第39話 サウナ入りながら孵化作業
「ねえ、モリガンってどうして神獣の卵を送ってきたの?」
「っかー! うめえ! 肉とビールってのは、どうしてこうもあうんっすかねー!」
駄女神が肉食ってビール飲んでベロベロに酔っている……。
役立たず……。
「本人に聞くか」
私はスマホで、モリガン当てにライン通話をする。
いちおう、こないだモリガンが来たとき、ラインIDを交換してたのだ。
ワンコールで、モリガンが出た。
『もしもしっ。ミカっ。そちらから通話駆けてくださるなんてうれしいですっ!』
モリガンの声が弾んでいた。
「ごめんね、仕事中?」
『仕事中ですが、大丈夫です!』
……大丈夫って言えるのだろうか。
なんだかモリガン、駄女神に毒されてない?
「今駄女神……トゥアハーデから青龍と玄武の卵を受け取ったよ」
『そうですかっ、喜んでくださりましたかっ?』
「え、あー……プレゼントありがとう」
『いえいえっ! ミカが喜んでくれると思って、送らせていただきましたっ!』
もらい物したので一応お礼を言っておいた。
でも急に卵を渡されたので、正直困惑の方が強い。
「どうして青龍と玄武の卵を?」
『? ミカはもふもふが好きとトゥアハーデに聞きましたので』
なるほど……。
だから神獣か。
『それに、神獣を孵し、従えることで、ミカの【神格】もあがりますし』
「神格?」
『ええ、神は偉業をなすことで、神としての
へえ……そうなんだ。
「それで?」
『? それで……とは』
「いや、神格があがるから……なに?」
『え? え? し、神格があがるんですよ?』
なんだか話がかみ合わない。
『高位の神として、周囲から認められるんです。栄誉なことですよね?』
理解も、共感もできなかった。
別に神格を上げたいなんて思ってない……。
『も、もしかして……ご迷惑だったですか?』
「あ、いや。プレゼントはうれしかったよ。迷惑じゃあないから」
それはほんと。
もふもふは好きだし。
「プレゼントありがと。モリガン」
『どういたしましてっ! また遊びにいきますねっ。プレゼントもって!』
電話が切れる。
この調子だと、モリガン来たとき、新たなるもふもふが追加されそう。
いやでも、四神はコンプリートしたし、さすがにもう神獣の卵はもってこない……よね?
「ミカさま」
人間姿になっていた、フェルマァが、私のことじとーっと見つめてくる。
「どうしたの、フェルマァ」
さっきまでとてもご機嫌だった彼女が、今は、険しい表情をしてる。
「誰と電話してたのですか?」
「え、モリガンだけど……?」
「あの女とどんな会話を?」
「別に。プレゼントありがとうって」
「ほんとうに? それ以外は?」
「別に。何気にしてるの?」
するとフェルマァは私に近づいて、ぎゅーっと抱きしめてくる。
「ミカさまは、渡しませんからっ」
酔ってるのかな……?
駄女神同様に。
さて、と。
神獣の卵を改めてみる。
~~~~~~
青龍の卵(extra)
→四神・青龍の卵。
【孵化条件】
雷雲の中で1000年
~~~~~~
「雷雲の中で……1000年ぅ?」
~~~~~~
青龍の伝承
→青龍は出産の際に、雷雲の中に暮らし、地上に雨を降らしてると言われてる。
~~~~~~
なるほど……青龍は雷雲に住んでるのか。
じゃあ玄武は?
~~~~~~
玄武の卵(extra)
→四神・玄武の卵。
【孵化条件】
溶岩の中で1000年
~~~~~~
玄武の伝承を調べたら、出産の時は溶岩の中に身を沈めると書いてあった。
「雷雲に溶岩って……」
「ばう?」「わうわう?」
ふぇる太&ふぇる子がこちらをじっと見てくる。
『ぴゅい、【ともだち】【いつうまれるの?】って!』
この子達は新しい友達と、早く遊びたくって仕方ないようだ。
「して、どうするのじゃ?」
ふぶきは、ふぇる太たちの口元を、おしぼりで拭っていた。
皆口の周り、焼き肉ソースでべったり汚れていたのだ。
「雷雲の中や、溶岩の中にいくのかの?」
「そんなところに行きたくないかな」
「ではどうするのじゃ?
