第12話 全知全能の神スキルをゲットしてた



「やっはろ~★ ミカりんー!」


 駄女神が飛び上がって、私に抱きついてきた。


 外見年齢は15歳くらい? 

 金髪に青い瞳の、まあ美少女だ。

 くりっとした目と、丸顔、そして身長が低い。

 

 一見するとただの高校生? 中学生くらいにも見えるけど、背中には真っ白で立派な翼が生えている。


「ミカりんはじめまして! 神ですー! って知ってるよね? ワタシとミカりんの仲だもんー!」


 駄女神は元気いっぱいに言う。

 とてもなれなれしい。本当に神なのだろうか?


「あ、今ワタシが本物の神かどうか疑ってるっしょー? わかっちゃうんだから!」


 心を読んでるところから、なるほど、やっぱり神みたい。


「初めまして、長野 美香です」


 直接顔を合わせるのは初めてなので、ちゃんと挨拶をしておく。


「礼儀正しい! ますます好感度上がっちゃうね!」


 テンションたっかいなぁ……。

 

「それで、何しに来たんですか、神様?」

「いつも通り駄女神でいいよ! あと敬語もいらないよ」


「……じゃあ、何しに来たの?」

「そりゃ、君にちゃんとお詫びしたかったからね」


 そういえば駄女神のせいで、私はブラック宮廷で三年間働かされたうえ、追放なんていう理不尽な目にあったんだった。

 

「ごめんね、ミカりん。辛い思いさせちゃって」


 さっきから一転して、駄女神は真面目に頭を下げてきた。

 ……ま、ここで怒鳴ったり、ネチネチ愚痴を言うのも、大人げない。


「いいよ、もう気にしてない。それに、ログハウスとか、いろいろもらったし」

「ミカりんやさしいい! ありがとう! だいすき!」


 駄女神が私の腰に抱きついてくるのだった。


 ややあって。

 私達はこたつを挟んで座っている。


「母フェンリルちゃんには、悪いことしちゃったなぁ。怯えさせちゃって」


 フェルマァは現在、子フェンリルたちとともに、外のテントにこもってしまっている。


 駄女神を見た瞬間にびびってしまったのだ。


「なんでフェルマァはあんたにそんな萎縮してたの?」

「ワタシは神ですよ? この世界のトップ! 序列で言えば聖女の上なんだから!」


 どうやらこの世界の序列は、

 神>聖女>魔物って感じらしい。なるほど……。


「あ、ミカりんは序列とか気にしないでいいよっ。君とは友達でいたいんだっ」


 とはいえ、私は女神とまだ会ってからそんなに日が経ってないし。

 友達って言われてもね。


「さて! じゃあお詫び&お土産の品を、披露しちゃいますー!」


 駄女神は何もない空間に手を突っ込む。

 こたつテーブルの上に、3つのガラス玉を置いた。


「なに、このガラス玉?」

「これは技能宝珠スキルオーブ!」


技能宝珠スキルオーブって?」

「スキルを相手に与える特別なアイテムだよ! 神の世界……天界にしかない貴重な品なんだ!」


 この世界に出回ってない、凄いレアなアイテムってことらしい。


「これをミカりんのために3つも! 持ってきたよ! 全部上げるっ」

「いいの?」


「もちろん! じゃ、それぞれ何のスキルが入ってるから説明するね~」


・アイテムボックス

→異空間に物体を収納する。収納量無制限。

・全魔法適正

→すべての魔法を習得可能となる。

・鑑定

→物体の情報を読みとることができる。


 どれもネット小説でよく見る便利スキルだ。ありがたく、頂戴しよう。


 私は宝玉を手に取る。

 瞬間、光となって私の中に入っていった。

 

 これで習得できたのだろう。


「鑑定がなくて、今まで不便だったでしょ~?」

「え、別に不便じゃなかったよ。インターネットがあったし」


「ん? どういうこと」


「インターネットスキルで、ステータス確認できたし」


「………………………………は?」


 駄女神がさっきまでのちゃらけた雰囲気から一転して、真面目な顔になる。


「【インターネット】スキルに、ステータスを閲覧できる機能なんてないよ」


「え、普通に調べたら出てきたけど。あんたが神パワーを付与して、インターネットスキルを進化させてくれてたんだと思ってたんだけど」


「いや……ワタシがしたのは、スマホに、神アプリをインストールしただけ」


「………………え、本当に?」

「………………うん、本当に」


 どうやら、想定外の事態が起きてるようだ。


「「か、【鑑定】!」」


 私と駄女神が同時に、鑑定スキルを使用する。


〜〜〜〜〜〜

長野 美香

【種族】半神

【レベル】9999

【HP】9999(×1000)

