第58話

「…さて、話しが大分逸れたね


ルーカスに教えるんだった…」




そう呟く様に言ったティオナットは、ボックスの中をゴソゴソと探し始める


俯いていたルーカスは、漸く息を整えてティオナットを見る


ティオナットはお目当てのものが見つかった様で、ボックスの中に手を突っ込んだまま、ルーカスを見てニヤリと笑う


ティオナットはルーカスがこちらを見ている事を再度確認して、その手の中にあるものを取り出す


バサリと音を立てて取り出されたものは薄水色の、ティオナットの体には些か大きめなローブ


ティオナットは取り出したローブを素早く着込む


因みに、フードは被っていない


が、ルーカスにはとても見覚えのあるものだった




「…………………蒼風の……氷帝…!?」




それもその筈だろう


彼、ルーカスは風帝になってから1度、蒼風の氷帝に会っているのだ


そして、その蒼風の氷帝に命を助けられた事があり、

それ以来彼の様になりたい と、蒼風の氷帝を目標にして今までルーカスなりに頑張っていたのだ


その目標としていた蒼風の氷帝が今、目の前にいる


それは純粋に嬉しい


だが、その蒼風の氷帝が自分の教え子で、まだ15歳の子供だと知ったルーカス


そのショックは大きい


ティオナットはそんな事露知らず、悪戯が成功した悪ガキの様にニヤリと笑った


1つ咳払いして口を開く




「…風帝、私と一緒に来い」


「っ!!」




蒼風の氷帝でいる時の声に風魔法を使って変えて、口調もそれに変える


すると、それに息を飲むルーカス


ティオナットが蒼風の氷帝という動かぬ証拠の提示を求めようとしていた矢先に声まで本物だったのだ


ルーカスは、ティオナットが蒼風の氷帝だと認めざるを得なくなった




「…………?


聞いているのか、風帝?


私と一緒に来いと言っているのだが」




ルーカスの苦悩などいざ知らず、ティオナットは応えを求める


やはりティオナットは鬼畜だった




「……………本物なんだな…?」


「当たり前だ


このローブは私しか持っていない


それは風帝がよく知っている事だろう?」


「……………」




ティオナットの応えにルーカスは黙考する

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