タイムカプセル

第1話

幼い頃の君と僕


小さな約束をした




「よーちゃん!


よーちゃんはぼくにおてがみ書いて!


ぼくはよーちゃんにおてがみ書くから!


そんでね!


えーっと、18さい!


18さいになったらおてがみとりだして、よみあいっこするの!


やくそくだよ!」




君の差し出す小指に自分の小指を絡める




「わかった、けーちゃん


ぼくもけーちゃんにおてがみ書くね」




それから指切りした僕達は拙い字でそれぞれの思いを書き綴り、手紙にして缶に入れると、地面へと埋める


あぁ、この時僕は君への想いを書いていたなぁ


懐かしい


泥がほっぺに着いたまま、君はイタズラな顔で笑った





――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――


――――――――――





「ん……、ぁ」




懐かしい、夢を見た


幼かった君と僕がタイムカプセルを埋めたときのことだ


君よりも僕の誕生日が遅いから、僕の18歳の誕生日に取り出そうと約束したんだったかな


今日がその、約束の日だからだろうか?


君が亡くなってからなるべく思い出さないようにしていたのに、こんな夢を見るなんて…


君はもう居ないけど、僕はちゃんと取り出しに行くよ



僕はパジャマから着替えて歯を磨き、顔を洗ってコートを着てマフラーも巻いた重装備で外へ出る


今日は2月22日、僕の誕生日だ


あのタイムカプセルを埋めた場所は、未だにはっきり覚えている


君が居なくならなければ、一緒に取り出しに行っていたのかもしれない


もし、なんて考えても意味はないのだが


電車に揺られて、地元へ帰る


君との約束の場所へ


君の言葉を読むために


30分程で地元に着き、電車を降りる


地元に戻ってくるのも久しぶりだ


懐かしい景色を横目に、僕は目的地へずんずんと進む


君との思い出の場所へ


もうすぐで目的地へ着く、そんなときだった


毛並みがいやに綺麗な黒猫が居た




「…け、ぃちゃ……?」




大きな茶色い目が、何故か君と被って見えた


まさか、そんなはずないのに


君のことを考えすぎていたのかもしれない



にゃー



黒猫が鳴いた


何故か、その鳴き声が僕を呼んでる気がした


まるで、君に呼ばれてるみたいで、僕はつい、黒猫の方へと歩を向けていた


ゆっくり近付き、そっと手を伸ばし触れる


見た目通り艶やかな毛並みは、触り心地が良かった




「…これからね、タイムカプセルを取り出しに行くんだ


お前も一緒に来るかい?」




にゃー


まるで、僕の言葉に返事しているのかと思うほど、タイミング良く鳴く黒猫


両手を伸ばし、黒猫を胸に抱く


黒猫は暴れることなく大人しく抱かれてくれていたので、僕は立ち上がり目的地へと連れて行く

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