第31話 朱雀の炎で生活のクオリティUP
ログハウスの庭先にて。
キャンプ椅子に腰掛けている私。
そしてその上には、朱羽が丸くなっている。
「ぴ~♪ ぴぴ~♪」
「おお……あったかいねえ……」
朱羽は、湯たんぽとかカイロとかと同じくらい暖かいのだ。
乗っけてるだけで体の芯からぽかぽか暖かくなる。
「寒い日は君をずぅっとぎゅっとしたくなるなぁ」
朱羽の羽毛を抱きしめる。
あー……なんてもっふもふな肌触り。
しかもめちゃくちゃ暖かいのだ。
これ不思議なんだけど、熱い! ってならないのよね。
朱羽が炎をコントロールする技術を身につけたことが、関係あるみたい。
私を暖めることだけして、火傷しないよう、熱を操作してるそうだ。
「みー!」「みゅー!」
私が朱羽をお腹に乗っけて暖をとっていると、ふぇる太、ふぇる子が近づいてきた。
よじよじ、と私のお腹の上に乗っかってきて、朱羽にくっつく。
「みー……」「みゅー……」
温泉にでも浸かってるかのように、目をとろかせる子フェンリルたち。
どうやらこの子達も暖をとってるようだ。
「もうすっかり仲良しさんだね、赤ちゃん組は」
つんつん、と朱羽がふぇる太の耳をつつく。
ぱたぱた、とふぇる太が耳を動かす。そんなやりとりをしてる。うん、仲良し!
「…………」
「ふぇる美。居たのね」
寡黙なふぇる美は私の脚にぴったりくっついていた。
「あんたも暖をとりたいの? ほらおいで」
「…………」
ふぇる美はお腹に乗ってこなかった。
三匹フェンリルが乗れば、なるほど、重量オーバーかも。
ふぇる美は私に負担をかけまいと、ひとり足下で大人しくしてるのだ。
うーん、思いやりのあって良い子だ。
しかし仲間はずれはよくない。
皆でこのぽかぽかを味わう手立てはないものか……。
そのとき、ひゅる~……と風が吹いて、私の前を落ち葉が通り過ぎていく。
「落ち葉……うん。そうだ。眷属集合」
ぞろぞろ、とどこからか野菜眷属達が現れる。
『およびですかっ! ミカさまー!』
「フェルマァ……あんた、お風呂行ってたんじゃあなかったの?」
子フェンリルたちの面倒を見てる間、大人組はお風呂に行っていたはず。
よく見るとフェルマァ(フェンリル姿)の毛から水がしたたり落ちていた。
『ミカさまに呼ばれたら、たとえ火の中であろうと、温泉の中だろうと、一瞬で飛んでまいります!』
つまりお風呂からここへ飛んできたわけか。
「野菜眷属たちは落ち葉を集めてきて」
ややあって。
こんもり、と落ち葉の山が完成する。
「
「ぴゅい!」
落ち葉は良い感じに燃えだした。よしよし。
「「「は~~~~~………………」」」
皆んなでたき火に当たる。
お風呂の内側からじわじわ暖まる感覚もいいけど、こうして外から暖められるのもいいよね。
あと、火を見つめるのも、いい。
火は綺麗だし、めまぐるしく形を変えるし、見ていて飽きない。
「これで匂いが付かないと最高なんだ……けど……」
なんだ、違和感がある……。
『温かいですねぇ、ミカさま。ずぅっとここに居たいです……って、ミカさま?』
私はフェルマァの側にいく。
そして、毛皮に顔をツッコむ。
やっぱりそうだ。
「フェルマァ、良い匂いする」
『先ほどまでお風呂に入ってましたから』
「いや、そうじゃあなくてさ。たき火の煙の匂いが、しない」
普通、これだけ煙が出ていたら、目が痛くなっても、そして、服に匂いが付いてもおかしくないのに。
「困ったときの
~~~~~~
朱雀の炎
→万物を焼き尽くし、灰燼に帰す
~~~~~~
ようはなんでも燃やせるってことだ。
何でも、というのは植物だけじゃない、石や、金属も。
そして……有害物質もだ。
なるほど、だから煙で目が痛くならなかったのだろう……。
「ん? まてよ。
ぴょんっ、と私の手の上にサツマ君が乗っかる。
サツマ君には女神モリガンからもらった、神鎚ミョルニルを貸してあげてる。
私がちょーざっくりとした指示を聞いた後、こくとうなずき、肩から飛び降りた。
『ミカさま、眷属にまた何か作らせるのですか?』
「うん。生活に必要なものをね」
