第9話 魔物を売って大金ゲット



 焼き肉をおいしく食べた。

 朝ご飯の片付け(洗い物含む)は、トマトくんたち眷属がすべてやってくれた。


 その後、ログハウスの庭先にて。


「じゃあ、さっそく魔物をポイントに変えましょう」


 目の前には魔物の死骸が、でん、と山の如く置かれている。


「と言っても、どうやってポイントに変えたらいいのかわからないんだけども」


 ピコン♪


【わーたーしーがー、来た……!!】


 駄女神からのラインが来た。

 どうやら神の仕事が終わって暇になったらしい。


【ミカりん、焼き肉たべてたの? いーなー! なんで呼んでくれなかったの~? ワタシとミカりんの仲なのにっ!】


 仲もなにも、まだ会って数日しか経ってないけども。

 そもそも、直接会ったこともないし。


 顔も見たこともない相手と友達になるのは、ちょっとね。


【むむむ……なるほどね】


 なんだろう、なるほどねって……。


【で、魔物をKPに変換するのね。なら、《める神》アプリを起動しよう!】

「める神……」


 スマホの電源を入れてホーム画面を見てみる。

 める神、というアプリが入っていた。


 普通にメル●リと同じようなデザインだった。

 そろそろ怒られないだろうか……?


【最高位の存在たる神を叱りつけるものが、いったいこの世界のどこにいるというのだね! わっはっはーん!】


 最高位の……存在……?

 その割にはちょっと……まあいいや。


「める神アプリを起動したよ」

【じゃあまず、ポイントに変換するものを、写真で取って】


「OK。フェルマァ、てきとーに魔物の死骸1匹を、開けた場所に持ってきてくれない?」


 フェルマァがうなずく。

 私達はログハウスから少し離れた場所へと移動。


『こちらでよろしいでしょうか』


 フェルマァが持ってきたのは巨大な虎だった。

 赤い毛皮の虎。


 どう見ても普通の動物じゃない。魔物だ。


「まずは写真を撮る……」


 パシャッ。

 シュンッ……!


「わっ。虎の死骸が、一瞬で消えちゃった」


 瞬きした次の瞬間には、魔物が跡形も無く消えたのだ。


【アプリ内に金額が表示されているでしょ?】


~~~~~~

紅虎ブラッディ・タイガーの死骸(新品)

・1,000,000KP

~~~~~~


「…………ひゃ、ひゃくまんKP……?」


 何かの見間違い?

 いや、何度見ても100万KPになってる。


 神から最初にもらったポイントが5万KPだった。

 あの死骸一つで、その二〇倍のポイントが入るなんて……。


【10万KPで取引する場合は、《取引》ボタンを教えてね】

「え、ああ、うん……」


 とりあえず、取引してみよう。

 ポチッ。


 ちりーん♪


《神ポイントがチャージされました》

《0.5万KP→100.5万KP》


「本当にあれ1匹が100万KPもするのね……」


 私はフェルマァが持ってきた死骸の山を見やる。

 1匹2匹なんてレベルじゃあない。


 10……いや、100は居る。

 1体が100万だとすると……。


「全部で、い、一億KP……!?」


 なんか一瞬で大金持ちになってない、私……?

 何もしてないのに……。


「いいのかな、こんな楽にお金稼いじゃって……」

【別にいいんじゃあないの? フェンリルを頑張って助けた恩が、巡り巡ってこうして、ポイントとして帰ってきたんだから】


 確かにまあ……。

 そうか、そうだよね。


 このKPは、ありがたく受け取っておこう。


「ありがとう、フェルマァ。あなたのおかげでいい生活がおくれそうだわ」

『お役に立てて光栄でございます! 聖女様!』


 ぶんぶんぶん! とフェルマァが尻尾を振って喜んでくれてる。

 

