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その次の週末、今週の労をねぎらうために、渚は再び居酒屋にやって来た。東京にいた頃と全く違うが、すっかり慣れた。やはり東京よりも、ここがいい。両親がいて、幼馴染がいて。どこかアットホームな空間だ。
「今週も疲れたなー」
渚はカウンター席に座った。カウンター席には何人かの人がいた。彼らもまた、今週1週間の仕事を終えたと思われる。
と、そこに店員がやって来た。飲み物は何にするのか聞くようだ。
「いらっしゃいませ、お飲み物はどうしますか?」
「生中で」
渚は今回も生中を注文した。
「かしこまりました」
店員は厨房に向かった。
「うーん・・・」
渚は考えていた。あの暴れている男が気になる。どうにかして、元の姿に戻れないだろうか? 元の姿に戻って、一緒に付き合いたいと思っているのに。徐々に渚は、この人が好きになってきて、結婚したいと思っていた。だが、そのチャンスが見つからない。
と、そこに先日いた男がやって来た。男は今日も不機嫌で怖い表情だ。かなり近寄りがたい。
「あれっ、この人・・・」
渚は驚いた。まさか、あの男が今日も来ているとは。
「今日も疲れたなー」
男は渚の隣のカウンター席に座った。渚はびくびくしていた。だけど、とても気になる。
「いらっしゃいませ」
「生中でね」
男も生中をオーダーした。店員もおびえている。
「かしこまりました」
男はイライラしていた。いつもどうだが、どうしてこんなにイライラしているんだろう。もっと明るく生きてほしいのに。
と、店員は2本の生中をもってやって来た。どうやら2人の生中を持ってきたようだ。
「お待たせしました、生です」
渚は渡されると、すぐに飲んだ。男は渚以上に飲むと、より一層怖い表情になった。ただでさえ怖いのに。
「はぁ・・・」
「生中です」
渚は飲み始めた。すると、男はテーブルを叩いた。何かにキレているようだ。何も嫌な事は怒っていないのに、どうしてだろう。
「くっそー!」
「どうしました?」
渚は話しかけた。男は驚いた。話しかけられると思っていなかった。もう誰とも付き合おうとしない俺なのに、どうして話しかけるんだろう。
「何でもないから、ほっといてよ!」
男は渚は投げ飛ばした。渚はその男をじっと見ている。
「キャッ!」
「話しかけるな! 俺は誰ともかかわりたくないんだ!」
男はとても怒っている。渚は呆然とした表情で男を見ている。こんなに怖いとは。
「やめて!」
と、そこにテーブル席にいた客がやってきて、渚を助けた。誰かが助けると思っていなかった。その男たちは、あの男の事を知っているんだろうか?
「大丈夫ですか?」
「何とか」
渚はまだびくびくしている。こんなにも怖いとは。好きなのに伝わらない。かかわりを持ちたくないと思っている。どうしてだろう。
「まぁ、飲んで落ち着いて」
「うん」
渚は生中を飲み干した。渚は男を恐れて、彼らの座っているカウンター席に移動した。
「そっか・・・」
男たちは驚いた。まさか、あの男と付き合おうとしているとは。これは面白いな。
「この人、知ってるんですか?」
「ああ。中村昭二さんっていう、中学校の教員だ。怖いんだよ」
情報によると、その男は中村昭二という中学校の教員で、中学校内ではかなり怖いと言われている。生徒だけでなく、他の先生も近寄りがたいという。だが、校長や教頭は将来が有望な昭二に期待していた。
「そうなんだ」
「いじめで、もう誰も信じられなくなったらしいよ」
そんな過去があったとは。だから誰ともかかわりを持ちたくないと思っているんだな。どうすれば元の心優しい男になってくれるんだろう。全くわからない。
「そうなんだ」
「どうすりゃ優しくなれるのかなと思って」
渚は絶望していた。もう一生このままではないか? どうすれば付き合えるんだろう。全くわからない。
「あなたたちも困ってるんですね」
その話を聞いて、渚は思った。この人も元に戻ってくれなくて悩んでいる。この人たちも何とかしたいな。
「ああ」
「実は、俺も原因の1人なんだけどね」
渚は驚いた。まさか、この男たちは中学校時代のいじめグループだったとは。だから許せないと思っているんだな。早く仲直りできる日を楽しみにしてよう。そうすれば、元の昭二になってくれるかもしれないから。
「そうなの?」
「ああ。中学校の頃、いじめてしまったんだ。反省してるんだけど、いまだに仲直りできないんだよ」
彼らは反省しいてる。だが、昭二が許してくれない。きっとこれは自分が背負った重荷だと思う。これまでの人生、昭二をいじめたことでボロボロになってしまった。きっとそれは昭二をいじめた罰なんだ。
「そんな事があったんだ・・・」
「うん」
渚は思った。早く元の昭二に戻ってほしいな付き合うためには元の優しい昭二に戻るのが一番だろ。
「早く元通りになってほしいね」
「うん」
「まぁ、飲もうよ」
「うん」
渚は再び生中を口にした。昭二はすでに生中を飲み干して、焼酎のロックを飲んでいた。渚は心配そうに、昭二の様子を見ている。この子を何とかしないと。明日、この子の家に行って、なんとかしないと。
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