第11話 伝説級の魔道具をサクッと作成



 人化したフェルマァを、ログハウスの中に入れた。

 改めて、彼女をじっくり見やる。


 外見は二〇代前半くらい。

 ふわふわとした髪質の、長い銀髪。頭頂部からは、ピンとたった犬耳。


 胸はボン、腰はきゅっとくびれて、お尻はボン、というグラビアアイドルも裸足で逃げ出すほどの、ナイスバディ。


 尾てい骨のあたりからはもふもふの、銀色の犬しっぽが生えていた。


 人化したフェルマァは、現在は裸身に私の白いダウン1枚という格好だ。


 若い男が目の前にいたら、多分顔を真っ赤にして目を逸らしただろう。


 フェルマァの周りには、ふぇる太、ふぇる子がいる。

 ふんふんふん、と仕切りに匂いを嗅いでる。


 ちなみにふぇる美ちゃんは私の腕の中にすっぽり収まっている。


「こら! ふぇる太、ふぇる子! やめなさい!」


 ふぇる太たちがフェルマァのお乳に吸いつていた。だが……


「その姿でお乳ってでるの?」

「いえ、出ないみたいです」


「じゃあ、授乳のときにはフェンリル姿に戻らないといけないってこと?」

「はい。それに、この姿を維持するのには、かなり魔力を消費するようです」


「長々とその姿ではいられないってことね」

「そうですね。ただ、今すぐに魔力がきれるという感じではありません」


「OK。じゃあ、魔力が切れそうになったら言ってね」


 この状態で元にもどられたら、ログハウスが破壊されちゃうものね。


 ややあって(授乳タイム)。

 ふぇる太たちはお乳を吸ったあと、ぐっすり眠ってしまった。

 電気カーペットの上でうつ伏せで寝ている。


「とりあえずフェルマァ、お洋服着て」

「お望みとあらば」


 KAmizonで購入してあった、私の洋服を着せた。

 すぐに脱がせた。 

 サイズが全然合わなかったからだ。特に、胸の辺りが。


「新しい服買ってあげるよ」

「そんな! 恐れ多いです!」


「いいからいいから。ポイントいっぱいあるし。それに、このポイントはフェルマァが稼いだようなものだから。遠慮しないで」


「わかりました。聖女様がそうおっしゃるのでしたら」


 ということで、フェルマァの服をかうことにした。

 私はタブレットPCを手に取って、フェルマァの隣に座る。


「はいこれ、好きなの選んで」

「この薄い板はなんですか?」


「服のカタログ。えっと、本だよ、本」

「ほん!? こんな薄い板が、書物なのですか?」


「そうそう。ほら、こうやって表面を、普通に本をめくるみたいにスライドすると」

「!? ぺ、ページがめくれました! すごいです!」


 ほどなくして、フェルマァが好きな服を選び終える。

 

 あとはKAmizonで服を購入した、のだけど。


「フェルマァ、本当にその、メイド服でいいの?」


 彼女が選んだのは、メイド服だ。

 黒いスカート、ふりふりのエプロンにヘッドドレス。

 獣人メイドさん、という単語が私の脳裏をよぎっていった。


「はい。わたくしは神に仕える身ですので、侍女服がふさわしいかと思いまして」

「まあ、あなたがそれでいいなら、それでいいけど」


 日本風の部屋の中に、犬耳メイドさんがいる。

 ミスマッチ感が半端ない。まあ本人がこれがいいっていうのなら、否定はしない。


「ところで……フェルマァ。この状態でフェンリルに戻ったら、服ってどうなる?」

「それは……ビリビリになりますね」

「ですよねぇ」


 フェルマァができるのは人になること。

 服のサイズを変えることまではできない。


「変身の都度、聖女様から賜ったお洋服を破いてしまうのは、申し訳ないです」


 まあポイントに余裕はあるとはいえ、毎回破ける、買うを繰り返すのは非常に面倒くさい。


「困りました……どうしましょう」

「んー。そうだ。ちょっと、ネットで検索してみる」


 先ほど、フェルマァのステータスをネットで検索することができたからね。


「フェンリル 人化 服 破けない方法。で、検索っと」


 すると……


「出てきた」


 どうやら本当に、ネットの力は変化してるようだ。

 私のインターネットスキルは、異世界の知識・情報を、こうして閲覧できるどころか、検索までできるようになった。

 これって、結構チートではないだろうか?


「なるほど。《眷属になろう》で、どうにかできるみたい」


 フェルマァが首を傾げてる。

 服を眷属にした、だから何、ってね?


