第6話 ネット通販で現実の物を買う
私の住んでいるログハウスに、手負いのフェンリルがやってきた。
ログハウス周辺は、龍脈地といって、特別な聖なる魔力が発生してる。
その魔力をおかげで、フェンリルの怪我は治ったのだった。
「まさか……フェンリルが妊娠してたなんてね……」
ログハウスの庭先。
母フェンリルが丸まって座っている。
そして……。
「みゅう……」「みぅ……」「…………」
「三匹も子犬産んでる……。子フェンリル、か……?」
か、可愛い……。
赤ちゃんフェンリルが、地面に寝かされている。
目が開いてない、毛は濡れている。みーみー鳴いてて、ほ、本当に可愛いな……。
母フェンリルは一生懸命、子供らの毛を舐めてあげていた。
母親がでかすぎて、相対的に子フェンリルたちがものすっごく小さく見えるな……。
「何はともあれ、無事出産できて良かったね」
母フェンリルが私を見て、ぺこっ、と頭を下げる。
私の言葉理解できるんだ。
【フェンリルは神獣、知性のある魔物だからねん】
スマホに神……いや、駄女神からのラインが来る。
仕事どうしたのだろう?
【今ちょーどおひまなのさ★】
さいですか……。
【母フェンリルたんは『どうもありがとうございます、聖女さま』だってさ】
駄女神は魔物の言葉がわかるらしい。
しかし……聖女?
「なんで私が聖女だって知ってるの?」
【『この地に聖なる地に入れるのは、選ばれし聖なる存在のみだからです』だって】
そういうもんなんだ……。
【もー、ミカりんってばこの世界のことについて、無知なんだからぁ★ 異世界に3年居たんじゃあなかったの?】
むかつくなぁ、この駄女神。
しかもミカりんて、馴れ馴れしい。
「魔物との戦闘はしたことなかったし、ブラック宮廷でのブラック仕事のせいで、異世界ライフを全く満喫できなかったのよ、誰かさんのせいでね」
皮肉たっぷりに言ってやった。
そもそもこいつの手違いで、あのクソみたいな王太子とこごみのいる時代に転移させられたんだし。
【『聖女様、ご相談がございます』だってさ。なんだろうね!】
都合の悪いことはスルーするつもりだなぁこいつ……。
まあいいけど。もうすんだことだし。
「相談って?」
【『子供らが大きくなるまで、この聖なる地に我らを置いてくださいませんか?』だって】
子フェンリルらはまだ赤ちゃん。そして母フェンリルは産後直後だ。
龍脈地の外は吹雪舞い散る極寒の地。
そんな中、弱っている母子を放り出すわけにはいかないよね。
可哀想すぎる。
「OKよ」
【『感謝いたします、聖女様! 本当に……ありがとうございます……』】
ぽろぽろと母フェンリルが涙を流してる。
やっぱり悪い魔物じゃなかったみたいだ。
「どういたしまして。っと、は、はくしゅんっ!」
私は思わずくしゃみをしてしまう。
そう、ここは吹雪が入ってこないけど、普通に寒いのだ。
母フェンリル、そして子フェンリルたちもちょっとふるえてる。
「毛布とかないか見てくるから、ちょっと待ってて」
【ないよ】
ないんかい……。
「というか、日用品なさすぎでしょ、このログハウス」
【ごめんごめん。必要な分は、好きなもの買ってもらえば良いかなって思ってたんだ】
「はぁ? 買うって?」
【そこで、ようやく! ミカりんのチートスキル、インターネットの出番ですっ!】
インターネットの出番……?
「私のスキル、インターネットって、異世界でネット閲覧できるってだけのスキルだけど?」
【神パワーが加わったことで、スキルが超進化してるんだけど、あれぇ、教えてなかったっけぇ?】
普通に初耳なんだけど……。
「超進化って……スキルがアップグレードされてるってこと?」
【そのとおり! さっそくスマホをチェックチェック~♪】
私は言われるがままにスマホを開く。
ごく一般的なスマホだし、現実で使っていたときと同じアプリが……。
あれ?
