第11話

客なんて毎日沢山来ているし、その全ての人達を憶えるとかまず無理だ


だが、彼の事は


彼の事だけは、一瞬で憶えた


制服ではなくもし私服だったら、きっとボーイッシュな女の子と見間違えていただろう


その彼が頬を朱に染めていたのはきっと外が暑かったせいだろう


彼は棒アイスを出し、財布を鞄から取り出した


それを見ていると、彼の胸に目がいった


彼の胸ポケットの所に名前が刺繍されていた


そこには“藤”と書かれていた


その名前が、やけに目についた

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