イルカトレーナー

和田いの

ゆうか

私はイルカトレーナーを目指していました。専門学校に入り、職業体験をする機会がありました。

なかなか上手くいかず、お客さんの前で餌やりに失敗したり、イルカに全然反応してもらえなかったりしました。ずっと動き回るので仕事は大変で、ほとんど休む暇もありませんでした。

職業体験が終わる頃には、失敗の繰り返しと疲れでイルカトレーナーを目指す気力がなくなっていました。

そんなとき、一通の手紙をもらいました。


イルカトレーナーのゆうかおねえさんへ

たくさんイルカのことをおしえてくれてありがとうございました。

ぼくはイルカトレーナーをめざしています。ゆうかおねえさんのようにたくさんイルカのことをまなんでげんきいっぱいにみんなにイルカのことをおしえたいです。ぼくもイルカとあそべるようになりたいです。すごくたのしかったです。ありがとうございました。


私はこの手紙を見て、イルカトレーナーを目指してよかったと思いました。私のしたことでこんなに喜んでくれる子がいて、私のようになりたいと思ってくれている子がいた。自然といままでの辛かったことや楽しかったことが思い出されて、涙がこぼれました。

この子のおかげで、もう一度イルカトレーナーを目指そうと思いました。


その日からは今まで以上に勉強に力を入れました。

数年後、倍率50倍の壁を乗り越えてイルカトレーナーになることができました。

就職してからしばらく経ち仕事も慣れてきた頃、職業体験の子が来ました。

その子も昔の私と同じように、上手くいかずかなりへこんでいる様子でした。

このときも私の時と同じように、手紙を書いてくれた子がいました。

私はその手紙を見た瞬間、なにか違和感を感じました。よくみてみると、私が昔もらった手紙と書いている内容がほとんど同じだったのです。


あの時もらった手紙は仕組まれていたものなのか、偶然なのか。仕組まれていたとしたら何のためなのか。私はその真相を調べることはできませんでした。


手紙のことは忘れ、私は新しいイルカトレーナー志望者に真剣に向き合いました。彼の名前は関口君といいます。

関口君は最初は私と同じように苦労していましたが、私は彼に寄り添い、助言を与え、共にトレーニングに励みました。時には失敗し、挫折することもありましたが、私は彼に「イルカたちは我々の細かな変化や努力を感じ取ってくれているんだよ」と教えました。

関口君が疲労や失敗で心が病みそうな時、例の手紙が届きました。書いている内容をみせてもらうと、やはり同じような内容でした。さすがに2回も似た手紙にでくわすのは異常です。

しかし、それを読んだ関口君は強く励まされたようでとても喜んでいました。誰かが仕組んだ手紙かもしれないなどと伝えることはできず、それを話すことはありませんでした。

彼はイルカたちとのコミュニケーションを深め、トレーナーとしてのスキルを向上させていきました。そしてついに、彼はイルカトレーナーになることができました。彼の成功は私の喜びでもあり、共に成し遂げた成果と感じました。関口君の成功を見届けた後、私は再び手紙のことを考えました。何か仕組まれたものだとしても、それが彼を励ましたことは間違いない。むしろあの手紙がなければ挫折を乗り越えられなかったかもしれない。手紙の真相は謎のままでしたが、私はそれを気にすることなく、新たなイルカトレーナーたちのサポートに力を注ぐことを決意しました。

これからも私は、夢を追い求める人々に寄り添い、共に成長することを大切にしようと思います。手紙が何者かの手によって書かれたものであろうと、それが私や関口君を励ましたことに感謝し、新しい志望者たちとともに未来へと進んでいくのです。

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イルカトレーナー 和田いの @youth4432

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