「なんか、見慣れないアプリが入ってるんだけど……」
【ワタシが新しいアプリをインストールしておきました!】
「何勝手に人のスマホいじってるの……?」
普通に嫌すぎた……。
プライバシー侵害だ。
【ままま、細かいことは気にしなーい★ てゆーかぁ、ミカりんと五感を共有してるんだし、プライバシーなんてあってないようなもんだZE★】
……こいつが
【で、説明に戻るね。今までは君のスマホを普通に異世界でも使えるってだけだった。けど、新しくインストールされた神のアプリ……神アプリは、異世界の事象にも干渉できる超性能を持つのさ!】
異世界の事象に、干渉……?
【とりあえず、その《KAmizon》ってアプリをタップしてごらん?】
「かみぞん……?」
なんだそのAmaz●nのパチモンみたいなアプリは……?
まあ、タップしてみる。
「普通にAmaz●nの商品ページじゃあないの?」
【ちがいますぅ、KAmizonですぅ。確かに検索方法とか、品揃えとか基本Amaz●nぱくってますけどぉ】
パクリじゃんよ……。
【神アプリその1,《KAmizon》。ポイントを消費して、現実のアイテムをネット通販で購入可能!】
「!? ネット通販……可能? ってことは、現実の食べ物とか、衣類とか、買うことができるの? この異世界で!?」
【そのとおり!】
……インターネットを見るだけのスキルが、なんか一気にチート化してないだろうか……?
まあ、でも、いいや。
Amaz●n……じゃなかった、KAmizonで日本のものが帰るんだから。
こっちの生活が一気に便利になるわけだし。
「さっきポイントって言ってたけど、それってなに?」
【神アプリを使うために必要なポイントさ。KAmizonアプリだと、購入に必要なポイント……ま、電子マネー的な?】
なるほど、現金で買い物できないのか……。
まあ、財布ないし、地球の口座が生きてるかも不明だったし。
現金じゃないと購入不可みたいな仕様じゃなくってよかったけど……。
【お詫びとして、50000神ポイントをチャージしておいたよ!】
「神ポイント……」
【神ポイントを稼ぐ方法はいろいろあるけど、手っ取り早いのは異世界の素材との交換かな】
「異世界の素材との交換?」
【魔物の牙とか爪とか】
「なるほどね……」
ポイントを稼ぐためには、魔物討伐がいるってこと?
ええ、めんどくさいな……。
【ログハウスのなかには伝説の武器や防具があるから、有効活用してちょんまげ】
「はいはい……」
とりあえず今は5万ポイント。
それで必要なものを買うか。
KAmizonでダウンジャケットを購入する。
~~~~~~
・ダウンジャケット(神仕様)
5000KP
~~~~~~
KPってのが、神ポイントのことか。
1KPいくらくらいなんだろう……謎……。
5万のうちの5千だから、とりあえず買っておこう。寒いし。
操作方法もAmaz●nそのものだった。
もうこれAmaz●nは神を訴えていいと思う。
「購入したけど、品物はどうやって届くの……?」
ぼんっ!
目の前にKAmizonの段ボールが出現した。うわーファンタジー。
段ボールを開けると、中には真白なダウンジャケットが入っていた。
とりあえず着る……寒いし……。
「おおお! あったか! けっこーあったかいなこれ!」
というか、全然寒さを感じなくなった!
【神仕様のダウンジャケットだからね。神パワーが付与されてるので、寒さをバッチリ防ぎます】
なるほど、取り寄せるのは普通の品物じゃなくて、そこに神パワーがプラスされてるのか……。
「ええと、じゃあ次は母フェンリルたちの入る小屋とか? 小屋はないから……テントか。結構でっかいテントあるし、これを買うと。あと石油ストーブも買ってっと」
ぼぼぼん! とKAmizonから、テントとストーブ、そして燃料が送られてきた。
よし、これでなんとか寒さをしのげそうだ……。
「でも、テントってどうやって組み立てるんだ……?」
キャンプなんてやったことないので、わからなんだが……。
と、困っていたそのときだった。
ちょんちょん。
「? え、なに?」
誰かが私の頬を突いていたのだ。
肩の方を見ると……。
「…………」
「と、トマト!?」
私の肩の上に、なんかトマトが乗っていた。
正確に言うと……。
トマトの下に、ちっちゃい手足と胴体が生えているのだ。
手足といっても、肌色をしていない。なんか白い。
トマト頭のお人形さん、みたいな感じだ。
「え、え、なにこれ!?」
【あー、これ眷属】
「けんぞく!?」
【そ。君が神パワーで生み出した、召使い】
はいぃいい? 私が神パワーで、生み出した!?
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