第18話

もし、フェンリルが表情の分かりやすい動物だったなら、頬が赤くなっていたのではないかと思った




「………」




何も応えれずにいると、フェンリルは慌てて言い繕う




「あ、いや、雄真が嫌なら無理にとは言わん


ただ、お主が心配だったのだ……」




最後は耳と尻尾を下げて、不安げに言葉を紡いだフェンリル


心配してもらえていた事に、雄真は嬉しくなる




「ありがとう、ルー


……じゃぁ、お言葉に甘えようかな…」




そう言うと、フェンリルの耳がピンっと立ち、尻尾がブンブンと左右に激しく振られる


その、犬っぽい仕草につい笑いを誘われる


ふふっ と小さく笑うと、フェンリルは首を傾げる




「…何が面白いのだ…?」




純粋な疑問を投げつけられ、雄真は小さく笑いつつもそれに応える




「ふふっ


だって、ルーがワンコさんみたいで可愛かったんだもん…」




フェンリルは、雄真のその喩えに少し不機嫌になる




「……我は、犬などではない!


フェンリルだ!!」


「うん、分かってる


分かってるよ


ただ、ルーが可愛いって言いたかったんだよ」





素直な気持ちを言葉にして言うと、フェンリルは少し不服そうだった




「我は神狼だ


可愛くなどないのだ…」



そっぽを向いてそう言うフェンリルが雄真にとってとても可愛かったのだが、これは言わなかった




「ルーはどうやって寝るの…?」


「…うむ……


我の塒へ行こう


そちらの方が良いだろう


ついて来てはくれぬか?」


「うん


案内よろしくね」


「こっちだ」




そう言うと、フェンリルは背を向けて歩き出した


雄真はそれについて行く


獣道を進み、歩く事約20分ほどでフェンリルの歩みが止まった


どうやら彼の塒についた様だ

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