山暮らし聖女の異世界スローライフ〜聖女召喚された私、偽物だとして雪山に廃棄されるも、チートスキル【インターネット】と神の力で快適に暮らしてる。今更私が真の聖女だと気付いたようですがもう遅い
第26話 上位女神を、マッサージで骨抜きにする
第26話 上位女神を、マッサージで骨抜きにする
モリガン襲来の翌日。
早朝、私は庭先で、朝日を見ながらコーヒーをすすっていた。
こっちに来てから、自然と早寝早起きになっていた。
朝起きてこの冷たい空気の中飲むコーヒーが、毎日の楽しみだから。
ガチャリ。
振り返ると、ログハウスからモリガンがやってきた。
「おはよ」
「おはようございます……くしゅんっ」
モリガンは昨日と同じスーツ姿だ。
寒そうに肌をさすっている。
私はアイテムボックスから、ケープを取り出す。
「そのままじゃ寒いでしょ? 防寒スキル付きのケープだから」
単なるケープに、眷属になろうを使って、防寒スキルを付与したのだ。
モリガンは寒さには耐えられないのか、私からケープを受け取る。
「コーヒー飲む?」
「…………ええ」
お野菜眷属ちゃんが抽出してくれたコーヒーを、私達はそろって飲む。
「苦くなかった? お砂糖とミルクいる?」
「あなた、ちょっとわたしに優しくしすぎではないですか?」
胡乱げなまなざしを向けてくるモリガン。
「昨日わたしは、あなたを、殺そうとしたのですよ?」
確かに、天の剣とやらで私は殺されそうになった。
「未遂で終わったじゃあないの」
ぽつり、とモリガンがつぶやく。
「あなたはどうして、わたしに敵意を向けてこないんですか?」
さて、どうしよう。
「その前にさ、あんた昨日のこと覚えてる?」
「……………………少し」
モリガンは昨日、酒飲んで、飯食って、はっちゃけていた。
そのときの記憶が彼女にはあるらしい。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ないです……後片付けもせず寝てしまって……」
宴会? のあと、モリガンはそのままバタンと倒れてしまったのだ。
眷属に私のベッドまで運ばせたのである。
「片付けは眷属ちゃん達がやってくれたからさ、この子達にお礼言ってよ」
「あ、ありがとう……」
テーブルの上にいたトマト君が、びしっ、と敬礼のポーズを取る。
モリガンは微笑むと、トマト君の頭を撫でていた。
うん、やっぱり。悪いひとじゃあない。
「まあいろいろあったけどさ、私……あんたのこと嫌いじゃあないよ。苦労してるんだなぁって思った」
昨日、モリガンはベロベロによった状態で、愚痴を言っていたのだ。
「愚痴……?」
「うん。上が無能すぎるとか。下が生意気で言うことを聞かないとか」
「ああ……」
「周りは結婚してるのに、わたしだけ結婚できないとか。マイホーム買ってたり、子供産んでる同期もいて、焦るとか」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
モリガンが耳を塞いでしゃがみ込んでしまった。
「トゥアハーデは、このこと聞いたのですか……?」
「いや、早々にあんたの世話を私に押しつけて、一人で風呂入って飯食って爆睡」
「すみません……いろいろ、ご迷惑を……」
自分のこと、そして、駄女神のことで、私に迷惑をかけたと思ってるらしい。
駄女神はまあ舎弟だから、別にいい。
それにモリガンのことも、もう他人とは思えなかった。
私は(元)社畜で、モリガンは現在進行形で社畜。
だから、彼女にシンパシーを抱いてしまうのだ。
「モリガン……お疲れなんでしょ?」
「ええ、まあ」
酒飲んで泥酔してたし、寝ている間も苦悶の表情をしていた。
今も眉間に深いしわが刻まれている。
肌もボロボロだし、体にもガタが来てるようだ。
腰と首に疲労がたまってるのがわかる。
「な、なんでそこまでわかるのですか……?」
「やっぱり便利、私の
「……悪用しないでくださいよ、それ」
どうやらモリガンは、
うん、やっぱり良いやつね、この神。
だからこそ……私はモリガンのこと、放っておけなかった。
「モリガン、お風呂いかない? あんた昨日風呂入らないで寝ちゃったでしょう?」
「ああ……そういえば……」
化粧も落としてなかったようだし、風呂に入るべきだろう。
「案内するよ。ついてきて」
モリガンはじっ、と私を見つめてくる。
「……籠絡作戦の一環ですか?」
「だから、それ駄女神が言ってるだけだから。心読めるんだから、それくらいわかるでしょ?」
私は別にモリガンを抱き込んで、こちらの都合の良いように動かしたいわけじゃない。
単に、私はこのモリガンというお疲れOLに、元気になって欲しいのだ。
昔の私とおんなじ、社畜の彼女に、せめて癒やされて職場に帰って貰いたいだけ。
