第12話

「商品が一点で、合計69円となります」




いつも通り事務的に手が動いていたので、言葉を付け足す


彼は財布から100円玉を取り出してこちらへ出すのでそのまま手で受け取ると、少しだけ彼の手と触れ合った


たった それだけの事だったが、ドクンッと心臓が跳ねたのが分かった




「…100円お預かり致します


……31円のお返しです


ありがとうございました!」




意識して笑顔を作る


彼は何も言わず、ペコリと頭を下げると店を出て行った


ぼんやりと店を出て行った彼を見ていたら直ぐに新しい客が来て、またレジ打ちをする


一は頭の片隅で思った


彼はまた来るだろうか? と……

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