掃除

第59話

10分程、経っただろうか


ルーカスは観念したかの様に、唇を震わせた




「………わかった、氷帝


何処へ行く?」




ルーカスも薄緑色のローブを着込み、蒼風の氷帝であるティオナットに尋ねる


その顔付きや声、雰囲気がいつものだらけきったルーカスではなく、風帝のそれへと様変わりする


それに多少は驚きつつも表情にはおくびにも出さず、応える




「…… 龍の顎 だ


今から転移するから私に掴まれ」


「………え?


あ、いや、ここは転移防止結界が張ってあるから転移出来ない筈だが?」




風帝、ルーカスに正論を言われた蒼風の氷帝、ティオナット


だが、蒼風の氷帝にはその一般的には正論でも、当嵌まらない




「…すまないが私にそれは関係ない


だから早く掴まれ、行くぞ」


「わ、わかった」




風帝が自身の腕に掴まった事を確認し、フードを目深に被ると、氷帝は 龍の顎 へ転移した


もちろん、掴まっていた風帝も一緒にだ


一瞬の浮遊感に瞑っていた目を開くと、目の前には氷帝の所属する 龍の顎 へ着いていた


氷帝は風帝も一緒だという事を確認すると、無言で 龍の顎 へと入って行く


風帝もそれに無言で続く


氷帝が受け付けに立つと、受付嬢が紙の束を渡す




「ありがとう」




そう言って氷帝は受付嬢から紙の束を受け取る


そしてそのまま 龍の顎 から出て行く


風帝もそれに続く


ギルドから出ると、氷帝は風帝にまた掴まる様に言い、風帝が掴まったのを確認してからまた転移する


氷帝が転移した場所は、どこかの廃れた建物の中だった


氷帝はパキンと1つ指を鳴らした


それと同時に張られる2つの結界


1つは氷帝と風帝の周りに不可視と音声遮断と、認知不可


もう1つは今いる建物全体に、外に出られない様に転移防止のものを


どちらも何十人単位でやっと掛けられる様な結界だ


下手したらそれでも出来ないかもしれない様なものでもある


それを指ぱっちん1つで涼しい顔でやってのけるのが氷帝だ


それに感心しながら心の底では恐怖する風帝

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