「……わかりました。案内よろしくお願いします」
神となったことで手に入れた転移スキルを使う。
私とモリガンは、一瞬で、露天風呂へと移動した。
「さ、風呂入りましょ?」
私達は服を脱いで露天風呂へ向かう。
体を洗って、さっそく湯船へいき、二人並んで湯に浸かる……。
ああ、朝風呂、最高。
この寒い朝に、あったかいお湯に浸かるの、いいよね。
体の芯から温まっていく……。
「溶けてしまいそうです……」
「同感……」
私達はゆったり湯船に浸かる。
「こんなとこで油売ってていいの?」
「今日までの分の外出届は提出しておりますので」
「ふーん……そっか。もう今日戻らないといけないのね」
「はい……帰ったら最高神への報告書かかないと……」
「最高神?」
「我々をとりまとめる、神の長のことです」
そんな機密情報漏らしていいのだろうか。
「駄目ですね。でも、あなたなら、他言しないかなと」
「ずいぶんと信頼されたものね」
まあ言わないけど。めんどくさいし。
ふふ、とモリガンが笑う。
笑うと美人だ。
なのに……結婚できないなんて。
「何で結婚できないんでしょう……?」
「仕事が忙しすぎるせいじゃない?」
「ですよね……婚活する暇がないといいますか」
「ああ、いや、そういうことじゃあなくてさ」
モリガンが首をかしげる。
「私が言うのもあれだけど、あんたちょっと余裕なさ過ぎるよ」
「余裕が、ない……?」
「うん。仕事が忙しすぎるせいか、あんたの心に余裕がない。そのせいで、いつもピリピリしてる。それ男を遠ざけてるんじゃあない?」
逆に駄女神は、ちゃらんぽらんだけど、心の余裕が感じられる。
見た目もいいし、男にもてそうだ。
「た、確かにトゥアハーデは……男神からモテてます……」
「あ、そうなんだ。やっぱり」
「でも付き合ってすぐに別れます。なんででしょう?」
「あのだらしない性格じゃあね……」
アレの世話はそうとうダルそうだ。
見た目の良さで男がよってきても、中身が残念すぎて、去って行くんだろう。
「逆に、モリガンは見た目をどうにかすれば、すぐにモテるんじゃあない?」
「そ、そうですぅ?」
ちょっと声がうわずっていた。
「うん。そのためにはさ、もーちょっと、肩の力を抜いてみたらどう?」
と、FIREした元社畜が言ってみたり。
「力を抜く……どうやって……」
真面目か。
「こうしてのんびり風呂に浸かったり、あとは……そうね、マッサージとか」
「マッサージ……ですか?」
「うん。けっこーいいよ、マッサージ。やってく?」
私はモリガンの手を引いて、湯船から出る。
脱衣所に行き、髪を乾かして、服を着替える。
「な、なんですかこの……ラフな格好?」
茶色の半袖半ズボンに着替える。
フリーサイズで、肌触りのいい服だ。
脱衣所の側面の扉を開ける。
中には、マッサージ台が3つほど置かれた空間があった。
空調が効いて、しかも、アロマまで炊いてある。
「ボディケア用のマッサージルーム、作らせたのよ」
昨日、モリガンが来たときに、サツマくんとだんしゃくんに頼んだのだ。
「あんたが疲れてるとおもってね」
「わ、わたしのために……?」
「ま、私のためでもある。ということで、マッサージ眷属ちゃん、出ておいで」
マッサージ台の上に、ぴょこっ、と小さな眷属達が現れる。
「どんぐり……?」
どんぐり頭の眷属たち。
「マッサージ担当・どんぐり太郎、その兄弟、【どんブラザーズ】よ」
びしっ、とどんブラザーズたちがかっこいいポーズを取る。
リーダーのどんぐり太郎には、私が《眷属になろう》で名前を付けておいた。
結果、マッサージスキルを発現してる。
「さ、横になって」
こくんとうなずくと、モリガンがマッサージ台にうつ伏せに寝る。
私も同じポーズを取る。
どんぐり太郎は兄弟達と一緒に、私達の背中に乗っかる。
そして……。
ぐりっ。
「あ~~~~~~~~~~~~!」
モリガンが艶っぽい声を上げる。
「あっ、だ、だめっ。そこだめ!」
……なんか、妙にエロい声を上げるモリガン。
どんぐりたちは絶妙な力加減で、私達のこりをほぐしていく。
これは……たまらない……。
肩とか、腰とか、痛かった部分を的確に見抜き、どんぐりたちが刺激していく。
疲れがどんどんと取れていくのがわかる。こりがほぐれて気持ちいい……。
「かりゃだが……とけりゅぅう……ふぁあああ……」
モリガンが気持ちよさそうな声を上げる。
「こ、こんな気持ちいい思いをさせ、抱き込もうとしても、無駄ですからね!」
モリガンがキッと、と私をにらんでくる。
だがどんぐりがモリガンの背中をぐりっ、と指圧。
「はぁあああ~~~~~~~!! 気もちぃいい!!」
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