第2話

黒猫を抱きかかえた僕は、目的地に着いた


あの、今朝夢にも見た、タイムカプセルを埋めた所だ


ここにあの日、僕達は手紙を缶に入れ、埋めたんだ


間違い、ない


僕は黒猫をそっと下ろして、バックの中のスコップを取り出す


そしてスコップを勢い良くタイムカプセルを埋めた場所へと突き立てる


硬い


もう、10年以上前に掘って埋めたのだ


そこまで深く掘ってなかったはずだから、僕1人で掘り出せると思うのだが…


僕は一心にそこを掘った


場所は間違えていないはず


だから、そろそろあるはずなんだ…



ガチッ



あった……


缶をあまり傷付けないように、周りから掘り起こしていく


もう少しで、君の言葉が読める


そう思うと気が逸り、力も篭る


幼い頃の言葉だけど


もう居ない君を少しでも感じたくて


僕は少しでも君に触れたくて


逸る気持ちを抑えて丁寧に取り出した缶は、やはり君と僕が埋めたタイムカプセルだった


緊張と小さな感動で震える手で缶に着いた泥を払う


あぁ、懐かしい


やっぱり、君との思い出は僕の中で1番輝いている


君もここに居たら本当に良かったのに…


いや、もう今更たらればを言っても仕方ない……


一息ついて、僕は缶の蓋を開ける


そこには2通の封筒が入っている


幼い頃の僕の字と、愛おしい君の字


よーちゃんへと、まだ幼い頃の拙い字で書かれたそれに、つい瞳が潤んでしまう


手に着いた泥を持ってきていたタオルで拭って、君が書いた手紙を取る


ここに、この中に君の言葉がある


そう思うだけで、涙が溢れ出そうになる


やっと愛しい君に触れられるのだ


震える手で封筒を開ける


折りたたまれた手紙をゆっくり開き、読む




『18さいになったよーちゃんへ


よーちゃん、だいすきです!


だから、ぼくとずーっといっしょにいてください!


けっこんしてください!


ふうとうのなかのゆびわ、よーちゃんのひだりのくすりゆびにぴったりだったらいいな


けいすけより』




ぽたぽたと涙が溢れ出て、止まらない


僕と君は、昔から両想いだったのか……


今更知った事実に、僕の涙は更に止まらなくなる




「ふっ……ぅ、ぼくも…


僕も、けーちゃんのことが大好きだよ…


もっと早く、この想いを伝えとけば……!」




涙が止まらず1人でボロボロ泣いていると、ザラリとした感触が頬を撫でた


一緒に居た黒猫が僕の頬を舐めたのだ



にゃー



黒猫は鳴いてからまた僕の頬をペロペロと舐める


まるで、黒猫が僕の涙を拭ってくれてるみたいだと、そんなことあるはずないのにそんな風に思えて、つい笑った


にゃー


黒猫はもう1度鳴くと、尻尾でけーちゃんの書いた封筒をペシペシ叩く


そういえば、手紙に封筒の中の指輪と書いてあった


そのことを思い出した僕は慌てて封筒を逆さまにすると、そこからコロリと小さな指輪が2つ出てきた

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