『また生活のくおりてー、とやらが向上するのですねっ!』
「そゆこと」
ややあって。
私達は裏庭へと移動した。
『ミカさま、なんですこれ?』
「ゴミ処理用の焼却炉、よ」
学校でよく見る鉄製のあれだ。
そう……今までログハウスで生活していたけど、当然、生活してるとゴミが発生する。
今までゴミはアイテムボックスの中に投げ入れていた。
でもあんまり良い気分じゃあなかった。
だってボックスの中に食べ物とか服とか、アイテムとか入れるのに、そこに一緒にゴミを入れるのだからね。
「さ、
「ぴゅい!」
ぽっ、と
「フェルマァ、ゴミを入れるの手伝ってちょうだい」
「合点です!」
人間姿になったフェルマァと協力し、焼却炉の中に、ゴミ袋を放り投げていく。
袋は炉のなかで一瞬で燃やされ、灰になる。
煙突からは黒い煙は上がっていない。
無事、炎でゴミを完全に燃やし尽くすことに成功したようだっ。
「すごいです……ミカさまっ。こんな発明をしてしまうなんて! 天才です!」
ちなみにこの世界でのゴミは森の中に放り投げることが一般的だ。
汚い、と思うが、ほっとくとスライムがゴミを食べて綺麗にしてくれるらしい。
スライムのような雑魚モンスターは森の至る所にいるので、不法投棄してもゴミがたまっていくことはないのだ。
しかし私の住むこの山に出る魔物は、全員が高レベルモンスター。
スライムのような雑魚モンスターが入り込む余地はない。
よって森に捨ててもゴミがたまっていく一方だったのだ。
「ミカさまの発想力には毎度舌を巻きます!」
「いやいや、凄いのは
肩に留まってる
「ぴゅるる~♪」
「みー!」「みゅー!」「……!」
子フェンリルたちが抗議の声を上げていた。自分たちも撫でてほしいみたいだ。
可愛い子め。
と、そのときだった。
「な、なんじゃこりゃーーーーー!?」
ふぶきの声が、庭先、さっき私達がたき火していた場所から聞こえてきた。
ちゃんと火は消してきたはずなのだが……。
気になった私達はふぶきの元へ向かい……。
「え、なにこれ……?」
「樹……ですかね」
私達がたき火していた場所に、1本の立派な木が生えているではないか。
「ぴー!」
ぱたぱた、と
その視線の先には、赤い果実がなっていた。
「うっそ……リンゴ……?」
そしてしゃくしゃくと食べて「ぴー!」と歓声を上げていた。
「ど、どうなってるの……?」
「わからん……。わしが戻ってきたとき、灰の中から樹が生えてきたのじゃ」
「灰……?」
そういえば、たき火の後には真っ白な灰がたまっていた。
困ったときは鑑定&
~~~~~~
聖灰(extra)
→
~~~~~~
「なるほど……この灰、肥料になるんだ」
灰に含まれる成分が、土地を豊かにすると聞いたことがある。
「ん……? でもなんで樹が生えたんだろう」
ははぁ、なるほど。
私は聖灰をアイテムボックスに入れて、龍脈地の片隅へとやってきた。
バサッ、と灰をまく。
ブワァアアアアアアアアアアアア!
「たくさんの樹が、一気に生えてきました!」
「樹だけじゃない、花も!? しょ、植物魔法かの!?」
やっぱりそうだ。
「聖灰を私が使うことで、土地を清める力がさらに向上するみたい。結果、種がなくても植物を生やすことができるみたい」
私は塩に含まれる、清めの成分を増幅させ、結界を創っていた。
塩よりも聖灰のほうが、その清めの成分が多く含まれている。
じゃあ、それを増幅すればどうなるか?
浄化はもちろんのこと、こんな風に植物を生やすことができるようになるみたい。
「ゴミを燃やしてできた灰で、樹などの植物が生やせるようになった、ということかの……」
「すごいです! さすが聖なる神! 浮揚となったゴミから新たなる生命を生み出してしまわれるなんて! まさに奇跡っ!」
私は
「ありがとう、
『ぴゅい! まみーがよろこんでくれて、うれしー!』
うんうん。
……………………うん?
「あ、あれ?
『ぴゅい? しゃべった?』
しゃ、しゃべったぁあっ?
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