 私はアプリ《眷属になろう》を立ち上げる。

 フェルマァのメイド服を、パシャり。


 眷属にしたい相手の写真を撮り、取り込むことで、眷属にできる。

 ここまでは前回フェルマァに使った時と同じ。


 そして、ここからが、違う。

 画面には眷属に名前をつけろ、と表示されている。


 私はそこに、【形を自在に変えられるメイド服】と記入した。


「さ、フェルマァ。外に出ましょう」


 フェルマァが首を傾げながら後ろからついてくる。

 ログハウスの庭先にて。


「フェルマァ、フェンリル姿に戻って」

「はい!」


 かっ! とフェルマァの体が光り輝く。

 ぐんぐんと、体が大きくなっていく。


 ぼふんっ、と黒い煙とともに、白銀の獣が出現。

 その首は、大きめのリボンが巻き付かれていた。


「うん、問題ないみたいね」

『どういうことですか? メイド服は?』


「メイド服はその首に巻いてあるリボンに、形を変化させたの」

『!?!?』


「あれ、どうして驚いてるの?」

『聖女様が、とんでもない偉業を成し遂げたからです』

「とんでもない偉業……?」


 そんなこと、私しただろうか。


『魔力をおびてない物に、魔法やスキルなどの効果を付与することを、【魔化まか】と言います』

「まか、ね。それが?」


『魔化技術は古の時代に、失われてております』

「…………はい?」


 魔化技術が、失われてる……?


「え、嘘。でも、ほら魔道具ってあるじゃない? あれも魔化じゃないの?」


 魔道具とは魔法効果を発揮する、道具のことだ。

 作り方は知らないけど、道具に魔法を付与するなら、それもまた魔化ではないのだろうか。


『魔道具を作るためには、魔物から採取されれる魔石というものが必要となります』

「魔石?」


『はい。魔石に術式をきざみこみ、それを道具にはめむことで、魔道具が作られるのです』

「なるほど。魔道具作成には、魔石が絶対に必要と」


『はい。ですが、聖女様は今、魔石を使わず、服に形を変える魔法効果を付与しましたよね』

「そうね……って、まさか」


 フェルマァの言いたいことが理解できた。

 魔道具作成には魔石が絶対必要なのに、私はそれを使わなかった。


『現代の技術では、魔石を使わない純粋な魔化を行えるものは、おりません。ドワーフ国最高峰の職人であっても、です』


「そうなんだ……」

『しかも魔石を用いた魔化作業には、膨大な費用と時間がかかるとうかがっております』


 私がやったのって、適当に写メって、適当に名前をつけただけ。

 作業時間でいえば、10秒もかかっていない。


『すごいです! 聖女様!』


 どうやら無自覚に、すごいことを行なっていたようだ。

 なるほど、確かにこのやり方なら、私が眷属にして名前をつけるだけで、魔道具が簡単に、しかも費用ゼロで作れる。


 これを売ればボロ儲けできるわけ、か。

 まあ、そんなやり方、絶対にしないけども。


 だって、そうやって作って、流通に乗せたら、絶対にどうやって作ったんだって追求されるに決まってる。

 そんな面倒なことしたくない。


 それに、お金ならフェルマァが魔物を狩るだけで稼げる。

 魔道具を販売する必要なんてない。


「フェルマァ、このことについては、他言無用でお願い」

『かしこまりました! わたくしと聖女様の、秘密ということですねっ』


 ぶんぶん! とフェルマァが嬉しそうに尻尾を振る。

 

「そういうこと。じゃ、子フェンリルちゃんたちの元に戻ろっか」


 ぼんっ、とフェルマァが人間姿に戻る。

 ちゃんとメイド服を着ていた。


 しかし……インターネット、すごい。というか、恐ろしい。

 異世界の知識でさえも検索できるだなんて。

 世界征服の方法とかも、調べたら出てくるんじゃ……?


 ま、しないけども。

 私が望むのは平穏な暮らしだから。


 しかし、インターネットがあれば、ますます駄女神の必要が薄れるな。

 今までは、わからないことを、駄女神にラインでいちいち聞いていた。


 でもすぐに返答がこなくて、ストレスに感じることが多々あった。

 今はネットでなんでも検索できる。


 駄女神に聞かずとも、わからないことをなんでも調べられるからね。

 ウザ絡みしてくる駄女神を相手するのもめんどくさいし、もう連絡しなくても……


「おっかえりー! ミカりん!」


 リビングに、なんか、見知らぬ女がいた。

 金髪。白い服。そして、背中には白い翼が生えていた。


 ……そのみため、そして私をミカりんと呼ぶ、そいつは、まさか……


「駄女神……?」

「YES! あなたの、駄女神ちゃんです★」

「なんであんたがここに……?」

「遊びにきたヨ! お土産持って!」


 おっふ……

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