困った時は
「フェルマァ。子ども達の面倒みててあげて。私、お風呂行ってくる」
「かしこまりました!」
さてと。
「じゃ、ふぶき行きましょ」
「うちもついてきまーしゅぅ!」
駄女神がベロベロに酔った状態で手を上げる。
この子、酔ってるのに風呂入ろうとしてるのか……。
「体に悪いよ?」
「龍脈地で体調崩すことないんれぇ、だいじょうぶれふぅ」
あ、そう……。
私は
脱衣所で服を脱いで露天風呂へ。
「さ、体洗ったら、ここに入りましょう?」
「む……? なんじゃ……あの小屋?」
露天風呂の湯船の隣に、木造の小さな一階建ての小屋があった。
「サウナ小屋よ」
「さうな?」
「蒸し風呂ともいう。ま、入ってみればわかるよ」
私たちはサウナへと向かう。
「うひょー! サウナなんてつくったんですねぇ~!」
私たち三人はサウナの中に入る。
むわ……と中から熱気が襲ってくる。
木造の室内の中心部には、椅子が設置されている。
そして、中央には籠があり、中には熱した大きな石が無数に入っていた。
「ロウリュっすね!」
「ろうりゅ……?」
ふぶきが首をかしげる。
「水とかアロマを、あの石にかけることで出た蒸気で室温と湿度を上げるタイプのサウナっす!」
駄女神ちょっと俗世に精通しすぎてない……?
「自分、ドライサウナも好きっすけど、ロウリュも好きっすよー!」
駄女神が椅子に座る。
「あ、自分が水かけるんでっ!」
「よろしく。ふぶきも座って」
私の隣にふぶきが恐る恐る座る。
「む……? 主よ、なぜ神獣の卵を持ってきておるのじゃ?」
私は風呂桶を持参してる。
中には青龍&玄武の卵が入っている。
「孵化作業」
「はぁ……? 何を言っておるのじゃ。青龍は雷雲の中、玄武は溶岩の中でないと孵化しないのじゃぞ?」
「まあでもほら、曇って水蒸気だし。それに溶岩のなかとはいっても、多分必要なのは熱だろうからさ」
だから、ロウリュである。
蒸気も熱もでるし。
「そんなので生まれるわけないのじゃ……」
「まあ見てなさい。さぁ、サウナを楽しみましょう」
「無駄に暑苦しいだけじゃし……正直、わしは露天風呂のほうがいいの」
ふっ……と私と駄女神が笑う。
「サウナもいいものよ」
「ええ、ええ、サウナも最強にきもちいんすよぉ。それに、今サウナめっちゃブームなんすからね!」
ふぶきが首をかしげながらも、大人しく座ってる。
駄女神がサウナストーンに水をかける。
じゅううううう……。
「うわっぷ……水蒸気が顔に……」
じわ……とふぶきの額に汗が浮かぶ。
体の中から暖まっていく。
ふぶきはしばらくすると汗だくになっていた。
「わ、わしもう熱くて……」
「だめっすよぉお!」
がしっ、と駄女神がふぶきの手を掴む。
「もっと我慢するっす。限界までがまんするんすよぉ。そしたら、きもちよーくなれるっすぅ」
そんな風に私たちはサウナでじっとする。
汗が半端ないくらい出る。
「も、もう限界じゃ……」
「そして、すかさず外へゴー!」
私たちはサウナ小屋の外へ出る。
眷属達が椅子を用意してくれていた。
椅子に座って、外気浴をする。
ふぶきがとろけた表情を浮かべる。
あー……きもちい。
私たちがいる山は、標高が高いので、けっこー寒い。
サウナ上がりのほてった体を、外気が冷やしてくれる。
暖まりすぎた体に、つめたーい空気があたって、とても心地よい。
「そしてすかさずサウナに戻る これを何度も繰り返すっす!」
「そんなことしてなんの意味が……?」
ふ……わかってないな、ふぶきくん。
どうなるかだって?
「「ととのうため、よ(っす)」」
「と、ととの……う……?」
ふぶきはととのうを理解していないようだ。
何度も中に入り、外気にあたりを繰り返すと……。
「な、ん……あ、ふぁぁ~」
ふぶきが間の抜けた、しかし心地よさそうな声を発する。
私も……おお、き、きたぁ……。
「なん……え……? これ……からら……きもちよくってぇ……」
頭がぼーっとする。
自然と一体になってるような気持ちになる。
「こ、これが……ととのぅ……?」
「そうっすぅ~……」
私たちはしばし、この心地よい感覚に身を委ねていた。
ぴきっ。
ビキビキッ……!
ぱっかーん。
「きゅーい!」「……かめぇ」
あー……。
「せいりゅーと、げんぶが、うまれたっすねぇ~……」
「ほんとじゃあ……まさか、ただサウナ入るだけで生まれるとは……」
「神のサウナぁからねぇ~……」
赤ん坊青龍と玄武達が、そんなととのっている私たちのことを、不思議そうに見ていたのだった。
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