第62話

「………まぁ、良いか…


次行くから掴まれ」




そう言って、氷帝は左腕を風帝に差し出す


風帝は何か言いたそうにしていたが、何も言わずに氷帝の腕を掴む


氷帝はそれを確認して、次の場所へと転移する


そんな事を続けること34回


やっと依頼書が全て無くなった


依頼書の内容は、ほとんどが先の様な人の捕縛で、

その他には、たまに他の帝達でも苦労しそうな魔物討伐の依頼しかなかった


全ての依頼が終わり、学校の寮のティオナットの部屋に着いたのは夜更けの、現在時刻は午前2時48分


風帝は備え付けの時計を見て盛大にため息を吐いた




「もうこんな時間かよ


こりゃ、ねみぃはずだわ…」




そんな事を宣いながら、バサリとローブを脱ぐ風帝、ルーカス


氷帝、ティオナットもローブを脱ぎ、普段の彼へと戻る




「……しょうがないだろ


ああいう依頼は夜中にやった方が色々楽だからな


服は貸すから先に風呂入ってこい


明日も早いからな


風呂からあがったら寝室の方に居るから声掛けろ」


「…分かった、悪ぃな」




最低限だけ言葉を交わすと、ルーカスはお風呂に入った


脱衣場にルーカスが居ない事を確認して戸を開けると、カゴに着替えを入れて置く




「ルーカス、カゴの中に着替え入れたからそれ着ろよ


サイズが合わなかったら済まんな」


「おぉ、サンキューな」




ティオナットは必要事項のみ簡潔に伝え、ルーカスの返事を聞いて脱衣場を出る


そして寝室に直行し、ベッドにダイブしたティオナット


ティオナットは、そのままピクリとも動かなくなった


一方、その頃ルーカスはというと、

烏の行水よろしく5分足らずでお風呂からあがってきた


ティオナットは寝間着一式揃えていたが、とりあえず下着だけを借りたルーカスは、

濡れた髪をタオルでガシガシ拭きながらティオナットの寝室へときた


ティオナットは、明かりをつけたまま寝ていた


その事に小さく笑いつつ、ルーカスはティオナットを起こす為に近付く


その寝顔は普段とは違い、歳相応のものだったが、2人の距離が後1mくらいになるとパチリとティオナットの目が開いた




「…ん、ルーカスか


あがるの早かったな…」




寝ぼけ眼でふにゃりと言うティオナット


とても貴重な表情だった

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