「じゃ、残りも全部める神でポイントに変換しますか。でも……」


 私は目の前の、魔物の死骸(推定100匹)を見上げる。


「これ、いちいち取りこまないといけないの……めんどくさいな」


 と、そのときである。

 チョンチョン。


「ん? あ、トマトくん」


 私の眷属、トマトくんが、いつの間にか肩の上に乗っかっていたのだ。


「どうしたの?」

「…………」ぐっ。


 トマトくんが親指で自分のことをさす。


「まさか……トマトくん。める神への出品作業、やってくれるの?」

「…………」こくこくっ。


「ありがとうっ。助かるわ」


 正直いちいち写真撮って出品して、取引ボタンを押して……なんて、めんどくさかった。


 眷属たちが代わりにやってくれるなら大助かりである。


「あ、でもスマホ1台しかない……」


 まあトマト君にならスマホ貸しても良いけど、あんまり自分のスマホって、他人に触らせたくない。


【買ったら? スマホ】

「スマホなんて売ってるの? Amaz●nに?」


【Amaz●nはどうかしらないけど、KAmizonなら何でも売ってるよ!】


 私はアプリを起動する。


~~~~~~

・異世界スマホ

30000KP

~~~~~~


 本当に売っていた。

 しかも3万ポイント。結構する。


 まあでも、今の私は100万ポイント持っているし、別にいいか。


「じゃあ1台購入」


 ボンッ!

 目の前に段ボールが出現する。

 ふぇる太ちゃんたちが、興味津々といったかんじで、段ボールの匂いを嗅いでいた。


 かじかじ、とふぇる太とふぇる子が段ボールをかんでる。


『ふぇる太、ふぇる子! 聖女様の邪魔をしてはいけません!』


 かぷっ、とフェルマァがふぇる太ふぇる子をつまみ上げて、離れる。

 一方ふぇる美ちゃんは私のそばでじっとしていた。


 やんちゃな二人と違って、この子はとても大人しい。


 段ボールを開封。

 仲には新品のスマホが入っていた。


 電源を入れると、普通に起動できた。

 KAmizonをはじめとした神アプリがすでにダウンロードされている。


「買ったばっかりなのに、もうアプリ入ってるんだけど……どうして?」

【そういう仕様】


 仕様じゃしょうがないね……。

 深く考えないでおこう。ファンタジー世界だし。駄女神の仕事だし。


「じゃあ、トマトくん。これ使って、フェルマァが狩ってきた魔物を全部、める神に出品しておいて」

「…………」びしっ!


 お任せあれ、とばかりに、トマトくんが敬礼する。

 他の眷属達がわらわらと現れて、魔物の死骸を山から下ろす。


 トマト君が高い位置から(いつの間にか移動していた)写真を撮り、める神に出品してる。


《神ポイントがチャージされました》


 私のスマホを見ると、神ポイントがきちんとチャージされていた。


「もう一台で出品しても、私のスマホに神ポイントがチャージされるのって、おかしくない? どういう理屈なの?」

【そういう仕様】


 あ、そう……。


 眷属達はサボること無く、淡々と、魔物の死骸をめる神に出品していく。


《神ポイントがチャージされました》

《神ポイントがチャージされました》

《神ポイントがチャージされました》


 ポイントがものすごい早さでたまっていく。

 やはり、魔物1匹あたり、100万KP前後入る。


「魔物ってこんなに高価で取引されるのね……」

【まあ、ただの魔物じゃ、ここまでの値段はつかないよん】


 駄女神が気になることを言う。


「どういうこと?」

【魔物の値段は、レベルが高いほど高くなるんだ】


「ってことは……フェルマァが獲ってきた魔物って、全部、高レベルモンスターってこと?」

【そういうこと】


《神ポイントがチャージされました》

《神ポイントがチャージされました》

《神ポイントがチャージされました》


 ものすごい勢いで持ちポイントが増えていく。

 なんでこんなにたくさん、高レベルモンスターがいるんだろう?


「駄女神? おおい、駄女神?」


 ラインが既読にならない。

 また仕事だろうか?


 まあ、後のことはトマト君に任せて、私は、生活に必要なものをKAmizonで購入するとしよう。

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