デジャブ! どこかであったぞ、この展開!
崔 梨遙(再)
第1話
三連休の初日、僕は服を買いたくて繁華街へ。これも三十代の前半だったと思います。もう十年以上も前の話ですね。
「ちょっとすみません」
いきなり、声をかけられた。振り向くと、30代くらいの女性とその息子。息子は小学校の3~4年生くらいか? 子供の年齢はよくわからない。
「なんでしょう?」
「串カツの美味しい店を知りませんか?」
「知ってますよ。有名で美味しいけどカウンターしかない店と、有名じゃないけど美味しくてくつろげる店、どっちがいいですか?」
「じゃあ、くつろげる店で」
そういえば、夕飯を食べてもおかしくない時間だった。
串カツまでタクシーで送って、
「この店です。それじゃ、僕はこれで……」
と言って去ろうとしたら、
「一緒に食べませんか?」
と誘われた。僕は既に気付いていた。その女性が魅力的な顔立ちで、ちょっとムチムチしているが出るところは出て引っ込むところは引っ込んで、ナイスバディなことに。そういうところは習慣的にチェックしてしまう。そんな自分が嫌になる。だが、とりあえず一緒に串カツを食べることにした。
いろんな話を聞かされた。名前が梓だということ、自宅が某県(大阪から特急電車で1時間くらい)にあること、年齢が35歳だということ(年齢を誤魔化していたかどうかは知らない)、20歳以上も年上の男性と結婚していたこと、その旦那様は持病を持っていたこと、そして最近亡くなったこと、親戚からは“生命保険の保険金目当ての結婚”と言われて嫌われていること、孤独なこと、息子が学校に行かなくて困ってること、などだ。
どこかで聞いたような話だと思ったが、涙ながらに語られたら放っておけなくなるのが僕だ。僕の言葉がどれだけ有効なのかわからないが、慰め、励ました。
そして、僕が代金を払って店を出たら、
「ホテルの予約をしているけど、ホテルがどこにあるのかわからない」
と言われたのでタクシーで送った。すると言われた。
「ちょっと部屋で飲もう」
僕もタクシーを降りた。
部屋はツインの部屋だった。ホテルの冷蔵庫からビールを出して梓と飲んだ。やがて息子の弘志が布団に入って寝始めた。完全に寝静まるのを待って、僕は梓とキスをした。2人が全裸になるのに、そう時間はかからなかった。丁寧に手順をふみ、ようやく結ばれる! その時!
「弘志! 起きなさい!」
梓が大声を上げた。ビックリした。
「おいおい、寝た子を起こすな!」
「弘志! ママを見なさい!」
弘志が目をこすりながら半身を起こした。
「アカンよ」
僕は梓を風呂場に連れて行って風呂場で結ばれた。
「見られるのが気持ちいいのに」
「自分の息子に見せるのは違うやろ」
「他人に見せるなんて出来ないでしょ」
「いやいや、誰にも見せなくてええやんか」
とりあえず、3連休は梓親子に付き合って大阪観光。日曜の夕方、僕は梓達と別れた。
「明日から仕事やから、また会えたらええなぁ」
「金曜の夜、ウチに来てよ、弘志の家庭教師をやってほしいから」
「まあ、小学生なら勉強を教えることは出来ると思うけど」
「お願い! 来て!」
僕は承諾した。正直に言うと、弘志のためではなく、また梓に会いたかったからだが(正直過ぎる?)。
金曜の夜、僕は梓達と合流して梓の家に行った。その晩は何も無かった。正確に書くと、寝ている弘志を呼びに行こうとする梓を僕が止めたのだ。僕は、冷静だった。以前にも息子に性行為を見せようとした女性とご縁があったからだ。
翌日、1日中弘志の家庭教師をやったが、弘志の学力は壊滅的だった。小学校3年生なのに、小学校3年生の問題集で1科目もまともな点数がとれないのだ。本気で弘志に勉強を教えるなら、小学校1年生の問題からやり直した方が早そうに思えた。
そして、その晩も弘志を呼びに行こうとする梓だった。弘志を悩ませないよう、僕は頑として梓と結ばれている姿を弘志に見せなかった。
だが、梓は言った。
「弘志がもう少し成長したら、私が弘志の童貞を奪うつもりなの」
その一言で、僕は完全に引いた。“これはおかしい! おかしい! 狂ってる!”梓の魅力には未練があったが、僕は常識的な行動をとることにした。
「もう会わない」
梓に、お別れを言って帰ったのだ。
わかっている、僕が消えても、梓はまた男を連れ込んで弘志を悩ませるのだろう。だが、僕が弘志を悩ませるのは嫌だ。
あれから十年以上、弘志も大人になっているはずだ。どうか立派な大人になっていてほしい。弘志がまともな大人になってくれているようにと、それだけを祈る。
デジャブ! どこかであったぞ、この展開! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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