第3話

「あ………


ホントに、指輪…」




転がり落ちた指輪を手に取る


2つのうち1つを自分の左の薬指に嵌めていくと、途中で引っかかってしまった


もう1つの指輪でも試してみたが、やはりサイズが合わないようで、どうしても指の途中で引っかかってしまう


だが、それでも僕はとてつもなく嬉しかった


君が僕のことを好きでいてくれて


君が僕のことをこんなにも想っていてくれて


だって、この指輪は紙粘土で作られたチャチな物だけど、きっと彼は幼いながらに僕のことを一生懸命想いながら作ってくれたに違いないのだから


あぁ、もしかしたら君が18歳に拘っていたのは、18歳から結婚出来る年齢だからだろうか?


嗚呼、あぁ、君のことがとてつもなく愛おしい


もう、君に伝える術はないのに


君に会いたい


会って伝えたい


君が好きだと


愛していると


伝えたいのに、君はここに居ない


それが、苦しい



にゃー



黒猫が僕の膝の上に乗り、身体を擦り付ける


まるで、黒猫が僕のことを慰めてくれているみたいだ


僕はぎゅっと黒猫を抱き、君への想いを吐露していく




「僕もね…


僕もけーちゃんのこと、大好きなんだ


ここで一緒にタイムカプセル掘り起こしたかった


それで、両想いだってこと分かってたら、僕ら幸せになれたんじゃないかなって……」




ボロボロと流れる涙に言葉が紡げなくなる


僕達は男同士で、世間的によろしくないと知ってるけど、それでもけーちゃんのことが好きで

けーちゃんも僕のことが好きだったのなら、付き合えて、日本では結婚出来ないけど同棲だって出来たはずなのに……


けーちゃんに会いたい気持ちと、好きだという想いと、色んな感情がごちゃ混ぜになって、なかなか泣き止むことが出来なかった


その間、黒猫はずっと僕に抱かれててくれた


優しい子だ




「ねぇ、にゃんこ


僕がけーちゃんに書いた手紙、見てよ


お前に見せたら、きっとけーちゃんにも届くんじゃないかなんて、思うんだ」




おかしな考えだと思うが、僕はそうしたかった


けーちゃんへと書かれた封筒を取り上げ、中身を出す


四つ折りにしていた手紙を開き、黒猫に見せる


何バカなことしてんだなんて思うけど、これが正しいのだと、何故か確信していた


何故かわからないけど




「ねぇ、にゃんこ


お前、うちに来るか?」




首輪をしていないからもしかしてと思いつつ聞いてみる


すると、その返事かわからないけど、黒猫はすぐに鳴き、更に僕の方へと身体を押し付けてくる




「…じゃぁ、今日からお前はうちの子だ


名前どーしよーか?」




黒猫を抱きしめ、尋ねてみる


もちろん、応えなんて得られるわけがないのだが


手紙を封筒に仕舞い、タイムカプセルの缶に戻して缶のまわりを拭きあげる


綺麗になったタイムカプセルをバックに仕舞い、黒猫を抱いて僕は帰宅する




「…決めた


にゃんこ、君の名はケイだ


クロのK、なんてね…」

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