第65話

ティオナットは眉間の皺もそのままに、ため息を1つ吐く




「……はぁ


俺は間違った事言ってないはずなんだけど?


あんたらが俺の通行の邪魔してるから退いてっつってんじゃん」


「な…っ!?」


「ま、まぁまぁまぁ!


こいつらも悪気があったわけじゃないんだろうし、

さっきのはティオナットの言い方も悪かったんだから、

お互い様って事でさっ、ね!!」




雰囲気を見て、色々ヤバイと感じたのだろうフレッドが、

ベロニカと呼ばれていた女の子の言葉を遮って仲裁に入る


が、それはティオナットの眉間の皺が更に深まるだけに終わった


ティオナットはまたため息を吐くと、鞄を持ち直し応援団メンバー達の間を些か無理に通る


応援団メンバーは特に何も言わなかったが、視線は余り好ましいものではなかった


フレッドはそんな皆を見て眉尻を下げた




「……ごめん、通してねー」




そう言って、フレッドも応援団メンバーの間を通ってティオナットのところへ来た


フレッドはティオナットの席の前に座り込むと、上目遣いにティオナットを見上げる




「……ティオナットー、なんでそんなにカリカリしてるのか知らないけど、

あんまりツンツンした態度だと皆離れてっちゃうよー?


たまにはデレも出さなきゃ!」


「は?


何言ってんの?


キモいんだけど」




ティオナットは冷めた声と瞳でフレッドを射ぬく


それにフレッドの心は粉々にされ、惨敗に終わる


ティオナットはそれを見て鼻で笑うと、何事もなかったかの様にボックスから本を取り出して読み始める


その後、ルーカスが教室に来るまでシカトされ続けたフレッド


因みに、ルーカスが教室に来ているのに気付かず、

ずっとティオナットに話しかけていたフレッドは、出席簿で頭を叩かれ、ルーカスに怒られた


フレッドとは本当に哀れな男である


そして、そんな中ティオナットはというと、その一連の出来事をまるで他人事の様に見て、笑っていた

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