【MP】9999(×1000)

【攻撃】999(×1000)

【防御】999(×1000)

【知性】999(×1000)

【素早さ】999(×1000)

【加護】 下級神の加護

(神属性)(眷属生成)(異世界言語)(全ステータス×1000)

【スキル】 全知全能インターネット、鑑定、アイテムボックス、全魔法適正

~~~~~~


「な、なにこれっ!?」


 とんでもないステータスが出てきた。

 え、まず、私人間じゃないの?

 しかもレベル999?

 どこから突っ込んでいいのっ?


 一方駄女神がうつむいて黙りこくる。

 その額に脂汗が浮かんでいた。


「………………………………やっべ」


 小さい、本当に小さな声で、駄女神がつぶやいた。


「………………長野 美香さん。お願いが、あります」


 なんで急に敬語……?


 駄女神は翼を広げて、飛び上がる

 ズシャァアアアア! と地面につくと同時に土下座した。


「【全知全能】スキルについて、黙ってていただけないでしょうかぁあああ!」


 三つ指ついて、土下座までする駄女神。

 

「ぜ、全知全能スキルってそもそもなに?」

「【この世界の隠蔽されてないすべての情報を閲覧し、どんなことでも行うことのできる】という、神のスキルです」


「す、すべての情報を知り、どんなことでも行うことのできる……?」


 え……なにそれ……。


「本来地上にあってはいけないスキルです」


「え、でも……私持ってるんだけど」

「その、あの……こちらの想定外といいますか」


「想定外?」

「はい……。どうやら美香様は、神に匹敵する才能の器をお持ちのようです」


 駄女神はかしこまった様子で説明する。


「美香様という大きな器の中に、インターネットスキル、龍脈の魔力、そして……神アプリ。それらが合わさったことで、【全知全能インターネット】という、神のスキルが生成されたようです」


 つまり……私がインターネットを、全知全能という凄いスキルに、進化させていたと?


「あり得ない……。ただの人間が、神のスキルを生み出してしまうなんて……」

「えっと……これって何かまずいの?」


「はい、まずいっす。めちゃくちゃまずいっす。主に、自分が」

「え、駄女神が?」


「はい……。ワタシが力を与えたせいで、美香様は本来持ってはいけないはずの、神の力を持ってしまったわけですし」


 ……まあ、確かに、駄女神の与えた力がきっかけで覚醒したようなものだし。


「美香様! あなた様が全知全能をお持ちになれてることについては、黙っていただけないでしょうか!」

 

「誰に黙ってれば良いの?」

「上の神に……」


「神に上下なんてあるんだ……」

「はい……」


 どうやら駄女神、けっこー今ピンチみたいだ。

 私が黙っていれば、上に怒られずにすむ……か。


「それってインターネット使うなってこと?」

「いえ、使っても問題はないです。この世界、およびあなた様の管理はワタシの仕事の範疇ですので」


「じゃあ、私は上の神とやらに、このこと黙ってるだけで良い、スキルは今まで通り使って良いってこと?」

「おっしゃるとおりでございます」


 ……どうしよう。

 まあでも、小さな子をいじめるのって、趣味じゃないし。


 私はただ黙ってれば良いってだけっぽいから……。


「いいよ、黙っててあげる」


 ぱぁ……! と駄女神は笑顔になると……。


「あ゛り゛か゛と゛う゛こ゛さ゛い゛ま゛す゛ぅ゛~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


 駄女神が五体投地してきた。

 もう神の威厳はかけらも残っていなかった……。


「す、すごいです……聖女様」

「あ、フェルマァ」


 窓から、フェルマァと子フェンリルたちが、こちらを見ていた。

 フェルマァは目をキラキラさせている。


「人間でありながら、神を屈服させてしまわれるなんて! 前代未聞です!」

「屈服って……」


 駄女神は私の前で五体投地してる……。

 うん、端から見れば確かに神を屈服させてるように見える……。


「ありがとぉおっすぅううう!」

「はいはい……」


「お礼になんでもしてあげます! 何か欲しいものとか、して欲しいこととかりますかぁ!?」


 特にないが、何か言わないとこれ帰ってくれないな……。


「じゃあ、温泉」

「温泉ですか?」


「うん。露天風呂とかあれば……」


 パチンッ!

 ぶしゃあああああああああああああああああああ!


「せ、聖女様! 森の方から、お湯が噴き出しております!」

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