第37話 冒険者ギルドに登録するRTA
デッドエンド領主のリシアちゃんとともに、【首都アベール】へとやってきた。
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首都アベール
→デッドエンド領の首都。かつては辺境の大都市として栄えていた。
現在の人口は300人。住民の平均年齢は120歳
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以上、
アベールは首都なのにかなり寂れていた。
全体的に活気がない。
「で、でも住んでいるおじいちゃんおばあちゃんたちは、とてもいい人なんですっ」
リシアちゃんがフォローを入れたその時だ。
「リシアちゃん!」
「大丈夫かい!?」
領民らしき老人たちが、リシアちゃんを見ると、駆け寄ってきた。
その場にいた全員が、である。
「皆さん安心してください! この魔法使いミカりんさまが、倒してくださりました!」
領民達が一斉にこちらを見やる。
「旅の魔法使いミカりんです。この子達は従魔で
じっ……と彼らは私を見つめてきた。
まあ……うさんくさいよね。
疑われて当然か。
「「「ありがとうっ!」」」
おじいさんたちが私とふぇる太たちを取り囲み、口々に感謝の言葉を述べてくる。
「信じるんですか? こんな怪しい風貌の、魔法使いの言うことを」
すると老人たちは笑顔でうなずく。
「確かに見た目は怪しいが、しかし
「ええ、まあ。でも、どうしてそんなすぐに、リシアちゃんの言ったことを信じられたの?」
「そりゃ……わかるよ。あんたからは、ただ者じゃあないオーラを放っておるでな」
「きっと高名な魔女さまなのじゃろうて」
老人達には私の実力者が、バレてる?
なんでバレたんだろう。
人生経験豊富だから?
「わしらもあと50年若かったらのぅ」
「
「あたいらも衰えたもんじゃのぅ……」
なるほど、アベールは老人ばっかりだから、リシアちゃんが魔物退治に出張った訳か。
「あれ、でも冒険者ギルドあるんでしょ? ギルドに討伐依頼を出せば良かったんじゃ?」
すると老人達、そしてリシアちゃんの表情が曇る。
「……出したくても、出せないんです」
何か事情がありそう。
私とリシアちゃんは、アベール冒険者ギルドへと向かった。
ガチャッ、と私が扉を開ける。
中には冒険者が全然いなかった。
ただひとり、手前でふんぞりかえっている、巨漢のモヒカン男がいた。
「なんだぁ? リシアぁ……? おれさまに依頼しにきたのかぁ?」
「【ソクタイジョー】……さん」
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ソクタイジョー・ニドトアラワレン
【レベル】70
【種族】人間
【
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「じじばばしか居ないような、クソ田舎の領主さまにぃ、依頼料が払えるわけないよなぁ! うひひ、おれさまの性奴隷になるって言うんだったら、考えてやってもいいぜぇ?」
あ、こいつクズだ。
こいうやつほんと駄目。
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アベール冒険者ギルドの事情
→Aランク冒険者のソクタイジョーが新人に嫌がらせをしてギルドから追い出し、自分が唯一の冒険者となることで、依頼主(主に領主)から法外な金をむしり取っている
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こいつがいるせいで、リシアちゃんは冒険者を雇えないわけだ。
「OK。私に任せなさい」
「ああ、なんだこのババア?」
私はソクタイジョーを無視して、受付へと向かう。
受付嬢さんに私が言う。
「冒険者登録したいんだけど」
「……はい。では、こちらにご記入ください……」
受付嬢さんがため息をついて、羊皮紙を差し出してくる。
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ギルド登録
→ギルドの登録には、名前等の個人情報を記入する必要がある。(偽名OK)
その後、ギルドに加入するためのテストが行われる。
科目は
1.魔力測定
2.的当て
3.先輩冒険者との決闘
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【ミカりん】と、そして【魔法使い】【従魔は
「……ではこれより試験を開始します。まずは……」
私は言葉を遮り、ソクタイジョーに向かって言う。
「ねえ、先輩冒険者さん? 試験の中には、あんたとの決闘が含まれてるのよね?」
にちゃ……とソクタイジョーが笑う。
「ああ、レベル70の、Aランク冒険者、加えて
ソクタイジョーは屑だが確かにレベルが高い。
初心者が戦って勝てる相手じゃあない、と思われる。
「受付嬢さん。他にテストしてくれる、冒険者はいないのよね?」
「はい……非常に、残念ながら……」
やっぱりこいつのせいで、アベール冒険者ギルドには人が来ないわけだ。
「……では、まずは魔力測定から」
「ううん」
受付嬢さんが目を丸くする。
「で、では……的当てから」
「いや」
「じゃ、じゃあ……決闘を先に?」
「全部」
「「……は?」」
「3つのテスト、全部いっぺんにやったげる」
「「なにぃ……!?」」
困惑する受付嬢さんとソクタイジョー。
「ど、どういうことだぁ、てめえ!」
ソクタイジョーが詰め寄ってくる。
「言葉通り。魔力測定と的当てと決闘、全部いっぺんにやったげるってこと」
「な、なめてんのかてめえ!」
「舐めてるっていうか……結果が見えてるからさ」
だって私レベル∞だよ?
