。

 ……いやいやいや。


「リシアちゃん……少しじゃなかったの?」

「? はい、少しです」

「徒歩30分は少しじゃないよ……」


 田舎の子どもはたくましいな……。

 こちとら都会っこだから、歩いて少しっていったら5分以内なんです。


「こんな距離毎日歩いてるの? じいちゃんばあちゃんたち」

「そうですね……わたしたちは大丈夫ですけど、足腰の弱いお年寄りのかたは、ちょっと大変ってぼやいてました」


 さすがに毎回徒歩30分かけてるの、だいぶめんどくさいな。


「そんなときは……KAmizon! いでよポンプ!」


 ぼんっ、とKAmizonで買った、農業用のポンプが出現する。

 これも電動式で水を汲んできて、ホースで水を出すことができる。


 買ったはいいけど、さすがに目立つか。

 いやこれはさすがに……。


「ミカりん様、もしかしてこれ……魔道具ですねっ!」

「え? はい、これは魔道具です」


 思わず英語の構文みたいな受け答えになってしまった。

 魔道具ってことにしておけば、いいか。


 リシアちゃんも信じてくれてるし。


「ミカりん様は本当にいろいろな魔道具をお持ちなのですね。さすが、高名な魔女さまですっ」


 すごい、私何も言ってないのに、勝手に誤解されていく。

 人って、そこに疑問があれば、自分なりの回答を見つけて、解釈するっていうし。


 リシアちゃんも私が凄い魔女だから、見たことない魔道具を使うって思ってるみたい。

 まあ、その方がこっちに都合いいけどさ。


「じゃ、このポンプも電力を無視して動くようにしてっと」


 ポンプの先を川にいれて、村まで伸ばす。

 で、先端のボタンを押すと……。


 ブシャアアアアアアアア!


「わわわ! すごいですミカりん様! お水がたくさんでてます! 魔法でございますかっ!?」

「ううん、川の水を引っ張ってきたの」


「転移魔法でですか!?」

「ううん、あの魔道具の効果ね」

「すごいすごーい!」


 リシアちゃん本当に素直ね……。

 まあ、これで薬草も水も、自動で手に入る。問題解決。


「しかしミカりん様……」


 いや、まあ、ここまでさすがにいろいろやりすぎたら、私の出自を疑うよね……。


「やっぱり、すごい御方ですねっ!」

「…………」


「あれ? どうしたんですか? わたしの頭をなでなでして?」


 私はリシアちゃんを、守っていこうって、硬く、そう決意するのだった。

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