「お、おれさまが負けるとでもいいたいのか?」
「うん」
「バカにしやがってぇ!?」
どうやら彼我の実力差を理解できていないらしい。
アベールの街の老人たち以下ね、こいつ。
「受付嬢さん、測定に使う水晶と、的当てに使う的はどこに?」
「あ、えと……水晶はこちら。的は外にあります」
「よし。じゃあソクタイジョー、外で決闘しましょう」
ソクタイジョーが顔を真っ赤しながらうなずく。
私たちは外へと移動。
~~~~~~
・魔力測定
→魔力を測定する特別な水晶玉を用いて、魔力を測る。水晶は特別製で、絶対壊れない
・的当て
→離れたところから的に向かって攻撃する。的は特別製で、絶対に壊れない
・決闘
→特殊な防御結界の張られたフィールドで先輩冒険者と戦う。この結界は絶対に壊れないし、ここで受けた傷は無効化される。
~~~~~~
だいたいテストのルールは理解した。
「さぁ、武器をかまえやがれ、馬鹿女!」
ソクタイジョーが刀を両手で握る。
私は……受付嬢さんから水晶玉を受け取る。
「あんたなんて……この水晶玉一つで十分よ」
「ぷぎゃははあ! 水晶玉で何ができるってんだよぉ!」
わかってないなぁこいつ。
投石も立派な武器でしょう?
「じゃ、始めましょう」
「は、はい……では……試験、か、開始!」
受付嬢さんが開始の合図をする。
「先手必勝! くらえ、飛燕連斬!」
……え? 嘘……。
「うぉおおおお! 死ねえぇええええええええええええええ!」
まさか、こんな……。
「でやぁあああああああああ!」
お、遅すぎない?
まあ、でも向こうはレベル70、こっちは∞。
レベル差がありすぎて、こんなに相手の動きがゆっくり見えるのか。
まあいいや。、さっさと片付けてしまおう。
私はぜったに壊れない水晶に、ほんのちょっぴり魔力を込める。
かっ……!
ぶぉんっ!
「は? ちょ……?」
私の投げた水晶玉がソクタイジョーに向かって飛んんでいく。
びきっ、ピシッ……!
水晶玉にヒビが入る。
測定できる魔力量を超えた水晶玉が、ソクタイジョーにぶつかり……。
「ぶげあぁあああああああああああ!」
どがんっ! という凄い音とともに、ソクタイジョーがぶっ飛んでいく。
水晶玉はぶっ壊れた。
そしてその衝撃で、ソクタイジョーはすっとんでいき、的にぶつかる。
ばきぃん!
的が壊れても、まだ勢いは止まらず。
試験会場の結界にぶつかり……ばきぃん! と結界を破壊。
そして、二度三度、と地面をバウンドして、ようやく勢いが止まった。
「あ、あり得ないです……絶対壊れないはずの、水晶玉と、的と、結界が……壊れてしまうなんて……!」
受付嬢さんが呆然とつぶやく。
私は倒れているソクタイジョーの元へ行く。
「あ、あば……あべ……ば……」
私は治癒魔法をソクタイジョーにかけて、一言。
「二度とこの領地に近づな」
「ひぃいいいいいいいいいいいん! すみませんでしたぁああああああああああああ!」
ソクタイジョーが立ち上がると、凄い早さで走り去っていった。
よし、これでOK。
「す、すごいです! ミカりん様!」
受付嬢さんがさっきまでの暗い顔から一転、笑顔で私の手を掴んでくる。
「あのソクタイジョーを一撃で倒してしまうなんて! しかも絶対に壊れない水晶と的と結界まで破壊してしまうなんて!」
「どうもどうも」
リシアちゃんを見やる。
彼女は目に涙をためて、何度も頭を下げてきた。
「ありがとうございます、ワタシたちのために……悪党を追い払ってくださって!」
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